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58話 帰路

 帰りの座席も何故かこの座席位置。俺を真ん中に左右を姉妹に挟まれている。


 行きの時より自由なのは、両手が空いていることだ。大会で疲れたのか、それともまた別の理由か、兎にも角にも自分で飲み物を飲むことができるというのは素晴らしい。……のだが。


「……」


「……」


 窓の外をずっと見ている実と、ずっと目を伏せて座っている彩梅ちゃん。そして2人とも無言。


 正直言って気まずい……。


 長時間座った状態でいるんだから多少は駄弁ったりするのかと思ったけどそういうわけでもなかった。かといって別の人と席を替わろうかと提案したら2人から却下された。謎過ぎる。


「はぁ……」


 溜め息も思わず出てしまう。取り敢えずお茶でも飲もう。


「ンクッ、ンクッ、ンクッ……ん?」


「……」


 お茶を飲んでいる様子を彩梅ちゃんにじっと見られている。そしてこちらから視線を送ると少し動揺した風に瞼が上がったかと思うとフイと目を逸らし、再び正面を向いて目を伏せてしまった。本当になんなんだ……?


 今度は逆方向を見てみると、そちらは相も変わらず。全くこちらに関心があるようにはとても思えない。なのになんで俺が別の席に移ろうとすればそれを嫌がるんだろうか……?


 彩梅ちゃんの方は腕を掴みたくなくなっただけで説明できる気がするけど、実の方はよく分からない。考え方も女性特有の何かになってしまっているんだろうか……? うーん、分からん。


―Minol Side―


 何故か流れと言うかなんというか、気が付いたらいつの間にかまー君の隣に座っていた。


 昨日の決勝の席は彩梅が間に入っていたからそれなりに問題は無かった(太ももをつねっているときは多少気にしていた)けど、今はそれとは比べ物にならないほど情緒が揺さぶられてしまう。


 ヤバい。まー君の顔を見ることが出来ない。


 少し勇気を出してまー君の方を見てみると、彩梅がジリジリと顔を近づけていた。


 その光景が一瞬とはいえ目に入ってしまうと、胸の内のザワつきが感じられる。行きの車内で似た光景が目に入った時の胃の痛みは体調不良を理由としていなかったことを今、分かってしまった。


 そういう……ことかぁ……、マジかぁ……。


 確かに今までまー君のことは「強く意識してしまう」程度だと思っていた。でもそれは「自分が元から女だったら惚れていたかも知れない」で留まるものだと。でも……そっか……。


 自己意識の中の一線を越えた。という自分自身に対する意識。


 理性と本能の間で揺れる自己意識。


 ……取り敢えずまー君との友人としての距離感は維持したいというのはあるため遊びとかに誘われたら断らないようにはしたいけど、これ以上距離が縮まってしまって最後の心の枷が外れないように、こちらから不用意に近づかないようにした方が良いのかも知れない。


 とはいえそれで自分を抑えることができるかは怪しいけど……はぁ。

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