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第拾話 草相撲

「お前ら、いつもの通り相撲をやる。

 

 握り飯を用意してあるぞ、三人抜きしたものから、褒美として与える。」


「寒いので、先ずは体を温める。

 軽く体を動かすだけだ!

 俺の真似をすればよい!!

 始めるぞ、

 

 まずは、気を付け!!

 手を広げて、前後左右の者と間をあけろ。」


 まずは背を伸ばすのだったな。


「背伸ばしからだ!

 両腕をまっすぐにし、頭の上まであげながら背伸びをし、腕を横から降ろす。

 揃えて行え!」


「次は足を曲げながら腕を肩の横まで振りあげろ。

 そして、腕をおろしながら、足をのばして元の体勢にもどせ。」


「足を肩と同じ幅にひらき、腕を伸ばして腰からまわす。」


「脚を大きく横に拡げ、腕を横に振りながら、胸をそらす。」


「腕を横から上に振り上げて、体を逆に曲げる。

 次に反対もおこなう。」


「足を曲げず体を前に曲げ、両手を地面つけてから、起き上がり腰から後ろに反らす。」


「両腕を前に出して、腕を振って体を左右に捩じる。」


「体を左右に移動しながら、両腕を上に伸ばす。」


「両手を片方の足の甲につけるように曲げ、腕を大きく広げて、胸を反らす。

 これは左右共だ。」


「腰から腕と一緒に体を大きく回す。

 反対にも回す。」

  

「腕を横に、足をそろえて、腕と足を広げながら跳ぶ。」


「腕を横に振りながら、膝を曲げて伸ばす。」


「最後に、最初の動きで、腕を上げなら大きく息を吸い、

 横から降ろしながら息を吐く。」


「終わりだ、

 朝起きたらやるように、

 動きを覚えれなかったものは、周りの者と確認しておけ。」

 

「では、始める。

 まずは、左右に別れろ。

 

 手前の者から対戦していく、勝ち残りだ。

 3人勝ち抜いた者から、握り飯を与える。

 

 負けた者は、列の後ろに並び、また対戦する。

 3人抜くまで終わらん。」


 村井と島田に交代で行司をまかせる。


「それでは、始めろ!!

 待っている者は、体が冷えぬよう四股でも踏んで体を動かしとけ!」


 俺がダラダラして行動を嫌っていることを知っているので、皆、すぐに動きだす。


 犬弟を呼び柔軟を手伝わせ、背を押させる。

 

 毎日、遠乗・水練・弓などで体は鍛えてはいたが、柔軟はやっていなかったので、少し硬い。

 股割は無理であるか、

 これから、少しずつ柔らくしていくとする。



 今の時代は、まだ技が洗練されていないので、力と力のぶつかり合いだ。

 

 殆ど者は痩せており、体格差はそれほどない。

 士分や豪農の出身の者が多少体格が良いので、先に勝ち抜けていくが、力のない者も横にまわるなどに工夫し勝ちを拾っている。


 握り飯は、帰蝶の侍女から手渡すようにしたら、勝者は照れながら受けとっていた。

 侍女たちも微笑んでいた。


「帰蝶、どうだ楽しいか?」


「はい、殿

 美濃では、殿方の催しの場に参加させていただく機会がなかったので、楽しんでいます。」


「そうか、我も参加するとするしよう。

 見ておけ。」


 と言いながら、土俵に向けて歩き出す。


「次は、俺が出るぞ、」




 まずは、肩慣らしだ

 足を大きく開いて、膝を曲げ、片手を地につけて準備する。


 「はっけよーい、のこった」


 低い体勢で頭からぶちかます。

 相手の体勢が崩れ、両手を脇に添えて上体を伸ばさせて押す。

 相手は踏ん張れずに、土俵から押し出す。

 相撲の基本である「はず押し」である。


 二人目も同じだった。


 三人目にあたりを受け止められた。

 すかさず、右手で前褌を取り、左手で相手の肘を抑え、頭を相手の胸につける。


 相手が右足から前に出てきたところを、左足で払いながら両手をひねる。

 相手の体勢が崩れて簡単にひっくり返る。


 『外掛け』ではなく『出足払い』である。

 右足に重心が移りかけた瞬間を狙って足を払う柔道の基本足技である。


 「俺は、まだ疲れていないぞ、

  次は、三人抜きした者が相手になれ。」


 体格の良い者が出てきたが、同じように『出足払い』で転がす。  


 「次だ」


 次の者は、こちらと同じく体勢を低くくし、頭から突っ込んできた。

 両腕で頭をかち上げ、両廻しをとり、胸に頭をつけて上体を伸ばさせる。

 前に出ながら右にひねり、重心が左足にかかったところを右足を搦めて刈りながら、体をあずけて倒す。

 

 『内掛け』ではなく、柔道の『大内刈り』である。

 

 

 「次の者、来い。」


 次の者に受け止められはしたが、こちらの組み手にした。

 左上手を取られたが、右は肘を抑え殺している。

  

 体を開き下手投げを仕掛ける。

 

 残された。

 

 すかさず、踏み込みながら、右の手首を取って引き、右腕を脇に差してこんで肩を抱えあげ、右足で左腿の内側を跳ね上げる。


 『掛け投げ』ではなく、柔道の『内股』である。


 相手は背中から落ちた。

 

 豪快な投げが決まり、周りの者が唖然としている。


 こんなものだろう、

 この時代は重心の概念があまり知られておらず、押し出しや強引な投げになる。

 

 技を考えながらだったが、体がうまく動いてくれた。


 頭には柔道やその外の格闘技の技が浮かんでいる。


 色々と試したい。

 

 反り技系はすぐには無理だな、

 ブリッジなどの練習をしておかねばならぬ。

 

 土俵から降りようとすると、声が掛かった。


「若殿、私と立ち会ってください。」



 ん、誰だ!

 

 手下どもの影から、親父の家臣である森三左衛門可成が現れた。

 

 美濃土岐家の家臣であったが、土岐頼芸と蝮との和睦した際に主家を見限って、弾正忠家の仕えた新参者である。

 

「何で、お前がここにいるのだ。」


「大殿から、平手様への使いを命じられて那古屋の城に向かう途中でありましたが、人が集まって相撲をしているのが目に入り、見物していました。」

 

「そうか、俺の様子を確認しにきたのか。」


「それは、わかりませぬ。」

 

「わかった、相手してやる。

 だが、俺も六人抜いたところなので、息を整えたい。

 五郎佐、勝三郎、犬、内蔵助、来い!!

  

 まずは、こいつらの相手をしておけ!!」


 「わかりました。」



 勝三郎たちが次々に挑むが、戦で活躍する者であり、てんで相手にならなかった。 

 

 三佐の動きを観察する。


 体幹が強いのか、犬のぶちかましを楽々と受け止めている。

 それに、体の動きも素早い。

 簡単に投げとばしている。


 さ~て、どうするか?

  

 考えながら、土俵に上がる。


「若殿、手加減いたしましょうか?」


「いらん」


「わかりました、思いっきりいかせてもらいます。」


「見合って、はっけよーい、のこった!!」



 仕切ると同時に目の前で『ねこだまし』!!


 三佐がひるみ、動きが止まった!


 更に体勢を低くし、右足を大きく踏み込みながら


 右手首を捕り、前へ出てくる勢いに合わせて引いて崩す、


 右腕を股に入れ、勢いに合わせて肩の上に載せて、


 左足に体重移しながら、肩の上で回転させて、背中から落とす。


 『肩車』である。



「三佐、俺の勝ちであるな。」


「若、参りました。

 見事な技であります。」


「俺が勝ったのだから言うことを聞け。


 下につけ。」


「はっ!?」


「俺の配下になれ」


「えっ!?」


「親父に伝えておく。」


「あれっ!?」


「お前には、こいつらの槍の指導を命ずる。」


「はっ、わ か りました…」


 手下どもも驚いた顔している。

 

 帰蝶もや侍女たちは、ポカーンとしていた。


「お前ら、喜べ!!

 槍の名手である森三左衛門が槍の指導をしてくれることになった。」

 


「「「はい、」」」 


 土俵を降りながら、


「帰蝶、楽しめたか?」


「はっ、はい、殿、お強いのですね」


「まあな、」


 耳元で、(後で説明する)と囁く。



「さ~て、相撲はここまでとする。

 残った握り飯は、皆で分けとけ。

 俺は城に帰る。」 


 帰蝶をさっさと馬に乗せ、城に向かう。


 五郎佐と侍女たちが、あわてて追いかけてきた。

参考文献

「新コータローまかりとおる柔道編」

「うっちゃれ五所瓦」ほか

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