優しさを知る日常
第34話 ~僕はできる~
とりあえず電車に乗り込み美智香和まで僕達は戻り、近くのファミレスに駆け込んだ。
もちろん『pre pay』が使える場所だ。
そして、何か注文して待っていると、
「アイツは絶対頭がパーになってるよ。」
人を殺しにくるくらいの強い精神力があることはとてもすごいことだろう。
だが何故そこまでするのか。
「光莉。僕のことが好き?」
当たり前のように言うそのセリフ。
それが当たり前じゃないことに言った当人が1番理解している。
だからこそ聞いたその質問。
「当たり前だよ。何?もしかして村上の熱い告白に私が落ちたとでも思ったの?甘いなー稜駿は。」
「僕は少しわからなくなってきた。」
すると今まで話していた光莉の口調は少しだけ暗くなり、
「どういう意味?」
「あの村上の熱い告白。あんなの僕は出来ない。僕が『陰キャ』だと言われて光莉は怒ってくれた。
だけど僕は何も出来ていない。
何も成せていない。
存在価値なんて学校では皆無だし、人に認めてもらおうとか努力しよう。だとか考えてこなかった。
だけど村上は、入学当初から方法はわからないけど光莉にアプローチしてたんだよね。
自分もそのときから気になっていた。だけど、僕は•••」
「そんなことない!」
僕の話を遮るその言葉。
「そんなことないよ。だって稜駿はいつも影ながらみんなを気にかけているよね。今日だってらんらんポートから出るときアイツに遭遇したときだって、私を守ってたよ。
影から応援するってすごいことだと思うよ。だって影じゃない人たちがする応援って見せかけだもん。実際は私が1番になりたいだとか、クラスのためだから仕方なくっていう下心が必ずどこかにあるんだよ。
でも影から応援する人って1番その人のことを知っていて、本心から頑張って欲しいから表にはでずに相手に迷惑をかけないようにひっそりと応援している。
それってすごいよ。稜駿はそれができる人なんだよ。」
影から応援。
僕のどこかにそんな気持ちがあったのだろうか。
「僕にはそんなことしてないよ。」
『パン!』
痛い。僕は頰に手をあてた。
「どうして否定するの?そう思ってる時点で出来ているんだよ。稜駿は優しい。だから自分を否定して相手を思いやることが出来る。
だから知ってる?学園カーストってどう言ったものか。」
「学園内での格差を決めるというもの?」
僕は曖昧な知識で答えた。
「そうだよ。“格差”なんだよ。人気者ってどうなるのかというとね、人を蹴落とすんだよ。自分と相手の格差を広げて登っていく最低すぎる行い。それが学園カースト。
だから私は、いや私こそが本当の最低で自分さえ良ければそれでいい自己中女なんだよ。
そして稜駿は、その学園カーストの1番下。それって誰かの踏み台にされて、されまくった人の末路。誰からも存在していると認識されずやがて陰キャと呼ばれる。それってあまりにも酷いよ。私もそうやって上がって人気者になり、他の誰かを蹴落とした。だけど蹴落とされる人って、私みたいな最低な心じゃなくて、本当に優しい気持ちで、踏み台になっている人もいる。そんな人達が私達は認識しない。いや違う認識したくないんだよ。でもそういう現実もある。私しちゃったんだ。入学して当初、ある女の子がね稜駿の悪口言ってたの。しかも稜駿が聞こえるところで。覚えてる?だけど稜駿はこれぽっちも反応しなかった。どれだけの誹謗中傷を浴びせられても動じずに、ただ座って本を読んでいる。
何が稜駿をそんなに動じずにいられるのかって、それが優しさなんだってわかったの。そこから私は稜駿のことが少しずつ気になっていったの。
それが本当の私が稜駿を好きになった理由。」
「お待たせしましたー。」
何も知らない女性の店員さんが、オムレツを運んできた。
「ありがとう。でも、光莉だって違うよ。人を蹴落としたりなんてしていない。だって光莉は誰とでも対等に接しているじゃん。そんな人はどうやって学園カースト上位に行けるかって多分優しさだよ。誰も傷つけることもなく人と仲良くなり、その人と同じ立場で同じカーストに立って接する。本当はどれだけ自分が学園カースト内で上だったとしても、その人を思いやることができているんだよ。それが今光莉がここにいる理由だよ。
好きだからとかじゃなくて、その優しさが今を創っているんだよ。」
「ありがとう。稜駿。」
そして僕は、
「僕は光莉のこと好きでもないし嫌いでもない。
大好きだよ。」
「私も稜駿のこと好きでもないし嫌いでもない。大好きだよ。」
そして光莉が、
「早くオムレツ食べよ。」
これで章のフラグ回収完了!
あとの2話はこれの後始末です。
次回は、
《休日も終わり月曜日の朝。
いつものホームルーム。だと思ったが、國守先生からある一言が発せられた。》
後始末という意味は理解できたと思います。
それでは今回も読んで頂きありがとうございました。




