↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/173

86話+ ストレイバレット

―Minol Side―


 何でもないある日。その放課後。


 いつもより何か、静かに感じる。


 それに疑問を感じながら、放送委員が放課後に活動する場所に向かう。


「失礼します。おはようございます」


 扉を開け、挨拶をしたところで、静けさから来る違和感の正体に気が付いた。


「……まー……っ。細染君は、どこかに行ってるんですかね?」


「細染君なら今日の委員会活動休むって連絡あったよ?」


「用件は何て?」


「いや……ただ休むって。そっちこそ細染君と仲が良いから、何か知ってるのかと思ったんだけど……」


「いえ……」


 まー君は終礼が終わってすぐ教室を出ていたけど、私は掃除当番だったので聞きそびれてしまっていた。


 そういえばまー君の帰り際の言葉、こういう状況ならいつもは「待ってる」とかだったけど、今日は「じゃ、お先に」みたいな感じだった気がする。


「そういやさ」


 委員の言葉を受けて考え事が頭の中に広がっていると、その委員から話を切り込まれた。


「妹ちゃんも今日休みだけど、何か聞いてる?」


「いや、聞いてないけど」


「そっか~……。3年生も休みがちになって来てるから、今日は一段と少なくなってるねぇ~。ま、3年生は既にOBOGみたいなモノだから、来ないのはしょうがないけど」


 まー君と妹が詳細を何も言わずに休んだということに狼狽して、目の前で話されている話題の内容が頭に入って来なかった。


「で、松前ちゃんは今日の予定、何かあったっけ?」


「大会用の脚本とアナウンス原稿のまとめをやろうかなって。アナウンス原稿作り用のインタビューと資料集めは終わったので」


「なるほどね」


 ことの真相を調べに出たかったけど、半ば放心状態の私は素直に先ほどまでの予定を口にしていた。しくじった。


「学校説明会用の原稿を今日決めようかと思ったけど……、細染君は去年の分があるから兎も角、妹ちゃんが居ないし……どうしようか? あとで2人で決める? それとも今、松前ちゃんだけ決める?」


 その上、新しい仕事まで入って来てしまった。


「……はい、今決めちゃおうかと」


 ヤケになって、その仕事も了承してしまった。


「前からの顔見知りと出番が近いと安心するので、まー君の予定の前か後、なるべく近くの出番でお願いします」


「了解~」


 この願いは、反撃を含めた感情があるのかもしれない。


 その後、今日の予定をこなそうとしてみると、どうにも脳裏にあの2人のことが過ぎって集中できなかった。


「委員長、ちょっと今日は集中できないっぽいので、委員会、早退してもいいですか?」


「いいけど、脚本は撮る計画もあるから冬休み前には仕上げられるようにしておいてね」


「分かりました」


 作業に取り掛かること数十分。集中できないままに、委員会活動の活動終了時刻よりも程度早く上がることとなった。


「はぁっ……はぁっ……」


 逸る想いが背中を押して、どうにも足早になってしまう。


 もしあの2人がどこかに一緒に出掛けるとしたら……。


 頭の中は、学校を出てからそればかり。


 私は2人にとっての何者でもない。まー君と付き合っている訳ではないし、彩梅が誰かと付き合うにしても、その相手がまー君なら問題ないと思える。


 けど、感情の部分で私が納得できていないでいる。そんな自分に嫌悪感を抱くも、それすらも無視して足を進めた。


「やっぱり、ただの思い過ごし……?」


 街を調べていく中で、そんな考えが頭に浮かぶ。


 2人が出掛ける場所として、おおよそ目途がつく場所は周ったし、その可能性は高い。


 少し遠くの場所もあるけど、明日も学校のある平日に行くような場所じゃない。


 その仮説に安易に心許してその説に意思をもたれ掛けさせようとしたときだった。


 ふと何か、勘のようなものに導かれて振り返った。


「……あっ」


 目の前に映る建物は、学生が来るには少し高めの値段設定がされているお店。


 そしてその中で最も見たくなかったものを映したガラスの窓があった。


 その窓は、先の2人が仲睦まじく、頼んだであろう食べ物を食べさせ合うという光景だった。


「は、はは……」


 横隔膜が引き攣ってか、口から漏れた空気が空虚な笑いとして鳴った。


 それ以降の記憶は無い。気が付いた時には自室で呆けていた。


「アレ……?」


 悲しみの自覚はほぼ無く、しかしただ、頬には熱い水滴が零れ、線を描いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。