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48話+ 訓告すべき権なし

―Minol Side―


「Zzz……」


「寝ちゃった……」


 どうしよう……。


 いや、起こすなり、起きなかったらそのまま動かして寝床に移して寝かせれば良いだけだとは思うけど……こう、なんだろう……。


「Zzz……」


「気持ち良さそうだな……」


 そう思って、鼻を摘まんでみる。


「Zzz……グピッ! ……Zzz」


「起きない……」


 ガチャ。


 下の階でドアの音がした。


「親御さんが帰って来たのかな?」


 更にどうしよう。これ見られたらあらぬ誤解を生みそうな……。


 ……、……。


 いや、いやいや。「俺」は、「俺」はきっと男に戻るはず。だから変な誤解を生むような状況を見られてはいけないはずだ。


 どうにもこうにも手段はあるはず。家に帰って来たならまずこの部屋に来るはず。急いでちゃんと寝かせないと。


「よいしょ、と」


 肩や腰を掴んでみても全く起きやしない。階段の方から登って来るような音がする。とっとと運んで、お暇しよう。


「もう1回でなんとか……」


 ガチャ。


 背後、ドアの音。


「えっ……」


 背後から聞こえるそれは、どこか聞き覚えのある声。


 見え方によってはかなりヤバめな状態になっているかも……。


「お、お邪魔してま……」


 弁明しようと振り返ると、先ほどの声の主と目が合った。


 その姿は親御さんのもの……ではなかった。


 聞き覚えのある声で察するべきだったのかも知れない。


「何……、してるの――」


 そして今、聞こえた声は、今まで聞いたどの声より底冷えするようなものだった。


「――、姉さん……」


 声の主は、松前 彩梅。私の妹だった。


 私の今の状態は寝ているまー君を正面から抱き着くような形、それもベッドインするようにも見える体勢だった。


「えっと、これは――」


「いいから。……はぁ。話は家に帰ってから聞くから、用事が済んだら早く帰って来て。余計なコトはしないでね?」


「本当に誤解で――」


「今、姉さんの話は聞いてないから。じゃ、早く済ませてね」


「……はい」


 こちらの事情がどうとか、そもそも彩梅はインターホン押さずに入ってきたよねとか、病人いるって分かっているのに割と足音とか静かにするよう気を付けてないだとか、言いたいことは色々あったにも関わらず、それらを全く言わせない威圧感で黙させられた。


 体勢があまりにもなものであったこと、彼女から見ればこちらが「抜け駆けした」ように見えたであろうこと、そしてそれらから来る彼女の怒り。


 是の声を出し、従う他なかった。


 この後、まー君を運び終え、速やかに家に戻り、弁明を図った。


「ふーん……」


 どうやら最後まで信用は得られないようだったが、怒りは収めてもらうことができたようだった。


「まぁ、そういうことは最後までそれぞれの自由だとは思うから、別にいいけど……そっちがその気なら、私も本気、出すから」


「別にその気とかは……」


「他にまだ、何か言い訳でもあるの?」


「ない……です……」


「よろしい」


 タイミング、それが全てを決して今の自分の責任問題みたいなものが降りかかっているような気がした。


 彩梅にも「ん?」と思うところがあったけれども、それは全てまるで無かったことのようにされたのは、この形勢を成した流れとタイミングが悪かったのだろうか。

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