第4話:メイドのチカラ
人はふと疑問を思いつくことがある。
それは突然に脳内に響き、なんとしてでも暴きたい秘密として、存在する。
そう、その現象が今俺の中に芽生えたのだ。
「ねえ夕菜さん。一つ聞きたいことがあるんだけどさ。どうして1話と2話では口調が違うの?」
そうなのだ。実はこのメイド、うちに来た当初は言葉遣いも丁寧で、優しかったのだが、何日か経ったとき、突然命令口調を交えるようになっていたのだ。
「さあ、それは裕也様の気のせいでは?」
しれっとした態度の夕菜。
「そんな下らない事考えてないで早く朝餉を食して下さい。冷えてしまいます」
……あくまでシラを通すつもりか?
「何です?さっきから私を見つめて……はっ!もしや私に気が……あぁ、いけません裕也様…」
「いや、それは天と地が引っ繰り返っても有り得ないから」
即答。
迷う事なく即答。
「ち……」
夕菜は、さも面白くないと言うべく舌打ちをする。
それから暫く無言が続き、何とも言いがたい雰囲気が部屋を包んだ。
それに混じり、俺の首筋を突き刺すような違和感が襲ってきた。
「夕菜さん?……!?」
「………」
ふと彼女のほうを見ると、それはもう、ものすごく禍々しいオーラが漂っていた。
(これでは俺の命が危ない!)
そう確信した俺は、ささっと飯を片付け、彼女から逃げるように自室へ駆け込んだ。
正直警察を呼ぼうかなとも考えたが、彼女のことだ、たぶん警察も張り倒してしまうに違いない。と言うわけで……。
「うん!寝よう!」
つまりは現実回避である。
幸いにも今日は学校の創立記念日であり、もう飽きるまで寝放題さ!
「そして、裕也様が二度と目を覚ます事は無かった……」
「って、勝手に殺すんじゃねぇよ!」
「あら、良くお気づきになられましたね」
「『様』付ればバレバレだろうが!」
はぁ、はぁ…つっ、疲れる……。ていうか何故夕菜さんがここに?ここって俺の部屋だよな?
「はい。その通りですよ」
「勝手に人の心を読むなよ!」
「ならばこれからは、一言申し上げてから読みましょう」
「……いや、人の心を読むのを止めて欲しいんだけど」
「それは残念ながら無理ですね。諦めてください」
うぅ……。もう良いよ。勝手にしてくれ……。
「それでは勝手にさせてもらいます。裕也様」
あぁ、また読まれたよ……。