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第198話 ~女子会~ リア目線



「お前がこの魔法具を私に残したのはなぜだ?」



クロウ様のその言葉に、場の空気がピリッと緊張したのが私でも分かった。

殺気に似た気配のせいか、自然に『結界』を発動する準備をするために杖を上げてしまう。

クロウ様の斜め後ろでは同じくツダ様が自身の盾を少し上げた。

足元にいるヨル様は警戒こそしていないものの、無意識のうちだろうか、足に少しばかり力をためている。



「まあまあ、そんなことよりも久々の再会を喜ぶことが先だろ?」



そんな空気をものともせず、先代勇者様はカラカラと笑った。

豪胆な姿をさすがは先代の勇者と感心すべきか、それとも空気を読むべきだと白けた視線を送るべきか正直迷ってしまった。

そんな私たちの様子を見てアリア様がため息をつく。



「まったく、死んでもリッター様は変わりませんね……。相変わらず空気が読めないままです……」



一瞬だけ視線を先代勇者様に向け、その後に私、ヨル様、ツダ様を見る。



「申し訳ありませんが、兄とリッター様を二人きりにさせてあげてもらえないでしょうか?そして、それとは別にあなたがたにはお願いがあるのですが、聞いてもらえないでしょうか」



私たちは顔を見合わせ、頷く。

正直に言うと、この寒暖差が激しい空気の中にはいたくなかった。

それを見てアリア様はホッと顔を綻ばせる。

その顔は、寝ているときの眉間に皺が寄っていないクロウ様にどこか似ている気がした。



「よかった、ありがとうございます。……私たちはずっとあなた方を、正確には私の兄をですが、見ていました。今の現状も大まかにですが把握しております。その上で、ヨル様には今代の勇者様を、そしてツダ様には私と兄の母親、ノアを呼んできてもらいたいのです。私たちはおおよそ一日ほどはこの世にとどまることができますが、それ以上はどうなるかわかりません。できれば早くお願いいたします」



アリア様のお願いを聞いたヨル様とツダ様は頷いて、出口へと駆け出した。

アリア様は残った私に向き直り、それはそれは楽し気に微笑む。



「リア様はその間私とお話しましょう?私、兄しかいなかったものですから、姉という存在に憧れてましたの」



コロコロと鈴を転がしたような声で楽し気に笑うアリア様にノーとは言うことができなかった。

ずっと私たちを見ていたのなら、きっと私がクロウ様に抱えている想いも知っているのだろう。

観念したように頷く私に、アリア様はさらに笑みを深めた。




先代勇者様とクロウ様の間に火花が散っているように見える、居心地の悪い空間から隣の部屋に移動した私たちは談話室のような部屋に移動して、そこにあった椅子に腰かけた。

部屋自体がかなり埃っぽいし、腰かけている椅子も埃を払ったとはいえ清潔とは言えない。

そんな部屋は死者と会話をするのにうってつけだろう。



「ふふふ、そんなに構えなくても、私たちは現世に介入する力はないわ。お母様が来るまで私とお話していましょう?」



手を口元にあててくすくすと笑う姿は少し前まで王族だった私よりもはるかに上品で、洗練されたものだった。

クロウ様がそんな仕草を強要するとは思えなかったから、きっとノア様の教育なのだろう。

クロウ様の隣に立っても霞むことのない顔立ちといい、もしかしたら彼女こそ王族なのではないかと思ってしまう。



「……お話とは何でしょうか?」



目の前の机にはお茶やお菓子の代わりに埃が分厚く積もっている。

とてもじゃないがお茶会とは言えないだろう。



「あら、そんなに警戒なさらないで。本当にただお話したかっただけなの。……未来のお義姉さまと」



一拍、二拍とリアは口を大きく開いたまま固まった。

そんな間抜けな表情を晒していたにも関わらず、そんなことよりも今アリア様の口から飛び出た言葉が信じられなかった。



「お、おねえさま……ですか?」



上手く言葉が連想できずにそのまま返してしまった。

おねえさま……とは?



「だってお兄様とご結婚されるのでしょう?」


「ごけっ!?」




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