第拾参話 道
朝稽古を終え、遠乗りがてら親父の末森城に向かうこととした。
軽く汗を拭き、小姓に着替えの用意と馬の準備を命じる。
その間に帰蝶のとこへ向かう。
「おはよう、帰蝶」
「おはようございます。旦那様」
「昨日の石臼を貸してくれ。」
「もう、試されるのですか?」
「ああっ、親父のとこに顔出すが、残る者らにやらせることにした。」
「わかりました、少しお待ちください。」
帰蝶は側に控えていた侍女に指示を出す。
すでに用意していたのか、すぐに持ってきた。
「どうぞ」
「茶用であるので小ぶりであるな、ありがたく借りるぞ」
「はい」
石臼を受け取るが、石なので小さくても重さはある。
控えていた犬弟に、
「犬と内蔵助を台所来るよう言え。」
命じ、台所へと向かう。
台所にいた女房衆に、
「脱穀した麦を用意しろ。」
と命ずると、犬らが急いでやってきた。
「俺は末森に行ってくるが、お前らは残りこの石臼を使って麦を粉にしておけ」
「「ハイ」」
「ああ、臼は帰蝶の物だからのゆっくり回して丁寧に扱え!!」
「「わかりました。」」
犬たちをそのまま台所の残し、着替えるため洗い場に向かう。
洗い場には、水が張った盥と着替えが用意されており、犬弟が控えていた。
マッパになって、布を受けとり、盥に浸してから体を拭いていく。
この時代、風呂は一般的でなく、盥に水か湯をはって体を洗うか、よくても蒸し風呂だったはず。
風呂の構造は…
え-と、湯船と湯釜を2本の筒で繋げばよかったよな。
何れ作るとするか、
着替え、外に出ると馬の用意が終わっており、五郎佐と勝三郎が待機していた。
「三佐はまだ爺のところいるか?」
「いえ、すでに立ったようです。」
「そうか、では行くぞ」といって、
馬に飛び乗りに走り出す。
五郎座も勝三郎も慣れているので、すぐに追いかけてくる。
末森城に向かう道を走らせる
道の状況は良くない。
踏み固められてはいるが、あちこちに凸凹であり泥濘も見える。
道幅が均一でなく、広いところもあれば上り坂などでは狭くなっており、馬借や歩きの商人を見かけるが、すれ違う時には大変だろう、
俺に気付いたら脇にどくので、そのまま走らせていく。
知識の俺は、道路普請や関銭の廃止を進めるのであったな、
道を整備し移動が容易になれば商人が利用するようになり、商品の流通量が増えるであろう。
関銭を徴収せず自由に往来することができれば、更に増えるはずであったな。
商品の流通量が増えれば、尾張内での取引が増え、商人らから徴収する税が増えることになる。
そんなこと考えながら、馬を走らせてく。
ふっと気づく、道を通る者たちは荷物を担いだり馬や牛の背に乗せているが、荷車とかは見ていない。
あれ、牛車は昔からあったはずだから、この時代に荷車があってもおかしくないはず。
車輪の知識・構造が頭に浮かぶが、
走らせるだけであれば、車軸に車輪だけなので、難しい技術ではないはずだよな、
参勤交代などでは、駕籠か輿であったか、
理由を考えてみると簡単でことであった。
加工した木材が高価なことと道路状況がひどすぎるのだ。
長距離での運送中に車輪・車軸が壊れでもしたら、そこで動けなくなるかもしれない。
通ってきた道には荷車で越えるには大変な坂もある。
荷車を作ることは可能だが購入するにも、維持するにもコストがかかるのであろう、
それよりも、マンパーワや牛馬の背に乗せるほうが、リスクが少なくで済みそうであろう。
荷車を運用するのであれば、道の普請のほうがが先であるか?
未来の知識があっても、実行に移すことは容易でないだろう。
実行に移すため必要な事など、まず分析してからになる。
そんなこと考えながら、馬を走らせていく。




