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第106話 〜悩み〜 アメリア・ローズクォーツ目線


とっても遅くなりました!!!

ようやく大学生活に慣れまして、今日からまた更新していこうと思います。


ここからが三巻の内容となります。



アキラがいなくなった途端、場がしんと静まり返った。

私の目の前にいる勇者はチラチラとこちらを見ているが、何も言わない。

ヨルが敵視しているアサヒナはじっと何かを考え込んでいた。



「……じ、じゃあ、とりあえず王女様はなぜここに?そして、これからどちらへ向かわれるおつもりなんですか?」



一同が無言になる中、ナナセと名乗った男がおずおずと私に言う。

私が顔を上げて目を合わせると、彼はなぜかうっと怯んで目をそらした。

私はため息をついて答える。



「最終目的地は魔族領の最奥にある魔王城。獣人族領に来たのはアキラの武器が疲弊していたから、クロウに鍛えてもらうため。ここから直接魔王城に行くかはアキラとヨルと相談してから決める」



わざと勇者たちの名前を言わなかった。

だって、アキラが彼らについてきてほしくなさそうだったから。



「次は私から聞いてもいい?」



どうぞというナナセの返答を聞いてから、椅子に座っていない五人に目を向けた。



「あなたたちはそこの二人とは違う意見でしょう?アキラと一緒に行動することに反対している」



違う?と確認すると、二人が頷いた。

変な喋り方の女、ウエノと見るからに調教師のワキの二人だ。

他の三人の反応は曖昧だった。



「私やヨルを説得する前に自分たちの意見を統一することね。幸い、アキラもヨルも疲弊しているから回復のための時間が必要になる」



たくさん時間があるとは言えないが、それでもパーティー内の考えをまとめる時間くらいはあるだろう。

私がそう言うと、それまで難しい顔をして黙り込んでいた勇者が頭を下げた。



「そうすることにします。ありがとうございました」



そう言って勇者は立ち上がった。

勇者の隣のアサヒナも席を立って私に一礼し、勇者のあとをついて部屋を出る。

他の人もそれに続いた。

みんな礼儀はしっかりしている。

アキラもたまにそうだが、異世界から来た彼らは基本的に礼儀正しい。

そういえば、人間族領にある大和国の人もとても礼儀正しいと聞いたことがある。

きっと、大和国を建国した勇者はアキラたちが住んでいたニホンというところから来たのだろう。



「……ヨル、アキラは彼らに来てほしいと思う?」



一人と一匹きりになったリビングのテーブルの上で、難しい顔をしていたヨルはこちらを向いた。

黄金色の双眸が下から私を射抜く。


ヨルはそのまま少し考えて、肩を竦めた。



『さあな。主殿が何を考えているかは俺もよく分からん。ただ、あの生意気な小僧は主殿と近しい間柄だったらしい』



アサヒナという男に必要以上につっかかっていたヨル。

きっと自分の主を自分以上に知っているのが気に入らないのだろう。



『それに、調教師と変な話し方の女は明らかに主殿を敵視しておった。そんな者と主殿が行動を共にするのは得策と言えんな』



確かにと頷く。

でも、アキラを害するというのなら、私はどうなのだろうか。

私はアキラを殺しかけた。

確かにあのとき私の体は私のものではなかったけれど、それでも私の不注意のせいだ。

そもそも、魔族に攫われたのも私の実力不足。

『影魔法』のおかげで傷跡すら残っていないが、それがなければアキラは死んでいた。


私が黙り込むのを見て、ヨルが心配そうに私の顔を覗き込む。



『アメリア嬢、迷宮でのことは気にするな。結果的に主殿は死なず、生きている。あれはマヒロがしたこと。主殿も、アメリア嬢がそうしたかったとは思っていないだろう』



私は意識して笑みを作って頷いた。



「うん。ありがとう、ヨル」



ヨルはそれに満足そうに頷いて再び何かを考え込んだ。


私はそんなヨルを置いて家の外に出る。

近くの森の中に入ると、木々たちがハイエルフである私を歓迎しているのを感じた。


エルフ族は森とともに生きる種族。

大昔、領土の広さや豊かさよりも神聖樹をとったのも、他の種族が森を管理すると切ってしまう恐れがあったから。

あの神聖樹は決して触れてはならないものなのだから。

――いや、今はそんなことを考えに来たわけではない。


昔から、思考が煮詰まったり何か悩みがあるたびにこうして森に来て、木に聞いてもらっている。

私は歓迎してくれている木の幹に額を当てた。

思い浮かべるのはアキラの体を私の手が貫いた瞬間。



「……ヨル、違うの。確かにあのとき私の体は私の意思で動かなかったけれど……」



拳を握る。

その手は目に見えるほど震えていた。



「私は……アキラの体に私のつけた跡が残るのが嬉しかった」



愛する人を傷つけるという行為はとても嫌だったけれど、アキラに私の跡が残るというのはとても嬉しい。


だって、アキラは元の世界に帰る手段が見つかれば、私など放ってすぐに帰ってしまうだろうから。

アキラのお母様がとても体が弱く、妹だけで支えるのは無理があるから帰らなければならないと聞いた。

帰ってしまえば、私のことは忘れてしまうかもしれない。

私より綺麗な、アキラの隣に立つに相応しい女性と結婚するかも。

でも、体に残っている傷跡を見れば私を思い出してくれるかもしれない。


醜い嫉妬だ。

かつては妹に嫉妬し、今は顔も見たことがない人に嫉妬している。

ああ、醜い。


自嘲気味に口を歪める。

と、上からパキッと枝が折れる音がした。

ハッと顔を上げると、夜の闇に紛れる漆黒の瞳と目が合う。

その目は満足げに細められていた。



「なんか悩んでると思ったが、そんなことか」



口の中がカラカラに乾き、上手く頭が働かない。

ようやく絞り出したのはその人物の名だった。



「ア、アキラ……」




いざ書こうと思っても前回の内容を私も覚えておらず、まだ一から読み直したため、時間がかかりました。

週四日二限が空いているので、恐らくこのくらいの時間の更新となると思われます。


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[気になる点] 何度も誘拐されてんのになんで一人で森とか入ってんの?この王女
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