27話 締め括り
クラスの出し物の担当時間になったために教室に来てみたが、そこで目に入ったのは座っている2人の男に腕を掴まれた実の姿だった。
「ちょっと……、接客担当の腕を掴むの、止めてもらえませんか?」
「ああ? 誰だテメェ?」
「担当時間になったのでただ今ここに参りました、調理担当の者です」
返事を聞いて品性を見た。嗚呼、この手の連中かぁ……。店員に大きく出ちゃう系の人か。
「別にそこまで周りに迷惑は掛けてないよな? 別に騒いでる訳でもないしよぉ?」
「何が悪いのか言ってもらえるかなぁ?」
どうにも分かって貰えてないか。はぁ。
「接客担当に不必要に拘束を強要するのは接客行為の妨害です。1人接客担当が数分間活動が行えずに拘束されていると他のメンバーにも負担が掛かりますし、行えることが減ります。そこで更にミスなどが発生しますと作業効率が更に低下します。……あなた方のしていることがどれ程迷惑か、お分かりいただけましたか?」
「……チッ」
「はぁ~あ、分かったよ。す、み、ま、せ、ん、でした~」
彼等はそれぞれの対応で両方腕を放した。
「で、ご注文は?」
「……紅茶で」
「珈琲で。変なことで時間食ったし、早くしろよ」
「少々、お待ちくださいませ」
「……ごゆっくりどうぞ」
実はこの場から早く立ち去りたかったのか、頭を上げる動作と同じくらいでバックヤードに向かって行った。
俺は最後の最後で不満を買ったのか、じっとりとした目線を向けられてしまったため、しっかりと挨拶をして、目を合わせてから立ち去った。
「ありがとう」
「は?」
「さっきの……アレ」
注文を伝える為にバックヤードに来ていた実が、エプロンに着替える為に来た俺に礼を言ってきた。
「ま、俺の実家が実家だからな。慣れてるとは言わないけど、たまにいるから。礼を言われるほどのことでもないよ」
「増良にとってそうだとしても、俺はアレで助かったんだから、この礼は受け取っておいてくれよ」
「へぇ」
んー、じゃあちょっと欲張ってみるか。
「じゃ、学園祭終わりに奢ってもらおうかな、缶ジュース1本」
「そういうとこ本当に玉に瑕だよなぁ……まあいいけど」
「あ、いいんだ」
「いらないの?」
「貰えるものは貰っておく」
「はぁ……」
「払いたくないならいらないけど……」
「そういうことじゃないんだけどなぁ……」
どういうことだよ。
結局その後、先の2人に復讐されるなんてドラマチックなことが起こる訳でもなく、普通に実に奢られて、家に帰ったのだった。




