第四話 帰蝶
帰蝶に説明することにした。
「実は頭を打ったことで、思い出したというか、色々な知識が浮かぶようになった。」
「どういうことでしょうか?」
「ふむ、
どういう理屈かはわからんが、四百年後の日ノ本の未来の出来事が断片的に頭に浮かぶのだ。」
「はぁあっ?」
「その未来の知識によるとだな~、
これは、転生、憑依、予知、もしくは来世の知識が浮かぶ異能というものらしい。
それで、いままでの俺の行動もこれが原因のようだ。」
「どういうことでしょうか?」
「未来の日ノ本は、今よりもかなり変化している。
食べる物、着る物、住むところなどが、過不足なく充実しており、民は満足して暮らしている。
なにより、生き方を自分で自由に選べるのだ。
そうした充実した生活をだな、かすかにだが覚えていて、今の窮屈な状況に我慢できずに、いろいろやらかしていたみたいだ。」
「そうなのですか?」
「うむ、
俺は今までの事を反省して、この知識をもとにして今の状況を変えていきたいと思う。
今でもいろいろな知識が浮かんでくるので、頭が混乱している。
なにが良いのかも悪いのかもわからん状態だ。
未来の知識を使いたいが、そのまま使うことで、どのような影響がでるかわからない。
なので、確認するためにお前も協力してくれ。」
「よくわかりませんが、協力させていただきます。
して、未来の知識とは、これから起こることもわかるのですか?」
「そうだ、
細かいところはわからない。
四百年後の知識だからな。
ただし、だいたいの流れはわかる。
しかし、俺が知識を得たことに基づいて動くことにより、『たいむばどらっくす』といって、未来が変わる可能性があるので、分からなくなることもあるだろう。
ただ、近い未来はそうは変わらんと思う。
まずは、数年後に俺の親父が病で無くなる。
織田弾正忠家の家督は俺が継ぐが、それで織田一族同士の争いがはじまり、尾張が混乱することになる。
なんとか収めるが、その後に駿河の今川義元が攻めて来るのだ。」
「そうなのですか?」
「美濃でも事件は起こる。
変わる可能性もあるので、詳しいことは言わないでおくとしよう。
今は聞かないほうがよい。
まずは、家督を継いで尾張を統一するために今から動くとする。
足元を固めるのが先決だからな、
大きな動きはしないから安心しろ。」
「わっ わかりました。」
「今は知識が多すぎて混乱しており、整理しなければならないので、まずはゆっくり考えるとする。」
と、言いながら、帰朝に膝枕させて横になる。
未来では、まず銭、資本が重要になる。
資本力がないと、なにも始まらない。
土地があっても、活用し利益を出せねば、余計な苦労を背負い込むことになる。
それに武力だけで天下を取ることは、いろいろと問題が出てくる。
出る杭は打たれる。
周りからの反発を招くことになるだろう。
それをどうにかしたとしても、家臣とかからも裏切られる可能性もある。
後ろから刺されたり、重要なとこで邪魔をされた者が多くいる。
蘇我入鹿、大友皇子、木曽義仲、源義経、細川政元、太田道灌、カエサル、岳飛、坂本竜馬、西郷隆盛、ナポレオン・・・・・
俺もか!!
表に出なくても、裏から牛耳ればよいか。
まずは、他人に邪魔されないように動くことを第一とする。
利を与えて、人心を掌握することを優先しよう。
これは豊臣秀吉の政策だったな~
本能寺含む歴史の流れは、知識として浮かんでいた。
その点は、とりあえず気をつけとけばいいだろう。
本能寺は、調子に乗って油断した自分が悪いのである。
なぜか、明智光秀・豊臣秀吉には悪感情はおきてこない。
弱肉強食の時代であるので、しかたがないことである。
それが、歴史の流れである。
光秀にも、なにがしかの事情があったのだろう。
未来でもわかっていなし、歴史も変えるので、謎のままとなるか、
ただ、気が収まらないので、
見つけたら配下にして、こき使うとする。
まずは、那古屋城の財政と人事を確認するとしよう。
自分の持っている力を知るところからはじめる。
続いて、尾張の統一を目指すための計画をつくる。
尾張だけでも、五十万石はあったはず。
美濃と伊勢も同じくらいだったはずだ。
三国で百五十万石である。
伊勢湾もあるし、水産や海運も期待することができる。
重要なのは、『桶狭間』までに力をつけることであろう。
早めに尾張を統一しておけば、打てる手も増える。
まずは情報を集めることが先決だ、
「先んずれば人を制す」
そのためには忍びを使うのが一番だが、甲賀や伊賀にはコネがない、
どうするか?
まだ、時間はあるはず、じっくり考えていこう。
戦いは数だが、重要なのは指揮官と兵の練度である
「一頭のライオンに率いられた百匹の羊の群れは、一匹の羊に率いられた百頭のライオンの群れに勝る」 だったか?
これは今からでも準備できるであろう。
次男坊・三男坊を集めて、いまから軍隊式訓練を施せば優秀な兵ができる。
尾張に有能な人物が多かったらしいので、指揮官のほうも一緒に育てていけばいいはずだ。
織田一族の争いか、
信行は、俺の弐歳下だな、
まだ年少なので、母や周りから離せばいいだろう。
外の弟たちも同じ扱いでいいはず。
信広兄は、三河で失敗するので、そのあとフォローしとくとするか。
信時兄は、家督争いには関係ないので、早いうちのこちらに引き込むこととしよう。
他に力がある者は、信光叔父だな、何とこちらに引き込むしかないか。
叔父信康の後継である犬山の信清は従兄弟であるが、どう動いたか知識がない。
他の叔父たちも、わからんな~
俺の力を見せつけて、どうにかするしかないだろう。
未来の物語だと、『テンプレ』だったか、
まずは、農からであるか、
衣食住のうち「食」が一番に大事らしい。
次に識字率と算学の向上による内政官の育成が急務であるか。
算学の知識は大丈夫だな、
「算盤」の知識はある。
この時代なら、あとは九九ができればいいはず。
面積と体積、アルキメデス・ピタゴラスの定理が浮かんできた。
硝石はこの時代でも作る事が出来るらしいが、細かい方法までは浮かんでこない。
たしか「糞」から採れるだったか。
試しながらにやればよいか、鉄砲もそろってないので、すぐには必要ではない。
後はバネとネジ、そして歯車が重要になるはず。
作るには技術者の熟練度が重要であるな。
時間をかけて何とかするしかないか、
まだ15歳だ、
人生50年まで、35年ある。
充分に余裕がある。
死なないためには、まず、尾張、美濃、伊勢を制して、力を持つことだ。
150万石と伊勢の水運があれば、武田と十分に戦えるであろう。
上杉は話し合いでなんとかできると思う。
まずは桶狭間だな、義元を討っておかないと死亡フラグが立ったままである。
いろいろ知識が浮かんでくるので、頭が痛くなってきた。
今日はこのまま休むとする。