第2話:お買い物
「お買い物に行ってきて下さい、裕也様」
そう言って、俺を見るメイド姿の朝倉夕菜。
冷蔵庫と相談した結果、この結論に達した模様。
「え〜」
俺は只今テレビを閲覧中。
故に動きたくない。
しかし、
「いいから行け」
絶対零度の言葉。表情はにこやかだが、声はヤクザより怖い。
つーか命令形って……主人は俺だよな?間違ってないよな?
「挽肉と玉ねぎ、それと卵に牛乳…あ、あとナツメグを買ってきてください」
っていつの間にか行く事になってるし!人の話を聞かんかい!このエセメイドが!!……と、心の中で叫ぶ。
面と向かって言えない俺が憎い!!…だってさ、一週間暮らして思ったけどこの子怖いんだもん、しょうがないじゃないか!
つーわけで、マンションに一番近いスーパーマーケット、その名もバ○ーに来ている。
ここは結構広く出来ており、右側野菜から左側肉類、奥には魚類が、所狭しと並んでいる。
種類もかなり充実しているし、コストパフォーマンスもいい。
そして何より、ここの手作りパンがかなり美味い。
ここに来た以上、ぜひとも買って帰りたいのだが、あまりお金と時間を使いすぎると、ウチのメイドさんが怖いのでやめておく。
「さっさと買って帰るか」
必要なものだけをぱぱっと買い物籠に入れていく。
大体どれが良品で、どれが粗悪品であるかは判断が付く。
これも、独り暮らしが長かったおかげだ。
「よし、こんなもんかな」
「お?裕也じゃないか」
突然声を掛けられ驚く俺。
後ろを振り返ると、クラスメートの霞流昴がいた。
「なんだよ、スバルも買い物か?」
「まーな、お袋に言われてよ。釣りはやるって言うから来たのさ。お前は?」
「ん、まぁ夕飯をな」
「そうか、独り暮らしだもんな。……いや、でもお前はスゲーと思うぜ?家が金持ちでも鼻にかけず、全て自分の金でマンションかって生活費も仕送り無し。16で自立とはなぁ」
うんうんと納得するスバル。
「じゃあ、俺行くよ」
そうだ、早く帰らないと色んな意味で後が怖い。
「おう。後でみんなで押しかけるからな!」
……え?今なんと?
「ちょっ、スバル!待て!」
時既に遅し。
スプリンターの選手でもあるスバルは、瞬く間に走り去っていった。
「ヤベェ……。どう説明しよう」
脳内に映るのは、どう転んでも最悪の結末であった。