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49話 夏休みどうする?

 1学期の期末テストの終わり。なんなら3学年の学校生活の2年のこの時期が1番ワクワクするまである。


「さて、今年の夏休みどうする?」


 高校の夏休みの宿題は中学までのモノと比べると格段に少ない、気がする。


 1年生のときは戦々恐々としていたためか自由に……というか、宿題の量から想定して、予定をちゃんと立てて遊ぶということがあまりできなかった印象がある。


 しかし今年は違う。


 宿題の量は大体どのくらいかと推量することが可能だし、ちゃんとした予定を立てることも出来る。


 それとはまた別に、結局のところ、実の身体は1年では元に戻らなかったため、それについてどういう風に認識していけばいいのかという問題もある。


「どうしよっか。あ、最初の1週間で宿題を済ましてその後遊び尽くすってのは、どう?」


「最初の1週間は大会があるでしょ」


「あ」


「素で忘れてたな、実」


「ゴ、ゴメン……」


「ま、いいけど。大会でも発表時間後くらいなら宿題する時間くらいはあるだろうからね。机とかもあるから出来なくはないし」


「それってどれくらいの時間が取れるの……?」


「う~ん……、1時間から2時間くらい? 余裕ある日は3時間くらいできるかも」


「大会の日程ってどれくらいだっけ?」


「月曜日から金曜日だけど、金曜は帰りの半日が移動だからその日はあんまり宿題の時間は取れそうじゃないし、決勝の前日は別に予定があるからな……5日中3日……予定ある日も頑張って4日くらいかな?」


「楽観視しても取れる時間は8時間前後……まあ、無理だね」


「その時間を考えるなら無理……だけど」


「だけど……?」


「今の内に大会に行くための準備を出来るだけ早く終わらせて、その後に宿題をやるだけやって、残りを大会中に済ませればいいんじゃない? そうしたら持って行く教科書とか減らすことができるはずだし」


「それもそうだね……。うん、それが良いと思う」


 そんなこんなで、夏休みの最初の計画が決まったのだった。


 そして夏休みに入り、この週末、日曜日。


「大会の準備をしっかりすると本当に準備がギリギリまで詰めちゃうね」


「そうだな。俺も2年目だけど思ったより準備に時間掛かっちゃったな」


 遠出として必要な準備以外に去年、先輩方からのアドバイスであった方が良いものを思い出したりして再び買い出しに出たりしているとあまり宿題をこなす時間が取れなかった。


「じゃ、今日、出来る分を出来るだけ全力でこなしますか」


「うん!」


 定期テスト前みたいな、ある種の勉強会のようなもの、それも途中でグダグダになって遊びだす感じのものじゃなく、真面目に勉強するモードに入ってしまったため、会話がとんと少なくなった。


「そう言えば実ってさー?」


「んー?」


 しかしある程度無言であるのも辛いモノ。ここで気になっていたあることを口に出してみた。


「宿題する場所を決めるときに何で俺の家ってのを譲らなかったんだ?」


「んー……、え……、え?」


 同じ委員の彩梅ちゃんもいることだし、もしそちらの準備が終わったら一緒に宿題をしたらいいんじゃないかとか思ってみたものの、それを言う前に実の圧のようなものでこっちですることに決まった。


 別にどうでも良いっちゃ良いけど、気にはなったので聞いてみた。


「いや……それは……なんとなく?」


「理由とかない感じ?」


「うん……まぁ……そう……」


 ずっと課題に向き合っていたが実の表情が気になって顔をチラ見すると、実はどこぞに向けてそっぽを向いていた。


「ふーん……」


 何やら思惑の1つでもありそうだが、かといってそこまで不利益を被りそうでもないのでそっとしておいた。


 ガチャ。


「ん?」


 親でも帰ってきたかな? この時間帯だと一時的に忘れ物でも取りに帰って来たのかな?


 そんなことを考えて再び課題へ向かうと、すぐにドタドタと階段を駆け上がるような音が響いて来た。


 何だ何だ……?


 一応身構えながらドアの方を見た。


「失礼します!」


 するとバアァーッン、と音を立ててその人物が姿を現した。


「あ、彩梅ちゃん!? なんで?」


「なんでって酷いですねーセンパイ。夏休みの宿題を片そうとしているのが分かれば同じ委員のお隣さんとして来るのは当然じゃないですか!」


 そう言いながら彩梅ちゃんは俺の隣に座り、机の上に課題を広げて陣取った。


「……」


 実がこちらに向けて何とも言えない、やや不満気な感じが読み取れる目を向けて来た。


 分かる。俺も実のポジションだったら似たような目線を送っていたような気がする。


 でも流石に後輩の女の子にここまでされて、やんわりとでも遠慮できるようなメンタルは残念ながら持ち合わせてはいなかった。


 どうにも居心地の悪い雰囲気を感じながら、夏休みの宿題をこなすのであった。

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