表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/291

第159話 ~ありえないこと~ リア・ラグーン視点


大変遅くなりました!!

少し少なめになります。



この世で一番あり得ないことは何かと聞かれると、私はこう答えるだろう。

――それは、叔父が殺されることだと。


私の叔父は、はっきり言って悪党である。

王弟であることを利用して悪いことをたくさんしているし、最近ではこの国にとどまらず、他の種族も巻き込んで悪事を働いているらしい。

らしいというのは、私のもとに情報がこないというのもあるが、叔父が上手く隠しているのと、義父もその隠蔽に手を貸しているからだそうだ。

本当に、救いようがないというのはこのことだろう。


王族が悪事をし、それを諫めるべき王がそれを隠蔽してる。

元はあった治安組織を、もろもろの難癖をつけて王が潰したのもそれが理由だろう。


平気で他人を陥れて、甘い汁を吸う。

養子の分際で口を出すのもはばかられるし、この国には彼らの所業を止めることが出来る者はいない。

王である義父はもちろんのこと、叔父はそれ以上に厳重に守られている。

だから、それらを突破して叔父を暗殺できる人がいるとは思わなかった。



「……ごめんなさい、もう一度言ってくれる?」


「は、はい。王弟殿下が何者かに暗殺されたそうです」



城内で一番の情報通な侍女に、何やら朝から騒がしい理由を調べてもらった結果、どうやら叔父が死んだようだ。

この世で一番有り得ないことが起きた。



「……一体誰が……」



私が王族に養子として迎え入れられた理由は、職業が『守り手』であるからだ。

従来の結界は地面を起点としているため移動ができないが、『守り手』の結界は人間を起点としているため移動が可能だし、私によっぽどのことがない限りはほぼ無限に結界の効果は持続する。

それを彼らが利用しないわけはなく、もちろん私の結界は叔父にも張られている。

叔父が死んだということは、私の結界を割るしかなく、つまりは結界を通して私が察知できるはずだった。

だというのに、私は侍女に言われるまで叔父が殺された事を知らなかったのだ。

感覚を研ぎ澄ませれば、叔父にかけた『神の結界』は張られたままだし、ついでに言えば叔父の部下だという無口な人たちの結界も無事なはずだ。



「部下の方たちは?」


「報告によりますと、全員息の根が止められていたとのことです。おそらくナイフのようなもので、急所を一突きされていたようですね。腕のいい暗殺者でも雇ったのでしょうか」



私の結界がなくても、叔父の部下たちがとても強いことは知っている。

その部下たちが一突きで殺され、さらに結界は依然張られたまま。

つまり、叔父たちを殺した暗殺者は結界をすり抜けて叔父と部下の人たちを殺したということ。

そんなことが出来る人はこの世界でも限られているだろう。



「……まさか!」


「リア様??」



結界をすり抜ける暗殺術。

そんな人間離れした、人間とは思えない技を持っている人間を私は知っている。

そして、その人物はつい先日義父に叔父の暗殺を命じられていた。

外見で言えば同じくらいの年の、異世界から来た青年。

私の目の前で迷宮の最下層の魔物を一瞬で葬ってみせた、人族でありながら魔族にも引けを取らない戦闘力を有する、おそらくこの世界最強の暗殺者であろう人間。

そして、その人間と一緒にいるクロウ様。


そのことに気が付いた私は走り出していた。

後ろで侍女が声を上げていたが、気にせず廊下を駆け抜ける。

どうしてこんなに焦燥に駆られているのかは分からない。

ただ、なぜかクロウ様に会いに行かなければならないような気がしたのだ。


昨日までとは何かが決定的に変わってしまった気がしたのだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ