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勇者パーティから勇者を追放したので、もう魔王城には行きません!

【短編版】勇者パーティから勇者を追放したので、もう魔王城には行きません!

掲載日:2026/08/25


「ねぇ、フォル……。悪いけど、もうあんたとは一緒に行けない」


 魔王討伐に向けて旅を始めてから三ヶ月。

 まもなく出発という時に、踊り子のルディアが突然そう言い出した。


「急にどうした? 何か気に触るようなことをしてしまったか?」

「気に触るとか、そういうことじゃなくてさ……」


 じゃあどういうことだ?

 何か不満があったのだろうか……。

 

 勇者パーティのバッファーであるルディア。

 常に場を盛り上げてくれる子で、何度その明るさに救われたかわからない。

 そんな彼女に抜けられては、パーティの士気そのものに関わる。


「ルディア、考え直してはくれないか?」

「いや、悪いけどそれは無理だ」


 勇者フォルの言葉を遮ったのは、戦士のアルデオだった。


「無理? アルデオはルディアが抜けてもいいって言うのか!?」

「そういう意味じゃなくてよ」

「今無理と言ったじゃないか!」


 つい、語気が強くなる。

 

 アルデオは仲間想いで面倒見のいい男だ。

 同じ前衛でありながら、後衛の二人にも常に気を配る。

 彼がいるから、僕は戦闘中に魔族のことだけを考え、戦うことができた。


「フォル、落ち着いてください。ルディアが抜けるわけではありませんよ」


 空気が悪くなり始めたところで、僧侶のメデリが口を開いた。


「でも、もう一緒に行けないとルディアが」

「はい。もう一緒には行けませんから」


 何を言っているのかわからない。


 メデリは知識が豊富で思慮深く、パーティのまとめ役だ。

 特に僕とアルデオは、何度彼女に治癒魔法をかけてもらったかわからない。

 そんな知性溢れる彼女が、意味のわからない発言をすることが理解できなかった。


「なら止めないといけないだろう!?」


 ルディアが首を横に振る。


「違うんだよ、意味がさ」

「意味が違う……?」


 今度はアルデオが首を縦に振った。


「あぁ、俺たちには俺たちの夢があるんだ」

「私たち三人の意思は固まりました。ですので、多数決をもってあなたを追放します」

 

 最後にメデリがそう言い放った。




 *


「ちょ、ちょっと待ってくれるかい!?」


 頭が追いつかない。

 ルディアが抜けるのではなく、僕が追放される側?


 僕たちって、勇者パーティのはずなんだが——。

 

「混乱させて悪い。でも、俺たちはもう行けないんだ」

「もう行けないってどういうことだい、アルデオ!!」


 思わず、彼の肩を強く掴む。

 ぶつかる視線からは、僕への嫌悪感ではなく罪悪感が滲んでいた。


「ごめん……。フォルが魔王討伐をして、親父さんの仇を討ちたいのもわかってる。でも俺たちには、行く理由がないんだ」

「行く理由がない……?」

「そうだ。行く理由がない」


 アルデオは何を言ってるんだ?


 僕たちは勇者パーティだ。

 行く理由なんて、考える必要さえない。

 魔王を倒し、世界の平和とみんなを護る。

 その使命を全うする以外に何が必要だと言うんだ……!


「フォルってさ、夢ある?」

「夢?」

「うん。夢」


 ルディアが急に話を振ってきた。

 

 表情を見る限り、ふざけているわけではないだろう。

 こんな時に、何故そんな質問をしてきたのかはわからないが……。


「僕の夢は、世界の平和を、みんなを護ることだ」

「……それってさ、夢なのかな」

「どういうことだ?」

「それって、フォル自身がやりたいことなの?」

「やりたいとかやりたくないとか、そういう話じゃないだろう? 魔王討伐は僕たちの使命だ!」


 質問の意味がわからない。

 僕の家は代々勇者の家系だし、これが役目なんだ。

 僕たちがやらなければ、誰が魔王討伐を成し遂げる?


「ですが、私たちはそれを辞めたいのです」

「……辞めたい?」

「はい。私たちは勇者パーティに選ばれただけ。崇高な目標など持ち合わせていません」

「でも選ばれたからには——」

「それは、自らの夢を諦める理由になりますか?」


 メデリが珍しく、僕の発言に被せてきた。


「夢って……。メデリの夢は魔王を討伐することだろう?」

「いいえ、違います」

「違う!? ならどうして勇者パーティにいるんだ!」

「先ほども言いましたが、選ばれただけです」

「でも選ばれたんだろう!?」


 何故、選ばれた使命を全うしない!?

 なんて責任感がないんだ!!


「選ばれたからって、やりたいとは限らないんだよ」

「ルディア! キミはなんてことを……!!」

「だって、あたしもやりたくないし」


 やりたくない……!?

 何を言っているんだこの二人は……!!


「だから言ったろ? もう行けないって」

「アルデオ! 今まで一緒に戦ってきたじゃないか!!」

「そうだな、それは事実だよ。でも昨日の夜、俺たちは気づいちまったからさ……」

「気づいた!? 何に!!」


 アルデオは一つ大きなため息をつくと、はっきりと告げた。


「魔王討伐に行きたいのが、お前だけだってことに」




 *


「今日はここで休もうか」


 フォルの言葉に三人が頷く。

 かつては栄えていただろう廃村が、今晩の宿となった。

 各々明日の準備を整え、起こしていた焚き火の元へと集まる。

 

「あれ? フォルは?」

「素材が少し足りないからって、外へ取りに行ったぞ」

「それなら、僧侶の私も」

「フォルが一人でいいってさ。メデリ、疲れてるだろうからって」

「それは……彼も同じでしょうに」

 

 旅を始めてから三ヶ月。

 互いのこともなんとなくわかってきていた。


「もう、三ヶ月経つんだね〜」

「そうだな。あっという間だった」

「いろんなことがありましたね」


 思い出話に花を咲かせていると、背後に視線を感じた。

 すぐさまアルデオが臨戦態勢に入り、二人はその背後へと回る。


「敵かな?」

「いや、まだわからない。二人とも、気を抜くな」


 くそっ、こんな時に戦闘か。

 今はフォルもいないし、俺が二人を護りながら戦わないと。


 緊張が走る中、メデリが杖を下ろした。


「……待ってください。あれ、子供ではないですか?」

「子供!? こんなとこに!?」


 その言葉に目を凝らすと、確かに小さな人影が二つ。

 とはいえ、魔族でないとも言い切れない。


「アルデオ、剣を下ろしてください」

「しかし……」

「子供であれば、出てきてもらわないと」


 メデリの言うことは尤もだ。

 だが、この状況で剣を下ろすなど——。


 決断できずにいると、ルディアが口を開いた。


「なら、あたしが見てくるよ。それでもし魔族だったら、アルデオはすぐ戦えるし、危なくてもメデリが助けてくれるっしょ?」

「おい! そんなこと——」

「もし子供だったら助けないとだよ? 見捨てるの?」

「それでルディアが——」

「だいじょーぶ! あたし踊り子だよ? 回避は得意だかんね!」


 前衛である自分が動かず、後衛であるルディアを送る。

 下手をすれば命に関わることだが、メデリの覚悟も決まっているようだった。


 ——やるしかない。

 もし魔族でも、俺がすぐ踏み込んで盾になればいい。


「わかった。ルディア、俺の瞬発力を上げといてくれ。それなら何かあってもすぐ護れる」

「りょーかい!」


 彼女が舞うと、身体の底から力が湧いてくる。

 そのままルディアは、小さな人影に向かって駆け出した。




 *


「やっぱり子供だったよー!!」


 暗闇から、ルディアの明るい声が飛んできた。

 俺もメデリも武器をしまうと、すぐさま彼女の元へと向かう。


 そこには、まだ幼い少女と、その子を護るように立つ威勢のいい少年がいた。

 二人の恐怖を解くように、メデリが優しく声をかける。


「こんばんは、私はメデリと申します」

「うるさい! お前らもどうせ妹を奪いにきたんだろ!?」

「そんなことはいたしませんよ。ご兄妹なのですか?」

「そうだ!! ファファは俺のたった一人の家族なんだ!!」

「そっか〜、よく護ってきたね! かっこいいぞ!」


 ルディアが少年の頭をガシガシと撫でると、堰を切ったように泣き始めた。

 

 こんな廃村に妹と二人——。かなり心細かっただろう。


「大丈夫だから泣くな泣くな! 妹はファファで、お前は?」

「ぐすっ……そういうお前は、なんて言うんだよ……」


 鼻水垂らしてるくせに、ちゃんと男なんだなー。


「俺はアルデオ。はい、お前の番な!」

「レシ……」

「いい名前だなー! そこのイケてるねーちゃんはルディアだ」

「よろしくね〜!」

「……よろしく」


 二人を焚き火へと連れ出し、ルディアが夕食を振る舞う。

 食事も久々だったのだろう。ものすごい勢いで平らげていた。

 

 お腹が膨れると、ファファはメデリの膝の上で寝てしまい、レシがぽつりぽつりと話し始めた。


 ひと月程前、ここは魔族に襲われて廃村になったらしい。

 親も村人たちも殺されたが、二人はなんとか生き残り、今日まで耐えていたようだ。


「たまに大人が来るんだ。他の子たちはみんな、そいつらと行っちゃった」

「レシたちはどうして行かなかったんだ?」

「ファファと、離れ離れになるって言われたから……」


 魔族に親を奪われ、住むところがなくなった子供は孤児院へと送られる。

 しかし、どこの院も常にギリギリで生活しているため、兄妹で仲良くというのもなかなか難しい話ではあった。


「そうか、お前にーちゃんだもんな! じゃあこれやるよ!」


 アルデオは、ありったけの食料をレシに手渡した。


「いいの……?」

「いいんだよ! それならしばらく食うには困らないだろ?」

「ありがとうアルデオ!」


 少年は深々と頭を下げると、妹を背負い去っていった。


「魔族のせいで、あんなちっちゃい子たちまで……」

「あぁ、さっさと魔王を倒さないとな」

「……本当に、それで解決するのでしょうか」

「どしたん? メデリ」

「食料はいずれ無くなります。そうなれば、結局あの子たちは生きていけない。目の前の困っている子たちを置いて、先に進むのが正しいことなのでしょうか」


 メデリの言葉に、ルディアが火を見つめたまま静かに口を開いた。


「実はさ、レシたちみたいな子の居場所になるのが夢なんだよね。ご飯作って、歌って踊って。みんなが笑顔になれる場所を作りたいんだ」

「いいですね。私は子供たちに勉学を教えるのが夢でした。かつて自分が、孤児院でそうしていただいたので」

「二人ともすげーな! 俺なんて、故郷の村を護りたいぐらいしか夢ないのにさ。じいちゃんばあちゃんや、村の子供たちを護りたいんだよなー」


 各々が秘めていた夢や思いを口にする。

 

 ——勇者パーティに選ばれたからには、それを受け入れて成し遂げるべきだ。


 そんな正義をかざす者は、三人の中にいなかった。

 

「あたしさ、正直——」



 

 *


「僕が外に出てる間に、そんなことがあったのか……」

「あぁ。だから俺たちはもう一緒には行けない」

「ごめんねフォル。あたしたちはこの村に残る」

「子供たちだけでは、暮らしていけないでしょうから」


 まさかの三対一。

 しかも、勇者である自分が一だなんて……。

 でも、それでも僕たちは勇者パーティだ。


「じ、じゃあ、魔王討伐はどうする気なんだ!?」


 きっとわかってくれる。

 確かに目の前の子供たちも大切だ。

 だけど僕たちが行かなければ、同じような思いをする子供たちが増えるだけだ!


「フォルは行くんだろ?」

「もし疲れたら、いつでも戻ってきてね!」

「ここから、フォルの無事をお祈りしております」


 嘘、だろ……?

 なんでこんなに、ここに残る意思が固いんだ……?


「でも、僕たちが魔王城へ行かなければ——」

「「「行きたい人が頑張って」」」


 僕たちは、勇者パーティのはずだった——。


「じゃあ、気をつけてな」

「あたしたちは離れていても仲間だよ!」

「神のご加護があらんことを……」


 でも勇者を追放したので、もう魔王城には行きません!

 



 勇者パーティに選ばれたからって、

 みんなが行きたいかはわからないよね?

 そんな話。


 連載スタートしました☆

【連載版】勇者パーティから勇者を追放したので、もう魔王城には行きません!

 https://ncode.syosetu.com/n0306mr/



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― 新着の感想 ―
斬新過ぎる! 流石です。このパターンは初めてみました! 行きたい人がいけばいい! これからどうやって再結成していくのか? まさかのソロ?! その素晴らしい発想に勉強になりました!
勇者おいといて、パーティメンバーがスローライフするのかな? 勇者はメンバーに恵まれなかったなあ
勇者パーティがまさかの貧乏くじ扱い!! って、えっ、連載版スタート!? ここからスローライフが始まるのか、ソロ討伐編になるのか……まさかの展開!!/(^o^)\
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