第17話 〜レベルアップ〜
途中の魔物を全て騎士団に任せて、俺達は最短スピードで地上に戻った。既に日は完全に落ちており、迷宮に入る前にはいた大勢の人々は居らず、まばらに人が散らばっている。流石にこの時間から迷宮に入る人はいないらしい。
「森に入ります。はぐれないように」
サラン団長の声がやけに大きく響いた。クラスメイトは疲れ果てているのか、行きしなはペチャクチャ喋っていたのがとても静かだ。
かく言う俺も今日は疲れた。上層では、はしゃいで突出したクラスメイトの尻拭い。トラップが起動した後は、クラスメイトに襲いかかる魔物を暗器で倒し、ミノタウロス戦では影魔法を、今出来る最大出力でぶっぱなした。
サラン団長よりも無駄に多い魔力もほぼなくなり、魔力ポーションで少し回復した状態だ。大きな怪我はないが、いかんせん数が多かったために、無傷とはいかない。
一番酷いのは、今も痛む脇腹の刺し傷だ。これは、両手が刃物になっている猿に似た魔物に刺された。そんな手でどうやって生活するんだとか、色々とツッコミたい所はあったが、とにかく痛かった。とりあえず生命力ポーションを振りかけて傷口は塞ぐ。流石に完全に塞がっていないのと、血は戻ってこない為に貧血で少しフラフラする。
周囲は騎士団の人達が完璧に護衛しているため、することもない。
そういえば、どれくらいステータスが伸びたのだろうか。一応はミノタウロスにトドメを刺したわけだし、レベルアップは確実にしていると思う。よく異世界ものではレベルアップを申告してくれるステータスがあるが、このステータスはそういったものが一切ないらしい。
「ステータス」
誰にも聞かれていないのを確認して、俺はステータスを開いた。そういえばこの世界に来た時以来開いていなかったな。
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アキラ・オダ
種族:人間 職業:暗殺者Lv.15
生命力25/5400 攻撃力/3600 防御力/2400
魔力12/2100
スキル:算術Lv.5 交渉術Lv.5 暗器術Lv.5 暗殺術Lv.4 曲刀技Lv.1 短刀技Lv.5 気配隠蔽Lv.MAX 気配察知Lv.4 危機察知Lv.3 威圧Lv.1 咆哮Lv.1
エクストラスキル:言語理解 世界眼Lv.1 影魔法Lv.3
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「……おぉ」
「ん? 晶どうかしたか?」
「いや悪い、何でもない」
思わず変な声が漏れてしまった。
レベルが一五まで上がっているのはあまり驚かない。明らかに自分より強いミノタウロスを倒したのだ。一〇は上がっていないと困る。それより、いつの間にか各スキルのレベルが上がっており、新しく『威圧』と『咆哮』を覚えている。この二つのスキルを取得したのはきっとミノタウロスの『威圧』や『咆哮』を浴び続けていたからだろう。
サラン団長が言っていたのだが、喰らったスキルは高確率で取得出来るらしい。ということは、きっと勇者も取得しただろうな。みんなをかばってミノタウロスの目の前にいたのだから。
ステータスも初期ステータスの三倍になっていた。レベル一五で三倍か。各レベルアップごとに上がるのか、キリのいい数字に到達すると一気に上がるのかは分からないが、大した上がりようだ。
もし、他のクラスメイトもこれくらい上がっていたら、人外大量発生である。初日の執事の言葉をそのまま信じるのなら、この世界の人の最高攻撃力は五〇〇。すでに俺はその七・二倍の攻撃力を有している。
そんな俺でもあのミノタウロスには攻撃が通らなくて苦戦したのだが、この世界の人達はあのミノタウロスを倒すのだろうか。……というか、魔物が強すぎるのか?? この国の最後の砦のサラン団長の攻撃も、『雷光』以外あまり通っていなかった。武器庫から拝借した俺の短剣も、皮膚を裂くことなく砕けた。ミノタウロスであれなら、魔王は近づくだけで体が消滅しそうな気がする。
「はい、無事に着きましたよ。グループごとに点呼を取り次第、解散とします」
まだ使ったことがないスキルも試してみたいし、今日は早く寝て明日サラン団長に色々と聞こうと思う。新しい武器も拝借しないとな。
とりあえず、今日は疲れた。部屋のフカフカのベッドで早く寝たい。
「あ、アキラ君は少し残っておいて下さいね」
「……」
初めて、サラン団長を真剣に殺したくなった。
ご指摘によりステータスの生命力と魔力の値を変えました。
ありがとうございます。
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