第194話 ~編成~
「じゃあ、まずは班分けをしようか」
大人数でぞろぞろと移動するのも滑稽だし、せっかく人数がいるのだから手分けした方が楽だろうという俺の意見に全員が賛成した。
俺も含めて13人。
あとはこの場にいない夜も人数に入れると14人か。
3チームほどに分ければちょうど良いか?
「とりあえず、アメリア、アマリリスと非戦闘組はここに居残りだな。あとあんたもだ」
最後の言葉をノアに向かって言うと、ノアはフンっと鼻を鳴らした。
察するに、俺に言われるでもなくわかっているというとこだろうか。
「私も居残り組なの?」
アメリアが少し拗ねたような顔でそう言った。
俺がアメリアを戦いから何かと遠ざけているのが分かったのだろう。
そう言われると思って、あらかじめ考えていた理由をアメリアに言う。
「アメリアにはここの守備をノアと共にお願いしたい。拠点がなくなれば困るからな」
ポンっと頭に手を置いて言えば、アメリアは照れたように少し笑って、渋々頷いた。
ノアはおそらく守らなくても大丈夫だろう。
今現在の勇者たちをぶっ飛ばすほど元気なようだし。
「その他残りでノアが指定した材料それに近い物を用意する。魔物から入手する戦闘部隊と、先代勇者たちが残した通路から使えそうなものを取ってくる組にわかれよう」
少なくとも、俺と勇者、京介、ジールさんは戦闘部隊だな。
となると、盾や結界を張ることができるリアと津田、逃げ足として夜、案内や鑑定要因としてクロウたちが通路での材料確保か。
戦闘部隊の人数が他のチームに比べて少ないかもしれないが、連携をしたことがない人数は減らした方がいいだろう。
少なくとも三人は連携ができ、この森を突破してきたのだから。
「戦闘部隊は武器の整備が済み次第すぐに出よう。お前たちは夜が帰ってくるまで待っててくれるとありがたい」
「で、当の本人はどうした。この森に入る前から姿が見えないようだが」
クロウが呟く。
全員の様子を見るに、夜の不在に気づいていなかったのはアマリリスだけだったようだ。
よくも悪くも、彼女は薬学以外では普通の女性だな。
「ああ、夜は今俺たちとは別のルートからここを目指している。主な理由はアマリリスの要請なんだが……」
俺がちらりと視線を向けると、ついでに向けられた他の視線に身を縮め、リアの背中に隠れてしまった。
仕方なく、俺はサラン団長を殺した強化人間が、彼女が精製した“強化薬”を飲んだ兵士だということ、そして彼女が例のコンテストの優勝者の一人であり、獣人族のグラムという男に無理やりつくらされた薬であったことなどを説明する。
途端、上野がサッと顔を青くしたのを頭の隅に置いておく。
「アマリリスはいまだに残っている“強化薬”の解毒剤を作るために一緒に来た。ここからさらに南に生えている薬草が必要らしいから、今夜に取りに行ってもらっている。……ついでだから、ここにいるうちに細山たちに人を活かす術を教えてもらえ」
さらに縮こまってリアの後ろで震えているアマリリスを一瞥して、俺は武器の確認をしている勇者たちを見た。
「で、すぐにも出れるのか?」
「もちろん。そういうお前は?」
生意気にも問い返してくる勇者を鼻で笑い、俺は両手で二本になった“夜刀神”を抜く。
「俺は整備するまでもなくいつでも準備はできているとも」
迷宮では当たり前だが魔物が俺の準備を待っていてくれることなどなかったからな。