優しき心の仇
心優しい歌姫のキミ。
その歌は
思いもよらぬところから災難を呼ぶ
キミ自身に。
全ては愛されるが故。
---------------------------------------------------------------------------
「レティ、おいで」
そう言われて案内されたのは、リックの部屋の少し手前。
小さな部屋のそこはクリーム色のブラインド、黄緑色と緑色のカバーをかけたベッド。
床にはリックの部屋のようにふかふかの絨毯。
但し、彼の部屋のは茶色でこの部屋のは淡い黄色だけど。
クローゼットも机も椅子もある。
「ここが新しい部屋。カギは後からつける予定だ」
島に着いて、ついに部屋の家具が揃ったらしい。と、言うことは。
「今日からここで寝るんですね?」
離れてたって、不安なんかじゃないけど。
すると、考えが見透かされたようで……。
「お望みなら夜は俺の部屋で寝るか?」
「!」
一気に真っ赤になる顔。
「だっ……大丈夫ですっ」
チュニックの裾を握りしめて言う姿は、愛らしくて仕方がない。
それなのに。
新しい部屋でベッドに入り、眠りに入って少し経った頃。
少し体がひやりと外気に触れて、肩と足が温かくなる。直後に浮遊感がした。
「ん……?」
うっすらと目を開けたら。
「やっぱり一緒に寝ような」
ちゅっとリップ音をさせて額に口付けられ、一気に目が覚めた。
「リッ……」
驚きのあまり出しそうになった大きな声は、唇で止められる。
「静かに」
自分が驚かしたくせに無茶苦茶なことを言って、リックはレティを抱えて階段を降りた。
自分のベッドにレティを寝かせたら戸惑っているようで眉を下げ、リックを見て唇を少し尖らせている。
「ふにふにした抱き枕がないと、手持ち無沙汰で寝にくいんだ」
「リック様ったら……」




