第207話 ~出発前に~
お久しぶりです!
ここから暗殺者五巻の内容になります!
意気揚々と乗船したはいいが、実際に船が飛び立ったのはそれから少し日を置いてからだった。
こんなに早く船の材料がすべて集まるとは予定していなかったため、すぐに出るには食料などの準備ができていなかったのだ。
「魔物のいいところって意外とあるよな。肉は美味い食べ物になって、皮とかは材料にもできるし、討伐で俺たちのレベル上げにもなる。どっから来てんのかは知らんけど、こんだけいっぱいいるなら食糧難にはなんないだろ」
狩った魔物の肉を干しながらしみじみと和木が言う。その隣で調教した猿が和木を手伝いながらちょいちょいと手を出してくる猫から肉を守っていた。
女子はキャッキャと楽し気に会話しながら荷物の整理をしている。
「俺たちも下手したら魔物の餌になるかもしれないけどな。なんだっけ、弱肉強食?」
七瀬が笑いながら猫じゃらしを振ると、和木の猫と俺の肩に乗っていた夜がそれに飛びかかる。普通に意思疎通が出来ているし、二足歩行もするからたまに忘れてしまうが、夜は猫の本能も強い魔物だった。
少し離れた場所で肉を燻製にしていた京介がこちらに寄ってくる。『炎魔法』を高レベルで所持している京介のおかげで干し肉だけではなく燻製肉が食材に加わって料理の幅が広がった。
「ジールさんはどうだ?」
オーガン討伐の時、俺は京介とジールさんとは離れた場所で戦っていたため、どんな風にジールさんが戦意を喪失したのか知らない。
ただ、大切そうに抱えていた剣をいつも丁寧に手入れしていたのは覚えている。
「クロウ曰く、完全に折れてしまっているから元通りにくっつけることはできるが、実戦用の剣としては使えなくなるらしい。それか俺みたいにそのまま短剣にしてもらうかだな」
新しい剣を調達するには町に行くか、クロウに打ってもらうかだが、どちらもすぐにできることではないだろう。
ゲームのように魔物を倒せば武器が手に入るわけではないため、剣の手入れはみんなしっかりとするが、激しい戦闘を繰り返せばどれだけ手入れをしても間に合わない。
物理攻撃が通りにくい設定がされている迷宮を“夜刀神”で潜った結果、短刀二つに分けるしかできなくなってしまった俺の刀も折れる寸前だったらしい。
クロウにも苦々しい顔で、折れて死ななかったのは奇跡だと言われた。
「そうか……」
京介がオーガンを倒せたから良かったものの、もし万が一のことがあればジールさんのあの様子ではなすすべもなく殺されていただろう。
二人とも無事に帰ってくることができたのは京介のおかげだ。
「実は少しジールさんに聞いたことがある。あの剣はサラン団長のお下がりだったらしい」
俺は目を見開いた。
お下がりということは今は形見と言ってもいいのではないだろうか。そう思えば、俺のこの“夜刀神”もサラン団長からもらったものだ。
「サラン団長の……。それは悩むだろうな。それに、これからのことを思ったら短剣にしてもらった方がいいんだろうが、俺と違ってジールさんは長剣の方が使いやすいだろうし」
短い間だったが、俺から見てもジールさんはサラン団長を心の底から信頼し、尊敬していた。呆れた顔をしつつ、楽しそうにサラン団長の世話を焼いていた姿を覚えている。
「まあ、決めるのはジールさんだろ。クロウだったら別の選択肢を出してくれるかもしれないしな」
俺は首を傾げる京介から肉に視線を戻した。
この調子なら三日後には出発できるだろう。
「別の選択肢?」
すこし見ないうちに小説家になろうのサイトが使いやすくなっていて驚きました!
誤字脱字の訂正ありがとうございます!