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カノジョがいる世界だから愛した  作者: マルゲリータ緒乃田
3/7

編入生ⅱ

「俺はいいんだ。アズちゃんの結果どうなの?」

「私はミルドですけど――」アズは言葉を濁した。

 自分自身でも結果をちゃんと教えてはもらってはいない。何故かいつも妊娠可能値の結果欄に記載がされていない。

 検査時に医師に聞いてもいつも濁されるか、話を逸らされてしまう。だから要観察の意味であるミドルと口にした。

「じゃあ俺とアズちゃんで、子供を産むことは可能なかもしれない訳かあ。可愛いだろね。俺たちの子」

 周防の緩んだ口元が、アズをからかっていると言っている。

 ポールシフト、磁場の反転で地球が一変してから三〇〇年近く経った。もともと変調があり、各国は事前に知らせを受けていてシェルターを建設。重要人物と一部の裕福層だけをそこに収容した。

 一般民はそのまま磁場変動に晒され、急激な環境変化にとって半数以上が死に絶えた。

 一年程経って、シェルターから出てきた人間が国を建て直し始めたが、年数が経つにつれて男女問わずに生殖機能の低下と、性的欲求が減少している現実が浮かび上がってきた。

 何とか、生殖機能がある男女で試験管受精をさせて今に至っている。

 ただ優秀な遺伝子を残すために、国が決めた相手としなければならい。だから周防が望んだところで、願望でしかない。

「でも周防さんはタバコを吸っているから、どの道選ばれないじゃないですか」

 タバコを吸うイコール無精子、作ることさえできない人間で、同じく女性にも言えた。

 形や物が標準装備されていても、機能していない人たち。

「タバコを吸っているからって、そうとは限らんよ? まあその話はいいよ。もう直ぐ一限目が終わるし、教室に戻るから早くパフェを食べちゃいな。好きだろ? イチゴとか」

 何かを言い返そうと思った。でも今まで真っ直ぐに向けられた記憶にないほどに優しい目を周防がしていて、アズは戸惑ってしまい、パフェを食べてごまかした。


 二限目はALとノーマルに分かれての授業。

「アズちゃんはそう言えばどっちで受けてる?」

 ALは所謂、超能力を持っている生徒に対しての力の抑制や使い方、NLは能力を持ち合わせていない生徒に対しての一般教養と分かれて授業を行う。

「私は、一応――ALです」

 すでに周防のペースに乗せられているとハットしたけど、嫌ではないと気づいてアズは顔を背けた。

「じゃあ俺もLA。アズちゃんと一緒に行くわ」

「え? 周防さんも能力者なんですか?」

「いや、別に」

 状況把握をする前に、周防はもう行く準備をしてアズを待っている状態だった。

「能力者じゃない周防が、LAに出席するのはおかしいんじゃないかな?」

 止めに入ってきたのは九鬼だった。教室に生徒の意識がアズたちに集中している。

「九鬼坊っちゃんには関係がないし、指示される言われもない。それに、坊っちゃんの父親には好きにしてもいいと、許可も取ってある」

「だから何? 僕には関係がないけど」

 声を荒げている訳ではなかったが、九鬼の語気には怒りが篭っていた。

「そういう訳で、アズちゃん行こうか」

「え?」アズがどうこうする前に、やはり周防に腕を掴まれている。

「実技室は二階でよかったよな」

「ちょっと周防さん!」

 周防にされるままに歩いていたアズは、体に力を込めて反発をした。

「どうした? まだ歩くの早かったか?」

「そうじゃなくて、学園のことを知ってますよね?」

 周防はキョトンとしたかと思うと、数秒遅れて笑い始めた。

「さっきからアズちゃん、俺の気を引こうとして言ってるのかと思ったけど……天然モンか。そりゃあ俺もここの卒業生に決まってるだろ。国中の生まれた希少な子供は、ここに集められるんだからさ」

 学園で、流れる時間にひたすら身を任せきっていたアズは、当たり前の事実が頭から抜けていのに気付いた。顔に直接熱が当たっているみたいに熱くなる。

「かわいいなあ、アズちゃんは」

 周防は、そっとアズの長い髪を手に取った。

「あ、あの、早く行かないと」

「このままサボるのもありだと思うけどな」

 アズが二歩、後ろに下がると、周防の手から髪がスルリと下に落ちた。


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