一週間
「全く、大したもんさ!」
飛行船の中は、あの牧場主の話で持ちきりでした。
普段は取り引きには厳格なあの牧場主が、よく確かめもせずに商品をサービスするなんて、考えられないことでした。
みんなは、クリィが動物に夢中だった以上に、牧場主はクリィに夢中だったんだと言って笑いました。
クリィも、とんだ色女だとからかわれました。
「そんなに厳しい人なの? ずっと優しかったよ」
クリィは不思議そうにおじさんに言いました。
「きっと子供が好きなんだろうさ」
とおじさんは答えました。
でもクリィは、それは違うと思いました。
きっと、子供が好きなのではなく、動物好きな人が好きなのです。
きっと、動物を荷物としてしか扱わない飛行船の男たちが好きではなかったのです。
クリィは、楽しそうに動物の話をする牧場主を思い出し、もらったひよこに牧場主と同じレークという名前をつけました。
少しずつ青くなっていく空を眺めながら、ソラじいさんの言葉を思い出しました。
「わしもお嬢さんも、空が大好きな仲間じゃ。このまちでは青い空よりも金色の麦のほうが好きだと言うものが多くてね。誰も空のひびなど気づかんのじゃ。」
クリィは、ソラじいさんと牧場主が、少し似ていると思いました。
次は漁港に寄りましたが、夜中にちょっと寄港するだけだから、という理由でクリィは外に出してもらえませんでした。
クリィは、レークのえさのために貝殻をいくつか拾ってくるようおじさんに頼んで、寝ることにしました。
寝る前に髪留めを外して見てみると、少し色あせ始めているような気がして、クリィは残念でした。
一箇所だけことのほか色あせている部分を見つけて、クリィは不審に思いました。
しばらく考えた後、きっと牧場のネズミに青色を食べられたんだと思って、なんとなく納得しました。
こね直すとその色あせも分からなくなったので、安心して眠りました。
クリィが目を覚ますと、飛行船の男たちはみんなで錨を巻き戻していました。
今度はどこについたのかと思って外を見ると、空が鮮やかな青です。
クリィは帰って来たのです。
おじさんがクリィをびっくりさせるために、着陸してから起こそうと思っていたのでした。
「なんだ、起きたのか! 待ってろ、もうすぐ着陸だから」
おじさんはクリィを横目に言いました。
クリィは、この飛行船の旅を振り返ってみました。
空のひびとソラじいさん。
白い空と子供たち。
小さなネズミとひよこのレーク。
これが全部たった一週間で起こったとはとても思えませんでした。
それほどこの旅はクリィにとって大きな経験でした。
クリィは窓から空を見上げました。
一週間で、この空も今まで以上に身近なものになったような気がしました。
飛行船が着陸すると、クリィは真っ先にお母さんのいる家に向かって駈けて行きました。
一段落しましたが、まだ続きます。
ここがちょうど折り返し地点、の予定です。




