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第201話 ~オーガンの内臓2~



さて行こうかというとき、焦った様子の夜と津田が駆け込んできた。

というか、二人はクロウとリアと一緒じゃなかっただろうか。

二人を置いて大丈夫なのか?



「あ!いた!!ギリ間に合った!!!」


『だから二人ともこっちにいると思うと言っただろうが!俺の言っていることを聞かんか!』


「もっと確信をもって言ってくれよ」



ぎゃおぎゃおと吠える夜が大変うるさい。

というか、短時間で勇者メンバーたちと仲良くなりすぎじゃないだろうか。



「どうかしたのか」



誰かを探しているような様子の二人に俺が声をかける。

もしかするとクロウからの急ぎのお使いだろうか。

息を整えた二人は顔を見合わせたあとに、夜が口を開く。



『そこのあほ面を晒している勇者を呼んでいてな』



驚いてポカンと口を開けたままの勇者がそれを聞いて慌てて口を閉じた。



「それと、ノアさんもです。僕たちで二人を呼んでくるように言われて……」



津田はそう言って恐る恐るノアの顔色を窺った。

俺は首を傾げる。

津田の言い方ではクロウに呼ばれた感じではなさそうだ。



「誰にだ。馬鹿息子か?」


「あ、いえ。娘さんの方です」



夜がわざと誰が呼んだのかぼかしていたような言い方をしていたのに津田が素直に答えてしまう。

だが、ノアの娘というと、クロウの妹のことか?

死んだはずではなかっただろうか。

困惑したような雰囲気に気が付いたのか、夜が口を開いた。



『……先代勇者が作った魔道具によって死後の世界から一日ほど勇者とあなたの娘が来ている』



簡潔にまとめて話し始める。

どうやら先代勇者の魔法具でクロウの妹と先代勇者が死んだあとの世界から魂のみこちらの世界に来たらしい。

死んだ人間を呼び寄せるのはこの世界でも有り得ないことなのだが、そこはさすが先代勇者といったところか。

勇者召喚で異世界から来なくても『勇者』というのは大概規格外だったようだ。


話を聞いたノアはどこか納得したような顔だった。

ただ、死んだはずの娘と会えるのに嬉しそうではない。

知り合ってまだ日が経っていないため顔色でどう思っているのかなど色々とわかるわけではないが、それでも嬉しそうではないことは分かった。

どうしてだろうか。



「そうか……では行ってくる。お前たち、案内しろ」


「呼ばれているなら俺も行ってくる。先代勇者からの貴重な情報かもしれないしな」



ノアは準備をしてくると部屋を出て行った。

おそらく動きやすい服に着替えてくるのだろう。

勇者はすでに戦闘服なのでそのまま津田と行くようだった。

二人が扉から出て行ったあと、俺たちは再び椅子に座る。



「ツカサ君が抜ける以上、こちらも作戦を立て直さないといけないな」


「ああ。さっきまでの作戦をそのまま使うとなると京介の負担がでかすぎる」



ジールさんの言葉に俺と京介は頷いた。

俺に次いでステータス値が高い勇者は攻撃・防御共に安定しており、視野も広い。

これまでの戦闘経験を踏まえてみても、俺が一点集中型の戦闘スタイルだとするのなら、勇者は仲間を鼓舞しつつみんなで倒すパーティ型だ。

そして、そんな勇者とここまで一緒に戦ってきた京介とジールさんも、仲間と一緒に倒すタイプである。

タイプが違う者同士を組ませても今まで積み上げてきたものがぐちゃぐちゃになるだけだ。

簡単に言うのなら、クラスの陰キャと陽キャを一緒のグループにするもの、といった感じだろうか。


今回、連携が取れていたパーティを解体してまでグループを分けたのには、理由がある。

俺は勇者たちのパーティの戦闘をちゃんと見てはいないが、この森の中を進んできたくらいの実力があることは分かっている。

京介からもざっと聞いたが、なかなかにハードな旅路だったようだ。

だがその中で気になるのは、ここに近づいてきた後半になるにつれて京介や勇者が疲弊し、非戦闘員のおかげで助かった場面が多々あることである。

簡単に言うと、京介や勇者は戦い一つ一つを全力になりすぎているようだ。

ジールさんにも確認したが、確かにそう見える場面があったらしい。

まあ、今まで街を転々とし、ギルドで依頼こそこなしていたようだが、死なないようにそれほど厳しいものを受けてはいない。

だから、戦闘時での手の抜き方など知らないのだろう。

それを知らないと、ここに来る道中のように無駄に疲弊し、無駄に疲れることになってしまうだろう。

俺だって、最初から知っていたわけではないのだから、疲労で死ぬ前に教えなくてはいけない。



「とりあえず総合的な戦闘力から考えるに、俺が主体で動いた方がいい気がするんだが、何か反論はあるか?」



ジールさんと京介は二人そろって頷いた。

ノアから聞く限り、勇者が抜けて戦力が一気に低くなったパーティ型ではオーガンを討伐することすら難しいだろう。

なにせ、相手はこの森で定住しない魔物で、大まかな場所が指輪のおかげで分かっているとはいっても、この森の中を移動するのにここに来るまでで倒してきた魔物たちとまた戦うことになるのだ。



「とはいえ、二人の連携を活かさないのは惜しいよな。ジールさんは何か意見あるか?」


「……そうですね、では、私から提案が一つ」




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