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34話 新年度

 高校2年生になった。


 クラスはと言えば、俺たちの知る面子は殆ど変わらなかった。


 俺に実に船木、河豚名など友人ら他の面々、そして担任の浜竹先生。


 本当に変わらない顔だった。


「今年はどんな年になるんかね~」


「ま、元に戻ることを祈るだけだよ」


「実はそうだな」


 俺自身は去年とほぼ変わらないような毎日になった方が良いくらいにはそれなりに暮らしていて問題の無い1年だったけど、実にとっては変わって欲しい……というか、身体が戻って欲しいという前提があるから、簡単に去年と変わらず……とは言えないか。


「実力テストはどうだった?」


「まあまあだった。平均点より少し上くらい。まー君は?」


「俺もそのくらいだったな。いい点は良いけど平均点割ってるやつもあるから全体通しての点数は平均点を少し超すくらい」


「そっちもそれくらいなんだ」


「その身体に変わってから得意な教科が変わったとかあんの?」


「いや、ない」


「それは良かったな」


「それはそれとして、去年の5月初めの休んでた時期の遅れはあったかもしれないけどね」


 学力に関する部分についてはあまりTS病とは関係はなかったらしい。


「じゃあ、体力テストの方はどうよ?」


「流石に地力自体は落ちてたね。でも相対的に女子平均と比べたらそれなりに上の方になってたから、悪くはないんじゃないかな」


「去年の体力テストは身体が男の時だったもんな。そういや、その時の男子の中ではどれくらいだったんだ?」


「中の上くらい? 今回のは上の下から中くらい」


「そりゃ凄い」


「凄くはないって。本当に『ちょっと成績が良い』ってだけで、平均値との差がほんの少し広がったかどうかって話だし。部活のインターハイの全国大会とかに出られるのはそれなりにちゃんと技術を持ってたり、上の上の力を持っているような人たちだよ」


「そういうもんなの?」


「第一、他にもTS病になっても続けて同じスポーツをしてる人だっているし、レッドオーシャンがブルーオーシャンになんて早々変わることなんてないはずだよ。大抵が出来るヤツがTS病になっても出来るヤツのままだし、出来ないヤツは基本的に出来ないまま。あと、競技人口が広けりゃTS病の人の部門で区切られていたりするから。上手い話はないんだよ」


「なるほどなぁ……」


 実の話を聞くうちに、いつの間にかその勢いに気圧されていた。


 実自身、自覚無く口早になっているのを見ると、何かその辺りのことでストレスの掛かっていることがあるのかも知れない。あまり触れない方が良いものかもしれない。


「背は伸びてんの?」


「伸びてはいるみたい」


 露骨な話題逸らし、成功。


「TS化してすぐにした身体測定から全体的に変わってるよ、身長以外にも」


「身長そのものはどれくらい伸びた?」


「う~ん……5ミリ……くらい?」


「誤差じゃね?」


「伸びましたっ!」


「男の時と比べたらどれくらい?」


「……」


「いや……、悪かったって」


 話というのはどこに地雷が潜んでいるのかは分からない。ただの弄りのつもりが、顔が青ざめて俯いてしまうまでになってしまった。


「他! 他のはどうなったんだ!? 去年と比べて!」


「きょ、去年と比べて?」


「他にあるでしょ? 体重とか座高とか色々……」


「あぁ、そういうことな」


 露骨な話題逸らし、再び成功。


 今まで気づかなかったけど、実がTS化してから話題を逸らしやすくなった、気がする。というか、話題を逸らすような必要を迫られることが増えたのかも知れない。


「座高は……って、やってないだろこの学校」


「それもそうだったな」


「体重は……ほぼ変わってないかな。日によって変わるけど、明確に何キロ増えた減ったとかは無かった……はず。いや、少し増えたような気もする」


「体重も普通に言うんだな」


 隠すのかとも思った。


「心は一応男だよ。まだ」


「なるほど。他は?」


「スリーサイズとか? それはちょっと……」


「そこだけ変わってんのかよ」


「うーん……、言うとたまに目線を感じるんだよ……、女子から」


「あー……そういうこと」


 ネタで言ったつもりだけど、そういうところ、色んなしがらみがあるんだな、身体が女のものに変わって。


「小声でいいか?」


「別に良いけど……」


 そう言うと、実はコチラに少し寄ってから屈んで俺の耳へ近づいて手を添えてきた。


「……腰回りはあんまり変わってないみたいだけど、胸は結構大きくなってたかな。制服だと気づきにくいかもしれないけど」


「お、おう、そうか……もう離れて良いぞ」


「あっ……。わ、分かった。近すぎたよな……」


「そこまで落ち込むことはないけど、少し吐息が耳に当たって」


「ご、ごめん」


「いやいや、謝らなくていいから……」


 実が女体化してから暫く体感的な距離は開いていたような気がしたけど、最近それが徐々に近くなってきた気がする。吐息が耳に当たったのは少しドキドキしてしまった。


 なんでだろう……。年度が変わってもっと他の人と関わりを深めていきたいのかも知れないな。

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