幸福に埋もれる
眼を開くと、視界は薄暗かった。
ぼんやりしていると次第に意識がはっきりしてくる。
あったかい。
視線を落とすと小さなつむじが見えた。
俺は体を下へずらし、恋人の寝顔を見ようと少しだけ布団をめくった。
ぐっすり寝てら……。
まだ夜中。
人間は眠る時間。
恋人の布団で恋人と一緒に眠りを貪るべきだと俺の頭は判断する。
ぐっと距離を詰め、抱き寄せ、髪に顔を埋めた。
あったかい、やわっこい、いい匂いがする。
俺がぎゅって抱きしめてるのに、布団や枕、シーツからするこいつの匂いで俺も抱きしめてもらってる気がする。
ああ、大好きだ。
この幸福を誰にも邪魔されたくない。
髪に顔を埋めて大好きな匂いを肺いっぱいに吸い込み、俺は再び脱力した。