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53話 明示、自覚、開放

R-15要素ありなので苦手な人は注意です。

―Minol Side―


 遠出3日目、大会日程としては2日目。の、朝。


「……」


 昨日に引き続き、奇妙な夢を見た。まー君が現れたことまでは憶えているけど、その他のエピソード的なモノはあんまり憶えてない。憶えていることと言えば、夢の中でまー君の顔を見たらやはり夢の中で自分の鼓動を感じたことだった。


 だけど、それはまだいい。


 問題なのは、エアコンが突然停止したわけではなかったということ。


 起きたときに身体が熱かったの、気のせいだと思いたいけど……。


 ……それにしても、多少身体の調子がマシになって良かった。週明け始めからの体調不良は帰る頃には全快になっているかも知れない。


 ただ、1つ懸念がある。多少身体の感覚が鋭敏になっているということ。変な夢を見たからなのか、体調不良の所為なのかは分からないけど、服の擦れる感じをいつもより感じているかも。


 それになんだか……。


「あ」


「どうした実?」


「なっ、なんでも、ない、よ……?」


「忘れ物か? それなら取りに戻って――」


「大丈夫だから! 気にしないで!」


「そ、そう? それならいいけど……」


 今、まー君に気づかれるのはマズい気がする……。


 忘れものと言えば……下着だ……、上の。


 ノーパンであることは流石に回避していたが、ノーブラになってしまっている。……何で気がつかないの私ィッ! やっぱり頭はまだ大丈夫じゃないんじゃない!?


 落ち着け……落ち着け私……。


 さっき取りに戻らなくても良いって言っちゃったなぁ……今、改めて戻るとか言うと怪しまれそうだし、それに食堂も開いてる時間と空いてる席には限界があるから、朝ごはんが食べられるかどうかも不安になってくる。体調も万全じゃないし、会場も暑かったり人が多くて移動も楽じゃないから朝飯抜きは正直辛い。


 素肌に制服だから、汗とかで胸が透けてしまうという懸念もある。どうするか……体調不良になるか、周りから視線を集める可能性を高めてしまうか……。


「どうした実? 他に何か気になることある?」


「いや……無い」


 無いって言っちゃったよ。……うん、そこまで気にすることなんて無いかもしれない。まー君も今、胸に視線が行ってなかったし。多分大丈夫かも。そんなことよりまー君の顔を見て私の顔の温度が上がることの方が大丈夫じゃない。


「てか実、大丈夫か? 顔、赤いぞ? 熱中症か?」


「それも……大丈夫……」


 赤いのは体調の所為じゃないはず……あと理由の半分はまー君自身。責任を取れとは言わないけど、出来たら自重してほしい。多分無理だろうけど。ついでに言うと急に振り返らないで欲しい。匂いに判断力と平衡感覚を奪われてしまいそう。


 兎にも角にも、もう何も気にせず朝ご飯食べたら何とかなる気がする。そう、そのはず。


 そう自己暗示を掛けて、食堂にやや早足で向かうことにした。


「ごちそうさまでした」


 特に問題はなく、朝食を食べ終えた。体調も今のところ大丈夫。悪化はしてない。服の擦れとかはまだ気になるけど……。


「それじゃ、会場の席に座れるように早めに出ましょうか」


 委員長の声で各々行く部門ごとに分かれて集合しだした。


「俺たちは……4階の音声ドラマに行く訳だけど……一応飲み物買ってから行こうか。熱中症になったら大変だし」


「それが良いですね、センパイ!」


「そうだね……」


 音声ドラマ部門は“いつもの3人”で行くことになった。


 熱中症に関して言えば私の所為だろう、朝食前の。夢を思い出して照れてしまっただけだけど、流石にそれは言えない。それに熱中症対策はした方が良いし、態々墓穴を掘るようなことはしなくていい、と思う。


「ここの自販機、結構人いるな……1階に降りるか……」


 食堂の出口近くの自販機には人がたむろしていて、暫くは買えそうにない。ここで買って階段で4階に行くつもりだったけど、1階から階段で4階は少し大変かな。


「これで大丈夫かな? ……エレベーターで上に行こっか」


 それぞれ飲み物を2本ずつ買い、エレベーターホールへと向かう。


「人多いな……」


「こっちの最上階まで上がれるの、ここのエレベーターホールの2台しかないからね」


「割と狭い……う~ん、2人と少し離れちゃった……」


 人波に押されて彩梅と離れてしまった。規定人数の半数以上はこのエレベーターに入っていると思う。彩梅の言うの通り、狭い。


「大丈夫か?」


「まあ、あの子も割と図太いから大丈夫でしょ」


「それもだけど、実も大丈夫か? その……俺と近いし」


 確かに近い。所謂少女漫画などで言うところの壁ドンが出来てしまいそうな近さ。自分自身、奥の壁に背を付けている状態だから、まー君がやろうと思えばできると思う。


「大丈夫……、暑いっちゃ暑いけど、すぐだし」


 エレベーターに乗ってる時間なんてすぐ……とは思ってるけど、正直もっと近づいたら大丈夫じゃないかも知れない。暑さ云々じゃなく、まー君の匂いで酔って倒れたりしないか少しの心配は、多少……ある。ま、ないとは思うけど。すぐに出れば問題ないだろうし。


「2階からも結構人いるな……」


 更に人が入って来て、まー君との距離がより近くなる。彼なりの配慮なのか、壁ドンのようにはならないようにしてくれている。


 そして、3階に到達――。


 ドアが開くと、2階の時のように、人がガヤついてる声が外から聞こえてきた。


 人が入って来た。


「おっと」


 後ろからの人に押されてしまったのか、まー君が私に急接近してしまった。彼も流石に体勢がキツかったのか壁ドンのように手を壁につき、彼の顔が私の耳元数センチ、数ミリの所まで密着する形となった。


「――ッ」


 その幾マイクロ秒後。“コト”は起こった。


「ごっゴメ」


 彼が何か言っているが、意味を理解することは出来なかった。


 エレベーターなので小声で話しているみたいだけど、囁くような小ささではない程度に声量ある声で鼓膜を振動させてくる。


 匂い、むさっ苦しくて息を止めようと理性が働こうとしたが、本能がその機能をシャットアウトし、鼻腔の中にそれを充満させた。


 胸、彼の体重と体温が感じられる。朝から敏感だった感覚が音と匂いの効果か更に他の感覚まで鋭敏にさせて、今まで線の隙間からほんの少し漏れ出ていたという感覚とは全く違う、その線は全開状態となり、漏洩した。そのときの痛みが、ほんの少しの快楽を与えて、より他の感覚を鋭敏にさせた。


 そして最後に……あの夢の再現か、思うのはそれだけだった。


 ただ、何も声を出せず、頭の中は遠く白く、静かに意識を手放した。

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