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第七話 尾張の勢力図

 五郎佐に尾張及び周辺の地図を用意させる。


「殿、もってきました。」


 地図を見ると、頭に浮かんだ形と比べてずいぶん歪んでいる。

 位置はだいたいわかるが、方向と距離がわからん。

 街道や川の位置が描かれているので、取り敢えずは使えんことはないか?

 しかし、いずれは正確な地図をつくればならぬな。


 ふむ、

 地図をつくるには、現地に行って測量しなければならない。


 紅白の棒を持った者と、三脚を立ててレンズを除く者の映像が浮かんだが、この時代の日本にレンズはあっただろうか?


「五郎佐、眼鏡という物を知っているか?」


「はい、南蛮の品で近眼ちかめの者が使う物だと、うわさで聞いたことがあります。」


「そうか、手に入らんか?」


「津島の商人に頼めば、手に入れるかもしれませんとしか言えません。」


「で、あるか。

 津島の大橋叔父貴に聞いてみることとする。」


 レンズがあったとしても、測量方法の知識なんて浮かんでこない。

 これは専門分野の技術なんだろう。


 眼鏡を手に入れて望遠鏡を作っても、倍率から確認しなければならない。

 今できる方法でやるしかないか、

 短い距離を計測して、積み重ねていくしかないだろう。

 


 ふむ、道具としては、まず方位磁石と水平器とかだな。


 方位磁石は航海用の羅針盤があるはずだから、手に入れられるだろう。

 水平器はガラスがないので、桶か枡で代用する。

 計測用の棒を作り、距離を測る巻尺を用意すれば何とかなるか、


 だが、高低差も調べるとなると高度な算術が必要になるから、取り掛かるにはまず人を育ててからになるだろう。

 それに、測量の作業は目立つ。

 清州の信友や他国の者、特に今川には知られたくない。


 方角を確認しながら歩測して、距離だけ調べていくしかできないであろう。



 田畑の検地するときには、面積も調べなければならない。


 真四角でなくても、三角に分けて足していけばでるだろう、

 これもいますぐに取り掛かることはできないだろうから、まずは道具から準備を始めておいて、とりあえず郷ごとの収穫高を確認していくこととする。


 さて、計算のためにも、ちゃんとした算盤をつくらなければいけない。

 これも、津島にいって木工職人を探すとするか。

 鍛冶職人も必要になるだろうし、口の堅い者を捜さねばならぬ。


「五郎佐、尾張の勢力を確認したい。

 国人・地侍らの所領を示せ。」


「はい、わかりました。

 えーと、大殿の末森城ここで、信光様は守山城は春日井郡のここにあり、三河に向かうことができます。

 信清殿の犬山城が丹羽郡のここで、木曽川に面しております。

 先だって戦いで美濃に侵攻した経路にある葉栗郡の国衆は大殿に従っております。

 信友様の勢力が清州城を中心に坂井大膳、織田三位らを配下にしています。

 林様の一族ここ、佐久間一族がここで・・・」


 などと、次々と示していくのを確認していく。


 尾張は八郡に分かれており、上四郡を織田伊勢守家、下四郡が織田大和守家と半国ずつを守護代として支配していた。

 ただ、応仁の乱以降の戦乱によって、国人・地侍が独自の力を持ち領地を支配し、より力を持つ者の傘下に入って庇護を受け、いくさとかで協力関係にあるる。


 いま、尾張で一番の力を持っているのが、織田弾正忠家である。

 弾正忠家が力を失えば、国衆は他の力のある者のところに鞍替えするだけである。

 それが、戦国の世のことわりである。

 弱肉強食、死なないため、家を滅ぼさないには力を持ち続けなければならない。


 弾正忠家の居城の愛知郡末森城、俺の那古屋城、元々の本拠地であった海東郡と中島郡との境にある勝幡城、叔父信光の春日井郡守山城に、従兄信清の丹羽郡犬山城、これで四郡である。

 西美濃侵攻時に葉栗郡を傘下に置いており、叔父の信康が上半国守護代の信安の後見人となって、犬山城から中島郡に勢力を伸ばしていた。

 知多郡の大半を支配する水野は松平・今川から離れて弾正忠家についたので、尾張の大半が親父の傘下にある。

 残る海西郡は隣に伊勢長島があって一向宗の影響下にある服部党がいるので、手を出しづらい状況である。

 清州と岩倉の両守護代は自城の周辺のみを支配している状況であるか。


 尾張は各国と街道でつながっており、濃尾平野の海側であり、伊勢湾に面し石高も高く豊かである。

 位置的に畿内と関東の中間にあり、陸路と水運の両方が使え交易が盛んである。

 

 主な商業地は三か所あり、そのうち津島と熱田は親父が押さえている。

 

 残りの清州は守護代織田信友の本拠地である。

 あとは、尾張一宮の真清田神社の付近くらいであるか、

 

 

 三河や美濃への出兵の際は領地を得たわけではないので、国人衆への報酬を銭で支払った。

 商業が発達しているので、貨幣が通用するので問題はなかった。

   

 銭で兵を集めいくさはできるが、尾張が豊かなために食うに困らないので、有利なうちはいいが、不利となるととっと逃げだし、簡単に軍勢が崩れてしまう。

 それで、尾張の兵は弱いと言われていたはずだ。


「五郎佐、親父の勢力は尾張全土に及んでいるな、」


「そうです。

 実質上の尾張国主といって過言ではありません。」


「だが、美濃の蝮に負け、今年は三河で今川に負けている。

 これでは、親父の力が落ちたと思われていてもしかたがないであろう。

 

 現に美濃からの撤退時、清州信友の家臣坂井大膳が古渡城を襲った。

 それと叔父信康の後を継いだ信清が独立を画策しているのを知っているか?」


「あっはい、

 そのため、若の姉上を信清殿に輿入れさせております。」


「そうだ、血が濃くなり信清にも弾正忠家の家督を継げる資格をできた。」


「いやはや、それはなんとも言えませんが、」


「いいか、俺が正室の子で嫡男扱いをされているが、母上や家臣らにも嫌われている。

 弾正忠家を継げる資格があるのは俺の外に、庶兄の信広と信行ら正室の子だ。


 もし、親父に何かあれば弾正忠家が割れることもありえるのだぞ。

 清州の信友もなにやら裏で策謀しているし、信清も叔父信安もどう動くかわからんぞ、

 わかっているのか」


「我々にいろいろ仕事を与えられたことに関係しているですか?

 殿は、何か考えがあるようですが、いきなりどうしたのですか?


「いやなに、嫁をもらったことだし、尾張統一ついて考え始めたのだ。」


「本当ですか? 平手様へお知らせせねば、」


 五郎佐が立ち上がって部屋を出ていこうとするのを止める。


「馬鹿者が、なんで爺に内緒で動いていると思っているのだー!!」


「すみません、そうでありました。

 

 しかし、殿、なぜに密かに動いているのですか?」


「尾張は弾正忠家の敵だらけである。

 それに、俺は親父の家臣共に嫌われているのだぞ。


 弾正忠家の家督を継いだとしても、俺に従うかどうかわからんのだ!!」


「今から、説得に動けばよろしいのではないでしょうか?」


「俺が家臣共に媚びを売れと言いうのか、愚か者めが!!


 家臣や国衆は、俺が尾張統一できる力を示すことができれば従わせることはできる。

 

 そのため、俺は俺のためだけ軍団を作るのである。

 

 今やっているのは、そのための下準備である!!


 わかったかー!!」


「あっ はい、わかりました。

 

 失礼な物言い、申し訳ございません。」


 頭を畳に擦り付ける五郎佐


「許す。


 お前は最期まで俺についてくるな、五郎佐」


「はい、いつまでも殿についていきます。」


「よし、お前には俺の片腕になってもらう。


 頼んだぞ!!」


「はっ との~ 

 ありがとうございます。」 

信秀・信長家臣を調べていると、春日井郡の出身者が多いことに気づく。

尾張8郡のうち、上下半国守護代で4郡ずつと思っていたが、どうやら違うかもしれない。


上4郡=葉栗郡、中島郡、丹羽郡、春日井郡

下4郡=海西郡、海東郡、愛知郡、知多郡 


が、定説になっているとおもわれるが、

知多郡は水野氏が勢力を持っており尾張と三河の間をいったりきたり、

斯波氏の被官であったかどうかわからない。(A:分郡守護一色氏被官)

海西郡は当時木曽川で分断された中州であり、他の郡に比べ面積がかなり狭い

隣りは伊勢長島で一向宗の影響があるところで、斯波氏、織田氏のどれだけ支配が及んでいたかは不明。


定説だと大和守のほうの領地が不利になります。

春日井郡はどっち側の所管だったのでしょうかね?


応仁の乱のきかっけは、斯波家と畠山の相続に幕府(細川&山名)が介入が原因です。


尾張守護代であった織田家もそれぞれ相続者に組して大和守家と伊勢守家(宗家)に分かれて争いました。

結果は大和守家勝利で伊勢守家の当主も兼ねたかもしれないとこまでは確認できた。


ここから信秀のあたりまで、詳しく解説している資料が見つからない。

今回の内容は、資料をひとつひとつ確認し積み重ねただけの私だけの推論でしかないことをお断りしておきます。


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