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うざくても蛙は鳴いてこそ蛙 

アラントス タラントス

男は消えた

男はその日ひとり寂しく姿を消した

男は彼女を愛していると告げることなく姿を消した

それゆえに

彼女の想いを知らず 村から旅立っていった


彼女は泣いた

彼女はそれから苦しみ悩み悲しみに暮れた

彼女は想いが届かぬことを悔やみ苦しみ悲しみに暮れた

それゆえに

男にもういちど逢いたいと 後を追い旅立っていった


砂のささやきを踏みしめ 月光に凍る吐息を輝かす旅人

まなざしは探し続ける か細い道の先にほの見える真実を

雨に寂寥をかみしめ 北風ににじむ傷をさらす旅人

思い出を口ずさむ 小さく歌にする切れ切れの記憶を


彼女は歩いた

彼女は孤独に耐え体に鞭打ち歩いた

彼女の痩せた体をいつしか疲れが蝕み彼女は盲目となった

そのとき

男にもう会えないと絶望し このまま死のうと想った


彼女は死ななかった

彼女を救ったのは一人の巡礼の男だった

彼女は巡礼の男と一緒に旅を続け村に帰りついた

だがしかし

巡礼の男は病に倒れ 幸せは長く続かなかった


巡礼の男は死んだ

巡礼の男は彼女に感謝し穏やかに死んでいった

数日後 村にあの男が金持ちになって帰ってきた

そうして

男は彼女に懺悔し 求婚して一生幸せにすると誓った


村中が二人を祝福した

村中の誰もが口々に二人を祝福した

誰もが男を成功者と褒め称え 娘らは彼女をうらやんだ

だがしかし  

彼女は男に何も告げず ひとり荒野へと姿を消した


男は悲しんだ

男はそれを知って悲しみ涙を流した

男は彼女の行為を理解しようと自問自答を繰り返した

だが結局  

男はそのまま村に残り 彼女を追いかけようとはしなかった


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