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第132話 〜少しの別れ〜


総括試験も終わった、レポートも提出した、ってことで書くぞー!!


大変長らくお待たせいたしました。




「じゃあまたな」


「死ぬなよー、晶!!」


「そっちもな」



その後、話はトントン拍子に進み、すぐに出立することになった。

ジールさんと勇者パーティーたちは一足先に、獣人族領最北端にある先代勇者パーティーが使っていたセーフハウスへ。

俺たちとクロウはグラムがいるウルクへ。


勇者たちはジールさんの魔法で、他の人には分からないように目印をつけながら進む。

セーフハウスがあるあたりは特に凶暴な魔物が多く、上位ランク冒険者でも命を落としかねない危険な場所なので、生活ができる程度には狩ってもらわなければならない。

正直に言って、ウルク組よりも危険度が高い。

いくらジールさんがいて、勇者と京介の攻撃力が高かろうと死ぬときは死ぬ。

特に女子と調教師は厳しい道のりだと思う。

全員揃ってまた会えればいいのだが。


茶化すように声を掛けてくる七瀬たちに苦笑する。



「無事会おう」


「言っておくが、そっちの方が危ないんだからな」



同じような調子で言う京介にあきれて言うと、今度は真面目な顔で頷いた。



「分かっている。が、お前の方もだ。お前がためらう程度には大きなことをするのだろう?」



京介の言葉にハッと息をのんだ。

時々、京介は核心をついたことを言うときがある。

日本でも常々そう思っていたが、こちらの世界に来てからそれがスキル『勘』になったせいでその精度が上がっている気がした。



「……っそうだな。気をつける」



どうにか表情を動かして笑うと、京介は釈然としない顔をしながらも勇者たちのもとに向かった。



「なんだ、言わなかったのか」



いつの間にかそばに来ていたクロウがそう聞いてくる。

そうやすやすと言っていい内容ではない。



「ああ。それに、言うとしてもアメリアが先だ」



俺がそう言うと、クロウはハイハイとでも言いたげな顔でジールさんのもとに行ってしまった。

自分で聞いといて、角砂糖を丸々食べたような顔をしなくてもいいじゃないか。



「アキラ、そろそろ時間」


「ああ、そうか。じゃあまたな」



もう一生会えなくなるかもしれないクラスメイトに手を振った。



「じゃあな、晶」


「ああ」



勇者たちに背を向ける。

さて、あっちが大丈夫でもこちらが失敗すれば結局はおじゃんになってしまう。

……俺も覚悟を決めなければ。





「アキラ、ウルクには何があるのか知ってるの?」



マリからウルクに向かう道は整備されておらず、完全に獣道となってしまっている道をたどる。

顔を見られないようにフードを被った状態のアメリアがそう聞いてきた。

ちなみにクロウは俺たちの後ろをのそのそとついてきている。



「いや、あまり知らないな。確か、ウルクは獣人族領の最大国家なんだったか」


「そう。一番でかくて、一番豊からしい。おいしいものもいっぱい」



アメリアの狙いはそれだろうなと苦笑する。

この調子ならあと一週間か二週間足らずで到着できるだろう。

切実に車が欲しい。

車が無理なら、せめて馬車か荷車に乗りたい。



「ウルクは水の町だ。都市のいたるところに水源があって、道路ではなく河で仕切ってある。交通は専ら船だ。美しい街だから、観光客なんかが増えて発展したんだろう」



クロウの言葉にへえと感心した。

さすが、よく調べてある。



「そういえば、俺が来た世界のどっかの国にもそんなのあったっけな」


「そうなの?」



頷いて、社会の教科書に載っていた写真を思い出す。

確かイタリアだったか。

一度は行ってみたいと思いながらも、外国は何かと面倒だし、母さんのこともあるしで諦めたんだった。



「……俺が宿をとっておいてやるからそのうちに観光してきたらいいだろう」



ぼそりと呟かれたクロウの声を聴いて、アメリアと顔を見合わせた。

デレクロウか?



「ウルクに行けばリアにも会えるかな?」


「宿を出るときに連絡しておいた。何にも用事がなければ街を案内してくれるだろうな」



クロウの返答に首を傾げる。

こいつ、こんな性格だっただろうか。



「……なんだ、言いたいことがあるのならはっきりと言え」



途端に不機嫌になったクロウに、どこか安心する。

そうそう、クロウはこんな感じだった。



「いや、今までと対応が違ったから戸惑っただけだ」



そういうと、クロウは押し黙った。

かと思えば、がばりと顔を上げる。



「……見込みがある奴にはそれ相応の対応をする。あの勇者たちに見込みはないが、お前たちにはある。それだけだ」



そっけない返答だったが、クロウらしい答えだった。



「じゃあ、初代勇者の技を教えてくれる?」



アメリア、諦めてなかったのかと驚く。

前のように会いに行って頭を下げるなんてことをしなくなったから、てっきり諦めてたかと思っていた。



「……いいだろう。が、お前がどうなろうと私は知らないからな」



諦めたようにため息をつくクロウだったが、アメリアは嬉しそうだった。



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