『身命ともに鋼の如く2』
蛍光灯が砕けてガラスが散乱していた。
リーベスの靴底に踏み潰されて、バリバリと音を立ててさらに細かくなる。
「――――」
極限の集中と〝剣〟の感知拡張によって、真っ暗な通路を事も無げに歩いている。
だが、リーベスと逸れた兵士たちはそうはいくまい。
「余計なことを、考えるな」
違う今はそんなことじゃない。
案内役がいなくなった。
現状の一番の問題はそれだ。
「一応、内観は頭に入れているが……」
余りにも、基地内が変化している。
植物らしきものが群生し、樹木が至る所で存在を主張している。
是では記憶なんてあてに為らない。
「長くここで生活している任気ならばわかるのだろうが……」
ないものねだりだ。
切り替えよう。
こうなれば、選択肢は二つ……。
「他の者と合流するか、俺単独で探索を続行するか――」
リーベスは瞑目して三十秒ほど考えた。
「後者だな」
そしてきっぱりと答えを出す。
「通信機器なしで、他の連中と合流するのはハードルが高いし、他の人間にリソースを割くなら、もう通信機器室を探した方が効率的!」
――!
「来やがったか!」
地中の振動……だけではない!
「さっきしてやられたからな! 今度は上下左右警戒している……!」
リーベスが飛ぶのと同時に、左右から枝蛇の鞭撃が放たれる。
しかしその攻撃は、僅かにリーベスの身体の下を通る。
「ふ――っ‼」
すでに攻撃態勢に入っていたリーベスは、ワイヤーを軸に横回転した。
その回転の運動エネルギー利用する!
「先ずは、クソ野郎……娘の仇だッ‼」
ワイヤーが外れ、そのエネルギーは剣先に収斂。
そのまま放たれたリーベスの渾身の一閃が、枝蛇の胴体を深々と斬り裂く!
「しいいいいいいいいいい⁉」
「喚くな!」
平衡感覚を失わず華麗に着地し、そのまま痛みに悶える枝蛇に躍りかかる。
「あの子らの方がよっぽど痛かったはずだ‼」
「しいいいいい‼」
苦し紛れの鞭撃が放たれるが、身体の半ばが千切れかかった上での攻撃だ。
大して速度は無い!
回復の暇など与えず削りきる。
「初見じゃない! 何度も戦った! 〝人間〟は既にお前の攻略を知っている! 進歩がないぜお前……⁉」
枝蛇攻撃を跳躍することで、ひらりと躱して肉迫。
「俺達はお前に勝てる――‼」
深々と抉られた傷口にさらにもう一閃。
リーベスの剣圧によって切断されて、断末摩を上げて絶命する。
「いつまでも嘗めるなよ〈モンスター〉。俺達の進歩は世界を食らう……‼」
それから数度の枝蛇との戦闘があった。
しかし、それなりの負傷はしつつも彼は着実に通信機器室へと近づいていた。
「……〈モンスター〉との遭遇が増えてきた。此処から先へは行かせたくないみたいだな」
あまりに露骨な対応に苦笑していしまう。
隠す気はあまりないようだ。
「この先にあるのだろうな」
樹木で出来たアーチがあった。
殊更に怪しく、罠を想起させる。
「かと言って、闇雲に探索を続けるのも限界だ」
自身の左手を見て、呟いた。
「……ふう」
息を吐き出す。
そして一歩。
「行くか……!」
意を決して、リーベスは向かった。
覚悟を決めたリーベスに反して何事もなく、堅固な扉に護られた一室にたどり着く。
その扉を切り裂いて、中へ入る。
そこは殺風景だった基地内において唯一近代的な風景だった。
「――ようこそ。ボクの愛しい人」
聞きなれた声が、通信機器室に響く。
その声の主に、リーベスは無表情で応えた。
「やっぱりお前か――フラン!」




