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4 行きたくなぁい!

更新しました〜 私は別に注射は好きでも嫌いでもないです。打たれるときにはつい針を見てしまいますが、それだけです。

 

 拝啓、近所のおじいちゃん、おばあちゃんへ。

 俺は今、未知の生き物に全身をくまなく包まれています。

 ああ、これはまるで……そう……yogib○……


「みゅい?」


「っと、ごめん。クッションと同列は流石に嫌か?」


「みぃー」


 そういうわけではないらしい。やっぱりよくわからんな。

 みゅいみゅいと頭を俺の腹にこすりつけてくる()()()()を撫でてやりながら、とりあえず明日からの予定を考えることにした。



 −−−



「じゃあ、いってらっしゃ〜い」


 という気の抜けた言葉とともに、俺はようやく、第二の人生を手に入れたのだ!

 ……と、言いたいところだが。

 実際は、署名した契約書を役所のようなところに提出し(突然神に外へ送り出されて、どうしようかと紙をもってうろついていた俺に気づいた優しい天使さんが連れて行って説明してくれた)、それが受理されるまでの間にこれから行く世界についていろいろ研修を受けたりした(これは戻ってきたら神が「じゃあ研修始めるね〜」と言って唐突に始められた)。

 やはり世界が違うと勝手も違うので、理解するのにめちゃくちゃ疲れたが、まあ生き返れるのならそんな苦労など取るに足らないことである。というか、いろいろ知った上で行けるのは今後大きなアドバンテージになると思う。なんせその世界を管理している神から直接聞いているのだ。間違っているわけなどないだろうし、いるのかわからないが現地住民よりも世界について詳しくなった気がする。たぶん。あと神はやっぱり行動が無茶苦茶である。サイコパスなのかな。

 そして俺は、研修を受けているうちに前よりもっとずっと生きることへの執着が強くなっていった。いやー、離れてこそわかる良さってやっぱりあるんだな。生きるって素晴らしい。


 ちなみに今は、薄暗い会議室のような場所で、転生してすぐやることなどを教えてもらっている。どうでもいいことだが、神が伊達メガネ(レンズが入ってない)をくいくい上げるのがとてつもなくうざい。ズレてねえだろ。

 真面目くさった顔をして、指示棒でスライドを指す神。見た目パルテノン神殿もどきのくせに中身はジャンルごちゃ混ぜである。神ってみんなこうなの?


「君はエルフになる予定だね、ということは魔法に秀でた種族になるわけです」


「はあ」


 そういや言ってたな。生き返ったら女のエルフに……。感覚とか変わるんだろうな、よくわからんが。

 それより魔法。魔法は元の世界にはなかったものだ。一体どんなものなのか……。


「魔法というのは〜、わかりやすく言うと四次元の存在に干渉することですね。それで」


「四次元!?」


 思わず口を挟んでしまった。いやだって四次元ってあの四次元? 青いアレの白いアレ?

 すげー未来っぽいじゃん!

 ……いや、別の世界なんだから違うか。よく考えたら未来もなにもないな。こっちの世界と時間つながってないし。

 俺は勝手に納得した。が、神は違った。


「ん? ああ、そっか。君の世界では四次元って言うとど」


「いや言わんでいい大丈夫」


 おっと危ない危ない。別に言わなくてもいいことをわざわざ言う必要はないんだぜ。こいつは思ったこと全てを口に出してしまうんだろうか。

 呑気な顔をして口を滑らせかけた神をスマートに制止する俺、やはり生き返れるとわかったことで余裕が戻ってきたようだ。

 神は少し不審そうな顔になったが、なぜか頬を緩ませまた話し始めた。なにかいいことを思い出したのだろうか。美味しかった料理とか。神って料理するのかな。


「……まあいいや。それでね、四次元では、まあ四次元っていうのも便宜上そう言ってるだけなんだけど、それはまあおいといて。とにかく四次元では、そこにあってそこにないものっていうのかな?が存在して、常に全ての可能性が重なり合ってるんだよね」


「ほぉん」


 なんだか、すごくむずかしいはなしが、はじまったようなきがするぞ。


「で、魔法はそれらの可能性に干渉することでその可能性を確定し、発生する現象などを三次元の世界に引きずり下ろすことです」


「へ〜」


 さっぱりわからん。何いってんだコイツ。

 魔法ってあれなの、なんか法則とか原理的なやつ、あの、アインシュタインとかが見つけちゃう系のやつじゃないのこれ。俺一般人なんだけど。

 わからないなりにとりあえず相槌をうっておく。全く身に入っていない俺に気づかず、神はまだまだ説明を続けた。相変わらずメガネクイッが腹立つ。


「で、その四次元にはここにいた人たちとかがいるんだよね。ここと行き来してる人もいるし」


「え、じゃあ今俺も行けるってこと?」


「もちろん行けるよ〜。転生特典であの世界に行ったあとも自由に行き来できるようにしてあげる」


「ヤッター」


 よくわからないけど特典がついた。お得である。

 老人の長話に付き合うと良いことがあるのだ。生活の知恵を何気なく言ってたり、「そうだ!」などと突発的な思いつきでいろいろなものをくれたりする。雄弁は銀、沈黙は金、相槌は銅である。使いやすいし役に立つ。

 喜んだのも束ぬ間、神はとんでもないことを言ってきた。


「じゃあ、早速行ってみようか」


「え?」


「あそこに池があるでしょ」


 池…? そんなものあったか?

 指示棒で神が指す先を見ると、


「あそこから行けるから、ちょっと降りて行ってみよう!」


 完全に毒の沼です。対戦ありがとうございました。

 神が指していたのは、窓越しの遠目から見ても立派な毒沼であった。謎の蒸気がどす黒い紫色をした水面からぶくぶくと泡を出しながらたちのぼっている。周囲にある草のような何かは焼け焦げたように黒ずんでいるし、ご丁寧になにやらハザードマークのようなものが書かれた立て看板まである。本物だ。俺はきっとあそこから地獄に連れて行かれるんだ……。ああ、だからあの天使さんは「無事を祈っています」みたいなことを言っていたのか……。

 こうなったらもう、


「すいませんちょっとお花摘みに」


「だめだよ逃げちゃ」


「オォウ」


 逃走失敗。最初に縛られていたリボンだか紐だかわからない何かが復活した。

 神は俺を抱えてスタスタと歩きだした。今からでも入れる保険はありますか? ないですか、そうですか。神の足取りは軽い。俺の気は激烈に重い。対照的すぎて涙が出そう。


「まあまあ落ち着いて、そんなに怖がらなくても大丈夫。怖いのは最初の一瞬だけだからね。」


 そ、そんな注射みたいに……! 「ちょっとチクっとしますよ〜」みたいなノリで……!

 未来を憂える俺に、神はそんな言葉をかけた。笑顔で。嬉しそうなのが怖い。

 あいつがちょっとで済んだ試しはないし、チクっとしたあとも着実に痛みを増すのは知っている。どうしよう。注射やだな。健康が一番。あの時だけ意識とか無くなれば良いのに。

 ……いや、今恐るるべきは注射ではなく毒沼だった。いや、もう、ほんとに、


「行きたくなぁい!」


「はいはい、大丈夫だってば」


 俺、無事に生き返ったら局部麻酔の魔法を覚えるんだ。絶対。

あ、ありのまま今起こったことを話すぜ……

【保存[実行]】ボタンを押したら、「エラーが発生しました」とか言ってデータが全部消えたんだ……

チクショウ…… セキュリティトークンって何だ……


追記:

前書きと後書きって結構やりたい放題できるんですね。楽しい!


謝罪:

青くアレの白いアレを知らなかった人がいたらすみません。私も漫画の1巻しか読んだこと無いです。アニメは見てない……。

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