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空作りのまち  作者: 一平
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空の色、人の色

 ネズミたちは、壁の高いガラスのケースに入れられていました。

このネズミたちは、ちょっと見ている間にもかなりの量を食べ、動き回り、子を生んでいました。

これが野生になれば自然界を食べつくしてしまうのは明らかでした。


「空に穴をあけようとする本能なんだろうが、空の草を見つけると真っ先に食べようとする。寿命は一週間もないが、その間一睡もしない。そして何より驚きなのは、このネズミは死ぬとどろどろに溶けるんだ」


カルはこのネズミについて分かっていることをソラじいさんに説明しました。

これらの不思議な性質は、空の上という過酷な環境のために発生したものだとカルは考えていました。

死ぬと溶けるという非常識な話を初めソラじいさんは信じませんでしたが、じきに目の前でそれが起こりました。

元気に走り回っていたネズミが突然動きを止め、倒れたかと思うと、数秒後には溶け始め、すぐに明るいオレンジ色の液体になったのです。

ソラじいさんが呆気にとられていると、カルが説明を加えました。


「こいつらは、成長が早い分、体の割りに多くのエネルギーを必要とするんだ。効率よくエネルギーをとるために、消化機構が相当発達しているんだと思う。死ぬと内臓の粘膜が止まるから、強力な消化液が体ごと溶かしてしまうんだろう」


言い終わるとカルは、部下に命じてこの液体を取り出そうとしました。

ソラじいさんは、これを静止するしぐさをして、黙って観察を続けました。


 飛行船の出発時刻が近づいていました。

クリィたち二人はまちを一周して発着場に戻り、飛行船に乗り込んでいました。

クリィのお母さんは、午前中ずっと歩き回って思い出話をしていたので、幸福な疲労感に浸っていました。

クリィは、いまや半ば自分のもののように感じられるこのまちの風景を惜別の念を持って眺めました。

最初はつまらないと思っていた白っぽい空も、これはこれで良いものだと思いました。


「あっ! お母さん、あれ!」


お母さんはクリィの指差す方向を見ましたが、ただ空があるだけでした。


「またひびができてる! おじいさんに教えてあげなきゃ!」


お母さんはうろたえました。

もともとこの飛行船には乗らないと言っていたソラじいさんに会うには、またまちに出て探さねばなりません。

今出れば、飛行船の出発に間に合うはずがありません。


「行ってもいい? 来週の飛行船で帰るから!」


お母さんは観念して小さくため息をつくと、笑顔を作って言いました。


「行ってらっしゃい。気をつけてね」


 まもなく出発した飛行船の中で、クルトはクリィが自分の手を離れたのを感じていました。

空作りのまちに引っ越してから、家族はクリィただ一人でした。

クルトはクリィのために働きました。

だからこそ、クルトを支えたのはクリィでした。

いずれ、クリィが家を離れるときが来るでしょう。

そうなったら、一人で生きていける自信がありませんでした。


 頬杖をついてぼうっとしているクルトの目の前に、鮮やかな青色の花が一輪現れました。

見ると、エールが伺うような目をしてそれを差し出していました。

エールは、クリィにやったのと同じように空のもとと空の草を混ぜ、器用に花の形に仕立てたのでした。

クルトは微笑んでそれを受け取ると、


「あの時と同じね」


と言いました。

(よすが)を失ったクルトには、自分を想ってくれる存在がとても大きく感じられました。


 一週間後、クリィとソラじいさんは飛行船の中にいました。

二人は思い思いに橙色の空を眺めていました。

空のひびはもうどこにもありませんでした。

ソラじいさんは、人間が平和に暮らしているこの世界のことを考えていました。

外にいるネズミたちを疎外しながら、自分たちはそのネズミの亡骸(なきがら)を肥料としてのうのうと暮らしているこの世界。

ソラじいさんは、空の美しい橙色がネズミの体液でできているとは誰にも知らせたくありませんでした。

そう、ネズミたちは仲間を食べることはなかったのです。

その性質を使ってネズミの被害を防ぐのは、ソラじいさんにはほとんど罪悪のように想われました。

でも、こうするより他になかったのでした。

いつか、ネズミたちはこれを克服してまた人間たちを悩ませるでしょう。

ソラじいさんは、ネズミたちにはその資格があると想いました。

それ以上に人間はネズミを悩ませているからです。


 ソラじいさんは、クリィにはまだこのことを話していませんでした。

空作りの工場、空集めの工場の関係者しか、空の材料のことを知りませんでした。

クリィにはこのことを知る権利があると、ソラじいさんは思いました。

でも、いつ、どうやってそれを話していいものか分かりませんでした。

これは正義の話ではなく、ずる賢いニンゲンの話でした。


 クリィは、空を眺めながら、ぽつんと、


「おじいさん、この空も綺麗だね」


と言いました。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

小説を書いたのは初めてです。

自分が作った設定に縛られて、最後はちぐはぐな展開しか書けませんでした。

回収できてない伏線もちらほらありますが、ご了承ください。


ご意見、ご感想など書いて下さると嬉しいです。

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