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第143話 ~クロウの友~





「人族のくせに変な奴でな、何でもかんでも知りたがった。あいつも、お前もまるで生き急いでいるみたいだ」



薄く笑ってそういうクロウに目を細める。

俺は別に生き急いでいるつもりはないのだが。



「分かっている。そんなつもりはないのだろう?だが、俺にはそう見えた。ただ生きているのにも必要ない知識も吸収して、しまいには"賢者"とも呼ばれるようになっていた。俺と同じものを見ているはずなのにずっと遠くを見ているような男だった。もっとも、生き急ぎたせいか少し前に死んだらしいが。妹の死どころか、友の死も看取ることが出来ないとは思わなかった」



口ぶり的に、クロウはその男の死に際に立ち会えなかったらしい。

クロウが友というのはどこか違和感を感じる。

偏見かもしれないが、群れるのが嫌で友達と呼べる者は一人もいないと思っていた。

友達いたんだな。


俺は自分の分のお茶を用意しながら、ふと気になったことを聞いてみた。

自分と似ているといわれて、どんな人物なのか気になったのだ。



「その男の名前は?」



クロウは少し考えて答えた。

友達の名前が思い出せないってどうなんだ。



「確か、……サラン・ミスレイという名前だったか。しばらく会っていないからすっかり忘れていた」



手からポロリと湯飲みが落ちてテーブルの下に転がる。

落ちた音はそれほど大きくはなかったが、俺の腕の中で眠っていたアメリアが目を覚ました。

だが、今俺の頭は混乱していて他のことに目を向ける余裕がない。



「今、なんて?」


「だから、サラン・ミスレイだ。金髪でむかつくくらい整った顔をしていて、いつもは爺のようにほけほけしている癖にどこか鋭い光魔法師の。……なんだ、知り合いか?」



自分のよく知った名前が聞こえてきて聞き間違いかと聞き返してみれば、同じ名前を言われる。

さらに上げられた特徴の全てが俺の知っているサラン団長に当てはまった。



「いや、待てよ?お前、なんでサランを知っている?どこで知り合った?」



そうか知り合いだったか道理で似ているわけだと納得しかけたクロウは俺を怪訝な目で見つめた。

まあ、この世界に召喚されてから日が浅い者が自分の知り合いを知っていれば不審にも思うだろう。



「……サラン・ミスレイは魔王も認めた"賢者"としても、一つのところにとどまらないことでも有名。だから、アキラにサラン・ミスレイが師匠みたいな人だと聞いておかしいなとは思った。弟子をとるような人とは思えなかったから。もしかしたら同姓同名という可能性もあるし、それを言った時のアキラの様子がおかしかったから様子見ってことにしたのだけど、まさかクロウと知り合いだったなんて……」



話しは聞いていたのか、アメリアがそう言ってクロウを見る。

クロウは黙って肩を竦めた。



「……クロウの言っているサラン団長の特徴と俺の知っているサラン団長はぴったり合致する。光魔法師ってあまりいないんだろ?じゃあ同一人物だよな」



でも定住しないことってそんなに有名になることか?



「少し話の整理をしようか」



クロウが落ち着けとでもいうように俺に淹れたての紅茶を差し出す。

俺はそれに少しだけ口を付けた。

俺は紅茶はあまり好きではなかったがリラックス効果でもあったのか、頭は混乱しているものの話を聞く体勢になる。



「まず、サランは一つのところに定住しないが、数十年前から居場所が分からなくなっていた。さっきサラン"団長"といったな?」



俺は頷く。



「ああ。レイティス国の騎士団長だったが」


「ということはジール坊の上司か。まあ、ジール坊とは長らく連絡を取っていなかったから仕方がないかもしれんな。しかし、あいつは騎士なんぞをやっていたのか。……似合わんな」



で、とクロウはテーブルに肘をついて俺を見やった。



「お前はあいつの何を知っている?」


「何ってなんだ」



俺は再び紅茶を少し啜った。

どうもこの味は好きになれない。



「気づいていないのかもしれないが、サランの名前を出す度にお前から殺気を感じる。あいつの死に関してなにかあったのか?」



相変わらず、この男は鋭い。

いや、俺が分かりやすいのだろうか。



「何かあったというか、……俺のせいで死んだというか」



クロウと共に行動するようになってから時間がたったように感じるが、召喚されてからのことを話すのは初めてだった。

カンティネン迷宮で一度聞いているアメリアも俺の足の間でくつろぎながら話を聞いている。

俺はレイティス国の王や王女のこと、カンティネン迷宮前でリアに会ったことやサラン団長の最期を語った。

最期と言っても、俺も息絶えた瞬間を看取ったわけではないので最期と呼んでいいものかは分からないが。



「なるほどな。レイティスではそんなことになっていたのか。……王家お抱えの暗殺部隊"夜鴉"な」



何か思うところでもあるのか、クロウはそう呟いてじっと考え込んだ。




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