最強のスキル、家事だけど異世界で大活躍!?
「えっ…? 異世界、ですか?」
佐藤光は目の前に広がる風景に驚きながらも、自分が何をすればいいのか分からなかった。ついさっきまで、家で洗濯物を畳んでいただけだ。それが、気づいたら見知らぬ場所に立っている。青い空、広がる緑の草原、そして目の前にはローブを着た老人――どうやら、この老人が自分を召喚したらしい。
「おぉ、勇者よ! おぬしを異世界へと召喚したのじゃ!」
老人は大げさに手を広げ、まるで劇の一幕のように語り始めた。
「勇者…? いや、待ってください。僕、ただのサラリーマンなんですけど…」
「いやいや、心配するな。おぬしの持つ“最強スキル”がこの世界を救うのじゃ!」
「最強スキル…? 僕、特に剣も魔法も使えませんが…」
光は困惑しながらも、自分に何か特別な力があるとは思えなかった。会社では地味に事務作業をこなし、家では家事を淡々とこなすだけの日々。とても世界を救えるようなスキルなんて持っているとは思えない。
「ふむ、ではおぬしのスキルを確認してみようかの」
老人は杖を振りかざし、光の周りに魔法陣のような光が現れた。すると、老人の目に何かが映し出される。
「ほほぅ! これは珍しい、いや、まさに最強のスキルではないか!」
「えっ? なんですか、僕のスキルって…」
「"家事スキル"じゃ!」
「か…家事スキル!?」
思わず、光はずっこけそうになった。家事が異世界で最強だなんて、そんな馬鹿な話があるだろうか。だが、老人は本気のようだった。
「この世界では家事のスキルが極めて珍しく、貴重なのじゃ。おぬしのような掃除、料理、洗濯に長けた者が少ないゆえ、国中が困っておる。家事スキルを極めれば、あらゆる問題を解決できるであろう!」
光はまだ信じられなかったが、どうやらこの世界では本当に家事が重要なスキルらしい。仕方なく、彼はそのスキルを試してみることにした。
※ ※ ※
まず、光が連れてこられたのは一つの小さな村だった。そこでは水不足や食料の問題、モンスターの襲撃に村人たちが悩まされていた。何から手をつければいいのか考えあぐねていると、一人の村人が頼んできた。
「すまない…井戸が枯れてしまって、水が足りないんだ。どうにかならないか?」
光は、しばし考え込んだ。
「水が足りないのなら、節約できる方法を考えましょう。まずは、洗濯の効率を上げるために、一度に大量の洗濯物をまとめて洗う方法を教えます。そして、野菜の洗浄水を再利用して掃除にも使うんです!」
村人たちは驚いたが、光の言う通りにすると、みるみるうちに水の使用量が減り、村の水不足はあっという間に解決した。
「すごい! こんな簡単なことで…!」
「それから、モンスターの襲撃が心配なら、村の周りに植物で作った簡単な柵を作りましょう。そうすれば、モンスターも近づけません。ついでに、その植物は村の畑で育てて食料にもできますよ!」
そのアイデアは村人たちをさらに驚かせた。光の家事スキルは、ただの日常的なものではなく、この世界では驚異的な力を発揮していたのだ。
※ ※ ※
数日後、村は劇的に変わっていた。水不足も解消され、食料も豊富になり、村人たちの生活は豊かになった。そして、モンスターの襲撃もほとんどなくなった。
「家事だけで、こんなに世界が変わるなんて…」
光は自分のスキルが本当に役に立ったことに驚きながらも、少し誇らしげに笑った。そして、彼はこの世界での新しい生活を続けることを決意する。
「よし、次はどんな家事をやってみようかな?」
※ ※ ※
おわり