52話 その前日
―Minol Side―
今日は大会の為の遠征?合宿?の2日目。今日も体調は悪いとは言わないまでもあまり優れないというくらい。
朝の倦怠感は朝方にエアコンが自動停止し、熱で部屋が蒸されてしまったためらしい。部屋は相部屋であったけど、1番最初に起きたのが私だったのは、ただ単にそれ以外の要因で体調が悪かったせいか、夢見が悪かったせいなのか。
「おはよう、実に彩梅ちゃん」
「おはようございます、センパイ!」
「……おはよ」
今朝の夢の所為で、まー君と目を合わせられない。
「実、大丈夫か?」
「……何が?」
「話す反応がちょっと遅い気がするし、あと食べてる量が少ないし……」
「ちょっと、食欲が無くて……」
大会施設の中にある食堂はビュッフェスタイルで、私の取った量はいつも食べてる量よりも確かに少なかった。
誤魔化して、「朝はいつもこんな量だよ」なんて言えれば良かったと後になってから思うけど、そこまで頭が回らなかった。
「そっか。昨日のが、続いてる感じ?」
「……そんなとこ」
「あと顔も赤いし……熱中症? 大会は部屋だし、泊まりの部屋の冷房も効いてるはずだけど、外に出ることもあるし、廊下は冷房効いてないから気をつけろよ」
「あ、……あり、がと」
確かに冷房が止まってて暑くて起きたけど、今、顔が赤いのはその所為じゃない。こっち見んな。
「午前の皆の予定は?」
「私は音声のドキュメンタリー作品の方に行こうかと」
「うーん……映像のドキュメンタリーかな?」
「そっか。俺は発表の方行くから、音声ドラマに行くからここ3人は別々か」
「そうですね。センパイの作品、準決勝に進んでると良いですね!」
「ありがとう、彩梅ちゃん」
「えっと……」
今更、「頑張って」と言うのも違うなぁ……。かといって準決勝に……は彩梅が言っちゃったし……。
「どした?」
「……いい結果、期待してる」
「おう、任せろ実!」
ホント、いい笑顔するよな、まー君。
その輝いた笑顔を、目線を逸らしながらも記憶に残して映像ドキュメンタリー作品を流している会場へと向かった。
「うぅ……暑い……」
会場は思ったよりも暑かった。冷房こそついているものの効きが悪いのか、サウナとは言わずとも汗などがじわじわと滲み出て来る。
一応、飲み物とか持ってきておいて良かった。
服の中も……、あ。
ほんの少しだけ出ちゃっている気がする。胸から。
高プロラクチン血症、今年に入ってから分かった病名だけど、症状自体は去年の秋くらいからあったと思う。
どのような症状かというと、一般的には排卵抑制や月経不順、乳汁分泌などが挙げられる。
TS病患者の中でも少なくない数の人が罹っている、あるいは罹っていたことがある症状らしい。ただ、TS病自体がどういう病気なのかがあまり分かっていないため因果関係が分からず、合併症とはあまり呼ばれずに、併発する可能性の高い病気という位置づけとのこと。また、TS病じゃない人との症状の差が存在するらしく、全く同一の病気かどうかも怪しいなんて話もあるらしい。あくまで噂……らしいけど。
高プロラクチン血症の症状の中で最も特徴的なモノと言えば、やっぱり乳汁分泌だと思う。外から見ても分かりやすいものだし。
今、自分の胸を見ても服の色が変わってないからそこまで漏れては無いみたいだけど、次の休憩時間では気にした方が良いかも。
ほんの少し滲み出るくらいで、そこまで出ないけど、人によってはかなり出るらしい、経産婦の人とかは特に。また、ずっと出ていると量も出やすくなるらしいから注意しないといけない。
……っと、今別に考えなくてもいいことで長いこと考えてしまった。今は作品に集中しないと。
「暑い……お茶飲も」
そして数時間後、昼食の時間。
「落ちてた……」
残念ながら準決勝進出とはならなかったみたいだった。
因みに準々決勝に進んでいた他の作品も軒並み落ちていたらしかった。




