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しゃぼんだま  作者: 瀬川悠人
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序章

拙い文ですが、感想あると嬉しいです

少しずつ続き上げていきます

季節は夏。生温い空気が肌に纏わり付き、ジリジリと肌を焼く様な日差しが照りつける。

 営業マンとして働き始めて5年、少しは慣れてきたと思っていたけど年々体力の衰えを感じる。いつまでも学生の頃の感覚が抜けず、調子にノって電車やタクシーを使わず歩いて走ってと、体を動かしては痛い目を見る日々だ。

 その日は特に暑く、早めにノルマを終わらせていつもの場所(おひさま公園などと勝手に呼んでいる)で缶コーヒー片手にタバコを吹かしていた。このご時世、喫煙者の肩身は狭く、本来喫煙所で吸わなくてはいけないのだが、民家から離れていて滅多に人の来ないこの公園は私にとっていわゆる、隠れ家のような場所となっていた。

 暑さで沸騰しそうな体にアイスコーヒーを流し込み、肺一杯にヤニを吸い込む。アイスコーヒーが流れ込む感覚と、煙を深く吸い込んだ時の体が浮くような感覚で頭がふわふわする。体に悪いと思っていてもやめられない。この瞬間が一日の中で唯一、自分が自分でいられる瞬間でもある。


 目を閉じてコーヒーとタバコの味を噛み締めながら目を瞑り、ふぅと、小さく空気を吐き出す。コーヒーとタバコの匂いが混ざった何とも不快な香りが鼻を刺激する。でもそれが不思議と癖になりつつある。

 「おじさん、公園でタバコはダメなんだよ」

 声をかけられ目を開くと、目の前に(小学生低学年くらい?)少年が立っていた。野球帽を浅く被り、小麦色に日焼けした肌に汗を滲ませ、精一杯の偉そうなポーズ(腕組み)をとり私の前に仁王立ちしている。おひさま公園に来客なんて私がここを隠れ家にしてからは初めてのことだ。

「ごめんね。誰もいないからと、つい気が抜けてしまった」

 最初からダメなことはわかっていたが、少々演技臭く、まるで今日はたまたま吸ってしまったというような態度で返答し。

「次からはダメなんだよ!」少年の、いかにも悪いことをしている大人を注意してやったぞ、という表情につい頬が緩み「気をつけるね」とほんの少しだけ、声を跳ねさせながらタバコをポケット灰皿にぐりぐりと押しつける。

 形だけの謝罪だったが、少年は満足したようで私が腰掛けているベンチ小走りで離れていく。子供というのは、ちょっとの距離でもぱたぱたという音が聞こえるように動くものだな。私はそれがまたおかしくなり、ふっと鼻を鳴らし頬を緩める。


 こんなことで笑うなど思っても見なかった。別段、子供が好きというわけでもなく、どちらかと言えば子供の泣き声や、遊んでる時の絶叫に似た雄叫びに対して不快感やイラつきを感じたこと覚えている。(いまどきこういう事を考えるの良くないとは思うが)私も大人になったっという事なのかな。なんてナルシストめいたことを考えるくらいにはまだまだ大人になりきれていないなと、頭の中で自嘲する。

 何をするわけでもなかったので(ノルマが終わったとはいえ仕事をサボっているのだが)視界の中で唯一動く少年をぼーっと眺めていた。不審者扱いされないだろうな、なんてことを心の隅に置きながら。

 少年は見た目通りアクティブだった。鉄棒だったりブランコからジャンプしたりと見ているこっちがハラハラするようなアクションばかりして他人の子供とはいえ、なんとも落ち着かない。子供は体が軽いから高い所から落ちても案外大丈夫、ということを噂話程度だが聞いたことがある。


 今の子供は外でもゲームだったり携帯(今はスマホって言えばいいのかな)で遊んでるイメージがあったがこの少年は違ったようだ。ブランコから飛び降り、着地を少し失敗したようで、おっとっとと転びそうになるのを堪えていたが、ぼてっという効果音が聞こえてくるみたいに転んでしまった。「いて」と軽く呟き(離れているのではっきり聞こえず、おそらくそう呟いているだろう)立ち上がって膝小僧や腕についた土を軽くほろう。うぐっと小さく伸び、遊ぶのに飽きたのか満足したのかわからないが、背負ってきたバックが置いてあるベンチ小走りで向かい(子供というのは本当に行動が突発的だ)ファスナーを開け何かを取り出した。ぱっと見何を取り出したにのかわからなかったが、容器の蓋を開け、ストローのようなものを差し込んだ時点でそれがシャボン玉だとわかった。

 今時の子供がシャボン玉?とも思ったが別に不思議なことではないだろう。いまだにそういうおもちゃが売られているということは需要があるということだ。

 少年が息を吸い込み、ストロー(吹く道具をなんと呼んだらいいかわからないが)を咥え、ふうーと息を吐きかける。するとどうだろう、ストローの先端から小さなシャボン玉の群れが一気に飛び出してきた。不規則な動きでまばらに散らばり、行き場を失うようにパッとはじけて消えてしまう。

 その美しくも儚い光景に懐かしさを覚えた。シャボン玉を見るまで久しく忘れていた学生時代、大学生の頃のことを。

 目を瞑り思い出すあの頃の、日々の記憶を_

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