41話 委員会
この作品にしては長め。
放送委員会。
この言葉を聞いた時に、何を思うだろうか。
放送委員や放送部をしている、またはしていた人ならなんとなーく分かる人もいるだろうが、1度もしたことない人は良く分からないと言われる。
人によっては公に行っている「お昼の放送」や「体育祭などのイベントの実況・アナウンス」も知られていないことすらある。
で、実際何をしているのかというと。
俺の所属している放送委員は上の内容以外に映像制作や朗読、アナウンスなどの分野で大会に出場したりしていたり、中学生向けの学校紹介の会場での音響環境敷設と紹介映像の解説、その他、外部で行われるイベントの司会や卒業用の映像撮影などが主な活動だ。
学校によっては放送部が行っていることもある。
俺の学校では放送委員となっているが、ほとんど部のようなものと変わらない。
学級委員のような、1クラスに1人以上必ずいるような委員会ではない。その為、この委員会には3学年合わせて10人くらいしかいない。
そして、春の連休後、体育祭前という絶妙な時期のある日の放課後に新たな仲間を迎えることとなっていた。
「ということで、俺と同じクラスの……」
「松前 実です。これからよろしくお願いいたします」
パチパチパチ……。
拍手が疎なのはこの微妙な時期に委員が増えることへのある種の不信感からなのか、元からいた委員の姉(兄)が入って来て気まずいのか、何なのか。
「私は3年で放送委員長をしている、久保 美由紀だ。慣れないことはあるだろうが、あまり緊張することはない。気楽に行こう」
「お気遣い、ありがとうございます」
「ハハッ、そんな身構えなくて良いって。じゃあ一応の指導係は……うん、細染君で」
「ちょっと待ってください!」
そこで待ったの声を掛けたのは、彩梅ちゃんだった。
「どうした松前妹」
「これはなんか……良くないと思います!」
「何がどう良くないと思う?」
「細染先輩と姉はそもそも最初から顔見知りで……ちゃんとした指導にならないと思います!」
「ふむ……一理はあるが却下だ」
「どうしてですかっ!?」
「確かに指導がしにくい可能性もあるが、細染君自身指導に慣れていないこともあるから同学年に対して行わせることで指導に慣れさせることも目的に含めているからね。それに、細染君も他の子を指導しているし、私たちも指導に注意しているから問題はない。彼が指導する子が1年であれ2年であれ、問題があれば私たちが再指導するからね」
「そ、そんな……」
「他に意見はある?」
「……無いです」
「それじゃあ、これで良いね? という訳で、体育祭に向けて、アナウンスの再編と昼放送の役割の見直しをしていこうか。体育祭後の予定については細染君、松前姉に対しての説明を頼むよ」
「頼まれました」
「……」
……なんでこんなに彩梅ちゃんにジト目で見られているんだろう。
やっぱりちょっと苦手ではある……気がする。俺と1対1で話すときは若干キャラが違うような感じもするし……俺が思うよりも良く思われてない……というか、嫌われてる? 気さえしてくるなぁ。
委員長がなんとか諫めてくれたからこそこの程度で済んだものの、委員長がいなかったらどうなっていたことやら。
兎にも角にも実込みの体育祭のアナウンスの予定を組み込み、お昼の放送の役割を組み直していき、最後に体育祭後の予定を話すこととなった。
「で、体育祭の後は実際何をするの?」
「体育祭後すぐに放送の全国大会の地区決勝があるから、そこにいくことになるね」
「……気にはなってたけど、放送の全国大会って何するの?」
「個人の部ではアナウンスと朗読だけど……、それ以外だと映像作品や音声作品を作ったりしてるね、ドラマとかドキュメンタリーとか。他には……プレゼンテーションの発表とかもある」
「映像のドラマはなんとなく想像できるけど……そのほかはあまりイメージ湧かないなぁ……?」
「会場で他の学校の作品とかも見ることができるから、興味があればそっちに割りふって貰って行けるかもしれないけど……、こっちから委員長と担当の先生に推薦しておこうか?」
「それはありがたいけど、どれとどれの時間が被ってるかとかが分からないから……」
「1つだけなら選んでも良いんじゃない? その代わり同じ時間のヤツは見ることができなくなるけど……」
「何かオススメのジャンルとかある?」
「無難なのは映像ドラマだけどそれだと想像しやすいって話だからなぁ……映像ドキュメンタリーかプレゼンテーションかな?」
「なんでその2つ?」
「音声作品は場合によっては寝るからかな……良い作品も勿論あるけど、映像が無い分、疲れちゃうと……ね? だから目で見える作品がオススメかな。朗読もアナウンスも確か見ることはできたと思うけど、正直それは全国大会見た方が良い……と個人的には思うから」
「なるほど……うん、体育祭が終わるまでに考え決めてればいい?」
「できれば体育祭前くらいがいいかな……まあ、本当に終わってすぐ、次の日くらいまでなら割と色々出来るはずだから、それくらいなら良いと思う。俺もスケジュールとかなんとかするし」
「分かった。……ありがと」
「これくらい普通だって。じゃ、できれば早めによろしく」
ふと、思ったことだけど、なんで実はなんで放送委員になったんだろう?
俺はなんとなく流れみたいな感じ……本当に決心という決心なんてなく入ったから、そこまで意味という意味も無いのかも知れない。いつしかの雑談の種にでもしとこうかな、この話題。




