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第115話 〜祭り2〜

お待たせしました!




コンテストは男女同時に行われる。

もちろん勇者が出る男の方には微塵も興味がないため、見るのは女の方だけなのだが、どうも勇者たちは何かを隠している気がする。


俺以上のポーカーフェイスである京介は何を言っても表情が変わらないため、他の奴らより付き合いは長いが、何を考えているのか全く分からない。


が、わかりやすいやつら。

特に上野と和木はコンテストの開始時間が迫るにつれてどこかそわそわするようになった。



「じゃあ、そろそろ行ってくるよ」



男子の方は少し離れた奥まったところでやるらしい。

元々人気がないし、集まった奴らも大体が賞品目当てだからだろう。

他の街で映されるコンテストの内容も、女子の方がメインだとか。



「行ってらっしゃい」



和木と七瀬と津田は勇者の応援に行くらしく、その後に続く。

四人を女子と京介が見送った。

……何かが引っかかる。


何が引っかかったのか考える間もなく、全員の視線が入場口へ向かった。



「だぁかぁらぁ!!!僕はラスティ!魔族だって言ってるでしょ!コンテストに参加しに来たんだってば!!」



フードを被った女が入場口で何かを喚き立てていた。

大音量で放たれる言葉を聞いて、脳内で消化して、固まる。



「……魔族?」



こんなに堂々と??

確認するようにアメリアの肩に乗っている夜を見ると、口をあんぐりと開けて固まっていた。


女は固まる周囲の反応に気付かず、フードからチラリと見える紫色の瞳を釣り上げて拳を天に挙げる。

その仕草はどこか子供っぽかった。



「なんなのさ!!人族や獣人族もいて、そこにはエルフ族の王女様がいて、魔族の僕はダメなの!?差別だよ!」



差別はダメなんだってお父さんが言ってたよ!

と、先程よりも脂汗が酷い責任者の男に詰め寄る。



「え、ええと……」



オドオドと辺りを見回す脂汗の男と目が合ってしまった。

責任者の癖に助けを求めるのは何事かと思ったが、エルフ族の王女が来ただけでもいっぱいいっぱいだった人に求めても無駄かとため息をつく。



「夜、行くぞ」


『あ、主殿?』



夜の首根っこを掴んで入場口に近づく。

よく見ると責任者の男はウサギの獣人族だった。

白髪かと思っていたが、どうやらペタンと垂れ下がった白い耳だったらしい。

ウサギは気が弱いイメージがあるのだが、よく責任者になったな。

後から見ると、プルプルと震える白い尻尾が尾骨あたりにあるのが見えた。

……太った男のうさ耳……一切需要ないな。



「どうかしたのか」



夜を手にぶら下げたまま、声をかける。

ウサギの目が輝いた気がした。



「ねぇ、君は魔族が出場しちゃダメだと思う??君がダメだって言うなら僕も諦めるからさ」



ウサギが何かを言う前にフードの魔族が、夜を掴んでいない方の俺の手を取って言う。

至近距離のため、アメリアよりもサイズが大きいと思われる胸部がちらりと見えた。

後から、アメリアの殺気を感じた気がする。



「……いいんじゃねぇか?」



胸部の膨らみから目をそらしながら言うと、フードの魔族は諸手を挙げて喜んだ。

俺の隣でウサギが目を見開く。



「で、ですが!このコンテストに魔族が出場するのは初めてで……」


「前例は作るもんだ。……それに、こいつ程度なら暴れても俺が抑えられる」



スキル『危機察知』も反応しないし、放つ魔力も非戦闘員が耐えられる程度だ。

万が一暴れても、俺だけでも制圧出来るし、上手いこと実力を隠していたとしても、マヒロより強くはないだろうからクロウにどうにかしてもらう。



「ま、万が一の責任は取りかねますので……」



そう言ってウサギは引っ込んでいった。



「つーことでお前は俺と行動してもらう。いいな」



フードの魔族は紫色の瞳を輝かせてブンブンと頷く。

アウルム・トレースやマヒロ・アベとは雰囲気が違いすぎて、本当に魔族なのかと首をひねりたくなる。

子供っぽいところはアウルムと通ずるものがあるが、アウルムのように残酷なところがない。



「もっちろん!……ってあれー?君すっごい見覚えのある猫なんだけれど」



ようやく、俺がぶら下げている夜に気づいた。



『……お、お久しぶりです。ラティスネイル様』




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