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落ちこぼれ聖女候補に転生した魔王は静かな隠居暮らしを目指す~今度こそブラックな人生はごめんです!~  作者: あんずのかおり


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第5話 魔力量測定器

レディア聖院女学園――

レディア聖王国の首都ルミディア郊外、城壁の外に広がる静かな森のほとりに、白を基調とし、まるで古い城のような荘厳な佇まいを持つ校舎。その歴史は遥か昔、魔王が世界を脅かしていた時代にまで遡る。勇者と共に魔王を討ち果たした大聖女ソディナが創立した、世界で唯一の由緒正しき聖女養成機関である。


学園は 初等部・中等部・高等部 の三つで構成され、それぞれに三学年が設けられている。

初等部と中等部は 各学年三クラス、一方で高等部は 各学年わずか一クラス しか存在しない。

そのため、高等部へ進めるのはほんの一握り――まさに狭き門だ。

1クラスあたりの生徒数は約20名。

全校生徒数は わずか400名ほどと少数精鋭だ。

世界各国から魔力を持つ少女たちが集まり、その多くは貴族の出身である。

これは、魔力を持って生まれる子供の割合が貴族階級の方が高いためだ。


ただし、入学基準は身分によって異なる。


平民の場合、魔力を持ち「聖女になる意思」を持っていれば門戸は開かれている。


一方、貴族出身の場合は厳格で、魔力量だけでなく、精神性・資質・政治的立場など、あらゆる面から審査される。


これは権力の独占を防ぎ、聖女という存在が特定の階級に偏らないようにするためである。


聖女の数は非常に少ない。


それに対して、聖女の役割――瘴気の浄化、結界の維持、魔物討伐、政治・外交への関与等はどの国にとっても重大である。


ゆえに聖院女学園の生徒である「聖女候補生」となったからといって、全員が聖女になれるわけではない。


その座を得られるのは、ほんの一握りの少女のみ。


それでも、ここで学ぶことこそが、世界で唯一聖女へ近づける唯一の道なのだ。


そして、学園のその一角にある〈魔力量測定室〉。


広々とした教室の中央には、透明なガラスの台座に青く輝く大水晶球が据えられている。


それは、魔力を流し込むことで個人の魔力量を数値化する、学園でも最も重要な測定器のひとつだった。


午前中、その部屋には中等部一年生の全生徒たちが集められていた。


今日は第二学期の初めに行われる、定例の魔力量測定の日。


生徒たちは期待と不安の入り混じった表情でざわめき、教室のあちこちで小声の会話や息を呑む音が響いていた。


そんな空気を、一つの澄んだ声が切り裂く。


「皆さん、お静かに!」


ピンと張り詰めた緊張が教室を包む。


声の主は、紺色の修道服に身を包んだ女性――中等部一年の学年主任でありユティナのクラス一年二組担当教員、カトリット・ロムウェル。


穏やかな緑の瞳を宿しながらも、その静かで澄んだ声には、生徒たちの心を一瞬で引き締める力があった。


「これより、中等部一年二組の第二学期初めの魔力測定を始めます」


「この夏季休暇の間、皆さんは魔力量を高めるために努力してきたことでしょう。そして本日、その努力の成果が必ず現れるはずです」


カトリット先生の声に、生徒たちの胸の中に期待の熱が一気に広がる。


「それでは、順番に測定を始めます。名前を呼ばれた人は、この測定器の元まで来てください。アニヤ先生、測定の方をよろしくお願いします」


測定器のそばには、カトリットと同じ紺の修道服を身にまとった女性が静かに佇んでいた。


知性を思わせる青い瞳と、きらりと光る眼鏡のフレームが、彼女の落ち着いた雰囲気をさらに引き立てている。


アニヤ・オーヴェンス―― 学園では主に備品や施設の管理を任されている教員であるが、それだけに留まらない。


体術の指導を担当し、さらに選択科目として剣術の教鞭も執る、実戦派の教師でもあった。


整った容姿と落ち着いた物腰からは想像しにくいが、その剣技は確かな実力に裏打ちされており、かつては聖王国内でも名を知られたほどである。


「はい、本日はよろしくお願いします、カトリット先生」


アニヤの澄んだ声が、教室の緊張感をさらに引き締める。


青く光る大水晶球の周囲で、魔力量測定が静かに始まろうとしていた。


教室内のざわめきの中、アルマはユティナに小さな声で話しかけた。


「ねぇ、ユティ。どれだけ魔力量が増えているか楽しみだね!」


「あ、う、うん……」


ユティナは小さく答えたが、顔は引き攣っている。


(どうしよう……。この体、全然魔力感じないんですけど!? すごく集中しても、微かにしか……)


その不安をよそに、次々と生徒の名前が呼ばれ、測定器の前に立っていく。


「次、マリアベル・ランカスター」


「はいっ!」


返事と共に現れたのは、今朝ロビーで絡んで来たマリアベルだった。


瞳に力強さと自信がみなぎり、堂々とした立ち振る舞いだ。


「ふふ…私わたくしこの夏季休暇中、帝都に戻り特別講師を招いてレッスンを受けてきましたの。どれだけ魔力量が上がったか、楽しみですわ」


「マリアベル様……羨ましいですわ!」

「きっとすごく魔力量が上がっているでしょうね」


取り巻きたちが熱心に持ち上げる。


マリアベルは測定器の前に立ち、青い大水晶球に魔力を注ぎ込む。


大水晶球は徐々に青く光を帯び、周囲を淡く照らした。


「マリアベル・ランカスター。魔力量3210。魔力判定Cランク。前回より105上昇しています」


「す、すごい! 三桁も上がった!」

「さすがマリアベル様」

「このまま行けば、高等部に上がる頃にはBランクも見えてきますわ!」


教室内は賞賛の声で湧き立つ。


マリアベルは誇らしげに微笑み、胸を張った。


——魔力量はランクで評価される。

•Sランク:10000以上

•Aランク:7000以上

•Bランク:5000以上

•Cランク:3000以上

•Dランク:1000以上

•Eランク:500以上

•Fランク:1以上


「やっぱり……魔力量って大事なんだね」


ユティナがぽつりと呟くと、隣のアルマが小さく頷いた。


「うん。聖女を目指すなら、魔力は欠かせないよ。治癒魔法を使うにも魔力が必要だし、結界を張るならもっとたくさんの魔力がいる。まして王都みたいな大きな街全体を守る結界なんて、想像もつかないほどの魔力が必要なんだよね」


「……そっか。じゃあ、Cランクって本当にすごいんだね」


ユティナは感心したように呟きながら、ふと自分のFランクの測定結果を思い出し、苦笑いを浮かべた。


「うん、そりゃね。それと、教会に仕える聖女は殆どCランクが多いんだよ。Bは王宮とか国に仕える聖女クラス。Aは教会が誇る大聖女。Sランクは……聞いたこともないね。ちなみにソディナ様はSランクだったみたいだよ」


「へー……なるほど」


「だから、中等部に入ったばかりでCランクって十分すごいんだよ」


「そうなんだ……。アルマは前回はどうだったの?」


「あれ? 私のランク忘れちゃったの?」


「あ、いや……なんか、ついド忘れしちゃって……」


「えー、普通忘れるかなー? 親友のことなのに?」


「あはは……ごめん」


二人のやり取りを遮るように声が響く。


「はいはい! 皆さんお静かに! 次、アルマ・シェルフィード!」


「あ、はいっ!」


アルマは軽くお辞儀をし、測定器の前へ進む。


青い大水晶球に手をかざし魔力を注ぐと、光はマリアベルよりも鮮やかに瞬き、力強さを感じさせた。


そんな光景を見ながらユティナは考える。


(やっぱり……魔力はあるに越したことはないわね……少なければ使える魔法も限られる訳だし……)


そんな思いを抱えつつ、測定結果が表示された。


「アルマ・シェルフィード! 魔力量4260。魔力量判定Cランク。前回より220上昇です。素晴らしい成長ですね!」


「あ、ありがとうございます!」

アルマの喜びに、教室内からどよめきが起こる。


「もうBランクが目の前って、すごくない?」

「このペースなら、中等部中に確実にBランクじゃない!」


アルマはこっそりユティナにピースサインを送り、笑顔を見せた。


その光景を見て、ユティナも自然に顔が綻ぶ。


(す、すごい……もうすぐBランクなんだ!)


そんな状況が気に入らないのか、マリアベルとその取り巻きたちは明らかに不満げな表情を浮かべていた。


「次、ユティナ・ハーリット!」


「は、はいっ!」

突然呼ばれ、ユティナは思わずビクッと体を震わせる。

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