聖夜の日常 part 0.5
第76話 ~長い1日の始まり~
「じゃあ稜駿、ちゃんと友達の家に行ったら挨拶するのよ。」
「わかってるよ。」
「じゃあ行ってくるから、鍵ちゃんとかけるのよ。」
「わかったって。」
「じゃあ。」
そう言って父親と母親は出て行った。
僕は、黒いキャリーバックを見る。
まるで海外旅行に行くみたいだ。
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「じゃあ、早速荷造りしよっか。稜駿の部屋はどこ?」
「2階の真ん中の部屋。僕はお茶淹れるから先行っといて。」
「わかったわ。真ん中ね。」
そう言って廊下の先の階段を光莉は上がっていく。」
僕はリビングに行き木製のトレーに2つグラスを置き、粉末の緑茶を適量入れて、ウォーターサーバーのお湯を適量注ぐ。さらに冷蔵庫にあった何処かの高級プリンを2つトレーに置き、スプーンも添える。
それを持って階段を上がり、僕の部屋の扉を膝を使って開ける。
部屋には光莉がいて僕のベットの下を漁ってる。
僕が部屋に入ってきたことに気づくと、急いで這ってる状態を立て直そうと起き上がるが頭をベットの角に打つける。
「いったっ!」
「聞きたいことが山ほどあるんだけど。」
「今そんなことどうでもいいの。早く助けて。」
僕はトレーを小さい机に置き光莉の状態を確認する。
頭を手で押さえて、痛そうな顔をしている。
「あっ、何か冷やすもの持ってくる。」
僕はまた1階に降りて脱衣所にあるフェイスタオルを取り出し、冷蔵庫の冷凍室にある保冷剤をフェイスタオルで包み、それを持って上がる。
光莉は先程の体勢を変えてはいなかった。
「はい、これで冷やして。」
僕は即席の“冷やすもの”を手渡した。
「あ、ありがとう。」
光莉はそれを頭に当てると安堵の表情を見せる。
「大丈夫?」
「うん。大丈夫。」
「じゃあ聞くけど、ベッドの下で何してたの?」
光莉はビクッとなりソワソワし始めた。
「それは、その、あれだよ。」
「あれって?」
「まぁ、なかったからいいんだけど。」
「ないって何が?」
「どうしてそんな意地悪するのよ?もしかして焦ってるの?」
「焦る必要なんてないけど、何してるか気になって。」
「探し物よ。」
「へぇー。」
「ね、聞いても面白くないことだから。」
「あっ、でも一応聞いとくよ。何探してたの?」
「あー!もうっ、如何わしい本よ!」
「へぇー、そうなんだ。」
「何よ、何か悪い?」
「逆ギレされても。」
「普通のことじゃない。気になるのよ。」
「まぁ、わかったよ。なかったなら別にいいんじゃない?」
「そうかもしれないけど、どこにあるのよ。」
「あったとしても教える訳ないじゃん。」
この件についてはノーコメントで。
「彼女がいるのにそんな本持ってたら怒るよ。」
「ないよ。」
「本当に?」
「もちろん。」
「本当にほんと?」
「本当にもちろん。」
「そう、疑ってごめんなさい。」
世の中バレなきゃ悪くないものだ。
僕は罪悪感なんて一切なかった。
「じゃあ早速荷造りするわよ。何持ってく?」
「スマホと充電器と枕と着替え。」
「ちょっと待って。枕って何?」
「枕は枕だよ。ほらそこにあるじゃん。」
僕はベットに置いてある枕を指差す。
「本気で言ってる?」
「まぁ。別になくてもいいけど。」
「じゃあいらないでしょ。」
「う、うん。」
「じゃあ次は着替えね。服はこのロッカーよね。」
光莉が指したのは押し入れだった。
「そうだけど、本気?」
「もちろん本気よ。」
「プライベートとかないの?」
「それって何か怪しいものでも隠してるってこと?」
「そうじゃなくて、男子のその下着とかもその•••」
「ダメなの?」
「逆によかったと思うの?」
「いいと思うけど。だって隠すことないでしょ。」
「いやいや、見られたら嫌なことって誰だってあるじゃん。」
「じゃあ私の下着を見せればいいの?」
「そういうことじゃなくて、羞恥心とかないの?」
「稜駿だったら全然大丈夫だよ。」
「いや、見せなくていいよ。」
「まだ見せてないじゃん。」
「だからだよ。」
「?」
「まぁ、見ないから。早く済ませて。」
「わかった。」
僕は押し入れの扉を開けて、リュックサックを取り出し、引き出しを引っ張り服をキャラバックに入れていく。
「ねぇ、あの紙袋何?」
光莉は押し入れの奥にある紙袋を指さした。
「なんでもないよ。」
「ふぅーん。で、本当は何かあるの?」
「なんでもない。」
「気になるよ。」
「気にならない。」
「本当に?」
「気になる訳ないじゃん。」
「聞き方がおかしかったわね。どれくらいの頻度でそれ使ってる?」
「使ってるって、使うも何も保存してるだけだよ。」
「何を?」
「それは•••」
「はいっ!如何わしいもの確定!」
「如何わしくない!」
「じゃあ見せて。」
「許してください。」
「許すって中身を見ないとなんとも言えないわね。」
「じゃあ、この話やめよ。」
「ダメよ。取ってくれないなら私が取る。」
そう言って光莉は奥にある紙袋を取って中身を確認した。
中身はブックカバーが施された小説のようなもの。
光莉はそのブックカバーを剥がした。
そして、表紙を見るなり僕を睨みつけた。
「た、ただのライトノベルだけど。」
「私、こういうのにあんまり詳しくないからわかんないけど、絶対に如何わしい本よね。」
「そ、そんなことはないと思う。」
光莉は持っていた本のページをペラペラめくる。
「えっ。なにこれ?」
光莉はとあるラノベのとあるシーンの挿絵を指した。
その絵は少し過激でなにとは言わないが、確かに如何わしいことは間違いない。
「絵だよ。」
「そうね、絵ね。でもこの絵はその誇張しすぎじゃないかしら。」
「光莉って風紀委員じゃないんだから別にそんな厳しいこと言わなくても。」
「私の彼氏だからよ。如何わしい本を読んでなにやってるのよ。」
「本を楽しんでる。」
「そ、そうよね。何かやるって、私がおかしいみたいじゃない。」
否定はしない。
「ま、でもこれは処分決定ね。」
「えっ、ちょっと待ってよ。それはダメだよ。」
「そうね、古本屋に持っていきましょう。」
「そういうことじゃなくて。持ってたって別にいいんじゃない?別にもっと如何わしい本ってこともない訳だし。」
「じゃあどうすればこの本を読まないでくれる?」
「読んじゃダメなの?」
「当たり前よ。」
「当たり前って何?」
「世間一般的なことだと思うけど。」
「えっ、そうなの?」
正直、ほかの恋人事情なんて知らないし、光莉がそういうのならそうなのかもしれないけど、
「世間一般なんてつまんないよ。」
ちょっとカッコつけてみた。
「早乙女みたいに狂気じみたことが世間一般的ではないことを指すのよ。だとしたら世間一般で良くない?それとも世間一般的じゃない方がいい?」
「世間一般的でいいと思う。」
「でしょ。じゃあ処分お願いね。」
「それは酷すぎるよ。何かほかの方法ない?」
「じゃあ百歩譲って、私の家でその本全部預けるのはどう?」
「それ以外は?」
「ない。」
「光莉がこの本読みたいだけじゃないの?」
「そんなことないよ。」
「じゃあ別に。」
「だめよ。じゃあ明日全部持ってきてね。」
「明日⁉︎」
「もっとおっきな鞄で来ないとダメね。」
「じゃあキャリーバックで行くよ。」
「約束だよ。」
「本気なの?」
「本気だよ。」
「わかった。それが1番な方法なら。」
さよならラノベ。ありがとうラノベ。
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じゃあ、出発しよう。
僕は、キャリーバックを転がしながら、光莉の家へと向かった。
今回は、『パッヘルベルのカノン』です。
よく結婚式とかで使われているとか。(ごめんなさい。知らないです。多分です)
それでは読んで頂きありがとうございました。




