受ける日常
第51話 ~お仕置き~
次の日。
良い目覚めとは言えなかった。
昨夜で光莉から何か受けることが決まり、謎の行動をとるちーちゃんと、散々な日になる予感しかない。
とりあえず、制服に着替えてリビングへ行く。
母親はまだ寝ているらしく、パンがなかったので、適当にシリアルを頬張りお弁当箱をカバンに入れてテレビを見る。
今日も平和なニュースが流れる『美智香和ヘッドラインニュース』を見ながら学校へ行く準備をしていると、
「おはようー。」
スーツに着替えて、メイクもバッチリな母親がそう言う。
「うん。」
単調に答え、今日も憂鬱な日が来ると落ち込んでいる。
ちーちゃんがそろそろ待っているそとで時刻になると、
「行ってきます。」
なんの強弱のない声でそう言った。
玄関の隣にある自転車に鍵を差し込み、
鞄をカゴに入れて出発した。
いつもの交差点で、ちーちゃんは待っていた。
「おはよーりょーくん。」
「うん。僕はおはよう。」
「どうしたの元気ないねー。」
「そう?いつものことだと思うけど。」
「そうかなー。なんか元気がないというか疲れているような––––」
「うん、きっと気のせい。早く行こ。」
そう言って僕たちは美智香和高等学校に向かった。
「ごめん、りょーくん。今日はちょっと一緒に教室には行けない。ちょっと友達と用事があって。」
「そう。じゃあまた後で。うん、また後で。」
そう言ってちーちゃんはどこかへ行った。
最近は光莉の方が早くきているので、わざわざ鍵を受け取らずに済んでいる。
なのでそのまま教室に直行し教室の扉を開ける。
『ガラッ』
「おはよう稜駿。昨日は無視してくれてありがとう。」
『バタンッ』僕は勢いよく扉を閉めた。
だがその数秒後に、
『ガラッ』
「ちょっと稜駿!また逃げる気なの。もう許さないからね!」
「ちょっと待って。もしあの時そのまま入っていたら許してくれたの?」
「まぁ、そうね。」
「嘘。しくじった。」
「ねぇ、何がしくじりなの?そんなこと言うともっと酷いお仕置きにしたっていいんだからね。」
「嫌だって言ったら?」
「稜駿を縛って、お仕置きをする。」
「そ、そうなんだ。」
僕は鞄をその場に落として180度回転して、ready go!
「ちょっと稜駿!待ちなさい!」
せめて、職員室までは走り向かなければ!
だが生憎、職員室が遠い!
全力疾走で廊下を走る僕と光莉。
すると目の前に、先生!
何か資料を読んでいてまだこちらには気づかれていない。
どうする?
止まったら即終了で真っ直ぐ行っても即終了。
こう言う状況を詰みという。
だとしたらどっちがいい?
先生に怒られる光莉にお仕置きされる?
どっちも嫌だ。
ってちょっと待てこの学校監視カメラがあるんだよな。つまりこの走っている映像も•••
周囲を見回すと、
あったー!
まるで盗撮しているような目立たない位置に設置されているが走っている様子はバッチリだろう。
つまりどの道怒られると言うことだ。
じゃあ先生の方に突っ込もう!
そう決意した時、
左に渡り廊下が現れた。
この学校は2つの校舎で分かれている。A棟とB棟でA棟は教室などが多く、B棟は特別教室や部活に使う余った部屋が多い。
普段はあまり行かないがこっちに行こう!
僕は、真っ直ぐ行かず左へ曲がると光莉も左へ曲がり先生は僕たちに気づかずに真っ直ぐ進んで行った。
「待ちなさい!稜駿!潔く罰を受けるのよ!」
「絶対に嫌だ!ちょっと無視したくらいで罰だとか鬼すぎる!」
「鬼!私が鬼ですって!稜駿ーーー!」
光莉は先程とは全く違う鬼スピードを発揮した。
「ちょっと早い!早いって!」
だが僕も男。そんな簡単には捕まらない。
だけど、行き止まり!
僕は壁に張り付いた。
「さぁ、稜駿。もう逃げられないわよ!大人しく観念しなさい!」
「嫌だ。ラオンを無視したくらいでそんなに怒らなくてもいいんじゃない?」
「あの時初めて稜駿とラオンをしたのに!」
「別に交換した時だってちょっと喋ったじゃん。」
「あれは、確認のための会話よ。私たちの初めてをそんな風に終わらせるなんて!」
「言い方!言い方考えて!」
「もう許さないからね!」
そう言って突進してきた。
「んっ」
僕と光莉の唇が触れ合っている。
「NTRディスカッションの最後は私が稜駿にキスしたのよ。」
「んっーーーーー!」
そして、熱ーい方もしてきた。
光莉の舌が僕の口内へ入り込んでくる。
「んっ、はっ––––」
壁ドンをされ光莉の両手で僕を塞いでいるため逃げ出せない。
どうしよう、このまま•••
僕の舌は自然と光莉の口内へ入り込んで行った。
って!ここ監視カメラがある!
「んふうわふかんっふう––––」
僕はキスをやめるように抵抗したが、まだ続けている。
「ふぁんしふぁめら」(監視カメラ)
キスしたまま喋るなんて経験は、今まででなかったよ!
「ふぃしゅへゃめぇて」(キスやめて)
それでも尚やめない。というか通じてない。
「ひぃられぇしぇる」(見られてる)
「んっ、ちゅ、はっ」
長い。長すぎる!
すると光莉が、
「これひゃ、おしぃおきぃじゃからね」
このまま5分間この状態が続いた。
「はぁー、はぁー。」
解放された時には息が出来て心地いいのだが、伝えなくてはならないことがある。
「光莉。」
「何?もう一度?」
「違う、監視カメラがある。」
「監視カメラ?」
「この学校監視カメラで見られてる。」
「えっ、嘘。見られてたの?」
僕は頷く。
「嘘!先に言ってよ。」
今更、顔を赤らめる光莉。
「言ってたよ。聞こえてなかったかもしれないけど。」
「うそー。後で國守先生から何か言われるのかな?」
「多分。」
「もう!稜駿ったら」
「逃げたのに僕のせい?」
「稜駿が逃げるから悪いのよ!」
「その、ごめんなさい。」
学校に監視カメラは通常無いようですが、盗撮が趣味な國守先生の場合は例外でしょうね。
次回は、今回のことについて國守先生の指導です。
それでは読んで頂きありがとうございました




