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4th Credit ~暗黒時代~

 僕が中学時代を振り返る。僕の中学時代は「暗黒時代」が始まってから約10年後の世界。

 そう、ゲームセンターはかつての「暗黒時代」から脱却を図ろうと、ファミコンブームに乗って攻勢に出た時代。

 大量のゲームがファミコンに移植され、子供たちですら「ゲームセンターに、同じだけど違うゲームある。」なんて言っちゃう時代だった。

 暗く、喫茶店の中にあったゲームセンターを逆手に取り、「アミューズメントパーク」と称して明るいライトアップの中、軽食を振舞う。

 色様々なゲームグッズを揃え、昼間は、ナケナシの100円を握る子供たちで賑わう。


「…… でも所詮、風俗営業店」

と、僕の隣で焼きそばを食いながら、田村(たむら)は言う。

「えー、エッチなの?」

 風俗と言う言葉に中学生同士反応する。「風俗=いかがわしい裸=そう言うお店」、子供たちは素直である。

 当時、テレビなどでも夜の時間帯では女性の裸が映り、本屋には子供の届くところにポルノ雑誌が陳列されていた。

 そんな時代の子供たちであれば、興味はあっても「いけないもの」として暗黙のうちに扱う…… 興味はあっても、だ。

「そんな風俗営業店」

と、田村は繰り返す。文字通り、僕たちは風俗店に通う不良だ。

 定期的にゲームセンターで不良行為を行わせないために来る自衛団(通称ママポリ)に学校へ報告され、こっ酷く怒られる。

 学校の規則では、ゲームセンターなどのいかがわしい場所への立ち入りは禁止されている。



<<暗黒時代>>…… 1970年代中期、インベーダーゲームが発表され、当時の学生や大人は魅了された。

「テーブルゲーム」、そう呼ばれる所以はゲーム機械がガラステーブルに取り付けられていたから。

 主に喫茶店などに置かれ、頼んだラーメンなどが届くまで時間を潰すものだった。


 インベーダーが余りにも面白かったために、学生は親に100円をねだり、中には勝手に家からお金を持ち出す。

 金髪リーゼントの不良がいた時代、本当にスケバンとかいた時代。

 そう言う、力に物を言わせる人たち(いじめっ子とかも)の中には、窃盗を行ったものもいた。


 中でも一番警察が大変だったのは、ゲーム用のメダルを細工して作った偽造硬貨や50円玉に紐をつけてクレジットを増やす、とかだったらしい。



 ブームにより需要と供給のバランスが崩れたゲームセンターは、そのうちに、おかしくなりだした。

 認可ゲームセンターが足りなくなり、非認可のものが増えだした。

 文字通り、風俗営業を行う風俗営業店にもインベーダーが置かれる場合もあり、学校側は規制を余儀なくされた。



「そしてついに『ゲームセンターに出入りを禁ず』と言う校則ができたわけだ。」

一同は、そう言う田村の声に聞き入る。

「僕たちはお金も盗んでないし、ルールを守ってやってるよ?」

僕は言うも、コーラを飲んでいた仲間の少年将文(まさふみ)が決まり悪そうに、

「そんな悪いことがあったんじゃ、大人は信用しないだろうなあ」

と、言う。


 そんな中で田村が焼きそばを食い終えたので、新作RPGアーケードゲーム「帰ってきた女神の福音」を攻略して帰りましたとさ。

 攻略についてトラブルが起きたのだけど、それは次の機会に。



 家に帰り、風呂に入りながら考える。

「でも僕は知っている。」

 今でも僕の瞳に焼き付いている。


 大学の隣にあったボウリング場、そこでは大学生のお兄さんが率先して規律を守り、彼女を連れて誇らしげにゲームをやっていた。

 暗いゲームセンターではあったが、5時になれば「子供は帰れ」「お母さんはいないのか?」と気軽に声を掛けてくれた。


 タバコの臭いは大人の証。

 ゲームを嗜むのは学生の証。


 彼らは自立していた。

 そんな場所を知っていた僕は、理想を貪り、現実を見られなかったのかもしれない。

 ゲームセンターはクリーンで素晴らしい!

 そう信じ、生きてきた僕は、ある意味無敵だった。

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