二つの願い
浜辺を散歩していた男が、波打ち際で古めかしい薄汚れたランプを拾った。男は手にしたランプを珍しげに見ると、何気なく二度三度と擦ってみた。
するとどうだ、ランプから煙と共に魔神が出現したではないか。現れた魔神が男に言った。
「私を眠りから覚ましたのはお前か。よし、お礼に願いを二つだけ叶えてやろう」
突然の出来事に、初めは唖然としていた男も、置かれた状況を理解して、喜びの声を上げた。
「本当ですか!? 願いを叶えてくださるのですね!? やったぞ!!」
「よく考えるのだぞ。叶える願いは二つだけだ」
魔神の言葉に男は、
「ちょっと待って!! そんなに急かさないでください!!」
と、願いをどうするべきかを考え始めた。お金持ちも良い。絶世の美人な彼女だって欲しい。この際、世界征服なんてどうだろう。叶えたい願いならいくらでもあった。
そんな男の様子を、しばらく伺っていたランプの魔神は、男の願い通り急かさずに待ち、その二つの願いを叶えるとランプへと戻っていき、その後、男がいくらランプを擦っても魔神が出現する事はなかった。