69話+ 「気にしなくていい」
最後ちょっとR要素ありです。本編としては読まなくても一応話としては繋がるのでR要素が苦手な方は飛ばしても大丈夫かと存じます。
「なぁんだかなぁ……」
帰って来た自室で倒れ込み、枕に顔を埋める。
帰りの列車の席での会話。その中でふと、実の口から出た「私も気にしないから」という言葉。
「なんでだろうなぁ……」
なんとなく、心にトゲみたいなものが刺さっているような感覚がする。
「うーん……」
唸ってみるも頭の靄は晴れず、形にならない考えが更に渦巻いた。
「……」
実の顔を思い浮かべてみる。考えはまとまらない。
「……」
次に、「私も気にしないから」と言われたときのことを思い出してみる。
「ふむ……」
すると、ある考え……仮説のようなモノが頭に思い浮かんだ。
まず初めに、実は顔が良い。紛うことのない美少女だ。
ついでにスタイルも良い。胸は大きいしそれなりにくびれているように見えるし、少なくともプロポーションが悪いという人はいないだろう。
そんな美少女に自分のモノについて「気にしないから」と言われれば傷つく。美少女でない女子にそんなことを言われても傷つくのに、親しくしている特段の美少女に言われてしまったものだから、心にトゲが刺さったように感じてしまっていたんだろうな。
気にしない、気にしない。実も悪意があったり深い意味が合ったりして言ったわけじゃないだろうから、深く考えなくて良いはずだ。
男に戻りたい実にとって、変に異性の意識を向けてしまったら気まずい上に面倒だと思わせてしまうだろう。逆にそのことについて気を付けないとな。
美少女と仲良くして異性としての勘違いをしてしまいそうだし、改めて気を引き締めないと。
―Minol Side―
「はぁ……」
頭の中を駆け巡る、「俺は気にしないから」の言葉。
分かっている。分かっていた。
まー君に相談した時、自分のことを異性として扱わないことだったり、自分が男……というかまー君のことを異性として見てしまって不安に感じていることを話したりしたのが今回、そう言われてしまった原因だと思ってる。
ちゃんとそのことを分かってるし、その話を今となって否定してこなかった自分が悪いということも理解している。
だけど今、この立ちくらみが止まらないのは。
まー君は決して私のことを避けてる訳じゃなかった。それで良かったと思いたい。思いたいのに、感情がそれだけでは止まらない。
「ふぅ……」
目の前が流れるようにぼやけていく。
避けられてはいないけど、それは友人として、ということだと思う。
異性としては妹の方が良いと思っているのかも知れない。一緒に出掛けたりしていたし。
この感情を妹にぶつけるのもお門違いということも勿論理解している。
そしてそんな感情を妹にぶつけている自分が嫌になる。
あぁ……そんなに絶望するような状況じゃないだろうに、悩みが重なり頭の中がゴチャゴチャと渦を巻いて混乱する。
「私が最初から女だったら……問題なんて無かったのかな」
言っても仕方のないことを口にして、更に気が滅入ってしまう。
「いっそのこと、まー君の方から強引に……」
ネガティブな感情の殆どを転化するように、下半身がざわめき始め、その自らが煽ってしまった欲に溺れていくのだった。




