第1話:目が覚めると……。
「おはようございます。裕也様」
朝、誰かに呼ばれ、目を覚ますと、クラスメートの朝倉夕菜が、深々と頭を下げていた。
我が目を疑うとはこの事を言うのであろうか。
目の前の出来事に全くついていけない。
俺一人しか居ない筈の家に当然の様にいる夕菜。
よく見てみると、服装もおかしかった。
その頭にはレースのカチューシャ。そして、白のエプロンドレスに、フレアスカートとブラウスのツーピース。
まさにメイド。
どう見てもメイドである。
俺はどう反応したらいい?
普通に、おはよう。か?それとも、似合ってるね。か?
いや、そもそもだ。
「なんで君がここにいるんだ?!」
「いえ、細い事は気になさらずに。ご飯の準備は出来ております」
「いや、気になるよ普通!なぜここに居るんだ?何が目的だ?」
「あら?随分な言い方でございますね。私は今日からあなたのメイドなのです。それ以上でも以下でもございません」
そう言って屈託のない愛らしいスマイルを見せる夕菜。
可愛さに負けるな!俺!絶対に裏があるぞ!!
「いや、だからその意味が良くわかんないんだけど……」
「昨日の連絡を受けてないんですか?今日から1人、使用人が来ると」
そういえば昨日、親父からの電話が来た気が……。
〜〜回想中〜〜
―プルルル ガチャ。
「はいもしもし、芹沢ですけども」
「ヤッホォ〜マイサン。元気でやってるか?」
「……お掛けになった電話番号は現在使われておりません」
「そんなつれない事言うなよ〜。父さん、悲しいゾ?」
「黙れ、気色悪い。用事があるならさっさと言え、道楽オヤジ」
「う〜んとね、明日、そっちに1人使用人を送るから。あ、そうそう。その子凄く可愛いんだよねぇ〜、……手を出しちゃ、ダ・メ・だ・ぞ♪」
〜〜回想終了〜〜
「その使用人が君か?」
「そのとうりです。ようやく理解して頂けましたか」
ニコリと笑う夕菜。
「う〜ん。まあ、もう足掻いても無駄だろうな。あのオヤジが関わってるんじゃなあ」
「物分りが良くて助かりました。もし、追い出されそうになったら病院送りにしてでも……との事でしたから」
……マジ? つーか仕えるべき主人を病院に送ったりしたらいけねえだろ!!
「さて、朝ごはんにしましょうか♪」
これが、俺と彼女の同棲(?)生活の幕開けである。