37話+ 悶え
―Minol Side―
ガチャ
「……はぁ」
自室に戻り、1つ溜め息。
「なんであんなこと、言ったんだよ」
その言葉は、アイツに言ったのか、それとも自分に言ったのか。
自分で口に出しておいて、それは分からなかった。
ボフッ
掛布団の柔らかさが自らの身体を包み込んだ。
手を握りしめたりして、「あの」感覚を思い出す。
写真を撮った時と、帰って来る時、腕を絡めていた時の感覚。
自らの身体が女のものに変わって1年、この身体にも慣れてしまっていたらしく、男の肌の感覚といものを忘れていたらしい。
少なくとも、多少手を握ったくらいはあっても、それ以外の場所を触れる機会なんてまずないからだ。
お風呂やら何やら意外と自分自身の身体を触れていたんだな、とも気づかされた。
その他にも、身体や腕が増良の腕などの感触を思い起こさせる。
「なんでこんなに……」
増良の男らしさというものが皮膚や鼻腔の感覚記憶にこびり付いて離れない。
その分自分も感覚や思考、その他諸々女性のモノに変わってしまったんだなとも思えてしまう。
枕を抱きしめてみても、眠気よりも去年の秋に風邪をひいて増良に看病されたことを思い出してしまった。
「はぁ~……」
布団の上で溜め息を吐いても、悩みが解決することはない。
……自分は、どうしたいんだろう。
性格も人格も、男のときのままなんだろうか。
それとも、自分がもし女に生まれていたのなら、今と同じようになっていたんだろうか。
はぁ……。
「……むぅ~~~~~~~!!!!」
布団の上で意味の無い声を唸らせながら、足をばたつかせた。
「姉貴、五月蠅い。あともうすぐで晩御飯できるから」
「……ゴメン」
彩梅に謝った後は、晩御飯もお風呂も殆ど記憶が無いまま眠りについたのであった。




