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43話 体育祭から大会へ

『午後最初のプログラムは、応援団による応援です。チームAの応援団は応援の準備を、チームBの応援団は待機場所に集合しておいてください。それでは始めます』


 スピーカーからは彩梅ちゃんの声が聞こえてくる。


 それを脇目に朝礼台では三脚を最大限まで高さを稼ぎ、応援団を撮影している実の姿があった。


 俺は朝礼台の下で実の後ろから、その様子を見守っている。


「……」


「……」


 俺が声をかけることは無い。勿論それは、マイクに応援団に必要な音以外の声が入ってしまうのを避けるためだ。


 では何故俺がアドバイスもしないのにこんなところに突っ立っているのかというと、それはコード類が絡まないように見るためだ。


 カメラから伸びる電源ケーブルに音を取るためにカメラと同期させているガンマイクに繋がっているXLRケーブル、朝礼台の下でも置いている壇上用のマイクのケーブルに放送席とスピーカーを繋いでいるケーブルなんかもごちゃごちゃになりかねない。


 カメラで撮っていると周りのケーブルにまで意識が向かないため、それで三脚やマイクスタンドに引っかかったりが倒れたりさせないように見守り、危なくなったらそれをどうにかするのが俺の今の役割だ。


 っと、ここのあたりが危ないかな?


 ケーブルを正して遊びをのこしつつも絡まらないように引き延ばす。これでいいかな。


「……」


 実は応援団の撮影に集中している。


 そのためこちらの視線にも、実の頬を伝う汗にも気が付いていないようだった。


『……チームAの応援団の皆さん、ありがとうございました。次はチームBの応援団の応援です。チームBの応援団は応援の準備を、チームCの応援団は待機場所に集合しておいてください』


 その言葉の後、カメラとアナウンス席の前からダブル松前は退いていった。


 後の応援団の応援も無事に終わり、その後もにわか雨に降られながらも大幅に天気を崩すことも無く、閉会式が執り行われた。


 体育祭が終わり、放課後。


「ケーブルはこれで全部? 拭き残しとかない?」


「大丈夫です」


「マイクスタンドは……」


「松前の姉の方が持って行ってました」


「なら大丈夫か」


「という訳で、『アレ』、出そっか」


「了解!」


 体育祭の後片付けも一段落し、体育祭の裏で教師陣も黙認している無断使用している理科室の冷蔵庫から色々なものを出してくる委員たち。


「じゃ、お疲れさまでした! カンパーイ!」


 打ち上げのために買っていた飲み物を注ぎ、乾杯を交わした。


「ほ、細染……」


「ん? 実か、どうした? 久々に名字でなんかで呼んで」


「あ、あの……大会の……やつ」


「ん?」


「いやえっと……その……」


 他の女子委員たちが体育祭の余韻の話に花を咲かせているためか、実の声が聞こえにくく、聞き返すと萎縮されてしまったようだった。


「あぁゴメンゴメン、聞き取れなかっただけ。何?」


「あの……大会のこと、なんだけど……」


「ああ、前に言ってた?」


「……うん」


 実の方に耳を傾けると、実は手を添えて小声で話し掛けてきた。……別に小声じゃなくても良いと思うけど。


「細染って、どの部門のやつ見るの?」


「俺? 俺は……午前が俺の作品があるから、音声ドラマの方に行って……午後はそうだな……アナウンスかプレゼンテーションかなぁ? 映像ドキュメンタリーとかでも良いかもしんないとか考えてるけど」


「じゃ、じゃあ、そこにしようかな……?」


「うーん……出来るだけ同学年には別の部門を見といて欲しいんだけど……」


「そ、そう?」


「別に『絶対ダメ!』とは言わないけど、出来たら午後か午前のどっちかは別のがいいかなぁ……?」


「あ、うん……分かった。じゃあ、午前の部は別のところ行って、午後の部で合流するって形で、良い?」


「いいんじゃない? 顧問と委員長に伝えとく」


「うん……」


 こうして、次の週末の予定が決したのだった。


 ……それは良いとして、なんで俺、彩梅ちゃんから睨まれてんの?

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