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24話 新学期から次のイベントへ

 9月に入って2学期。初秋の残暑というにはウザったすぎる程の暑さが湿気と共に身体を纏わりつくこの頃。


「早速ですが、2週間後の週末に学園祭です」


 担任の浜竹先生は新学期早々そう言った。


「と、いう訳で、帰りの終礼時のHRでは少し時間を長めに取って、出し物の意見を出したいと思います。決めるのは多分、次の授業時間のHRの時間になると思いますが、それまでに案を出しておいてくださいね」


 浜竹先生は生徒名簿で自らの頭を軽く小突きながら目を瞑ってそう言っていたのだった。


 が、その日の終礼時のHR。浜竹先生の想定とは異なり、その日のうちにこのクラスの学園祭の出し物が決まった。


「そういうことで、このクラスの出し物は『女装喫茶』に決定となりました~」


 委員長がそう言って拍手をし、クラスの連中もそれに続くように拍手をしていた。


「?」


 実も周りに倣って拍手をしていたが、このクラスの意図をよく分かっていないような顔をしていた。


 これを提案したのは恐らく、実に“女装”させるためだろう。実は学生としては学生証の変更が加えられ、女生徒ということに一応なっているが、戸籍はそうじゃない。国の方針で、性転換した人間が1年間女性のままであることが体調の安定性を調べてそうなる可能性が高いと判断された場合、次年度から戸籍の性別が変わる。


 つまり、今年中ならば実が女装する側に立っていても戸籍上は“女装”として成り立つ、ということだろう。


「保健所……面倒臭い……マジか……」


 出し物が決定したそのすぐ近くの教壇で、浜竹先生は机に突っ伏してそう独り言を怨嗟のように放っていたのだった。


 そして次の授業時間のHRの時間。


「それじゃ、女装する人と料理と飲み物の担当を決めまーす」


 委員長がHRの始まり次第、浜竹先生に代わって司会進行となり、学園祭の話を進め出した。


「あ、はーい」


「はい、細染君」


「俺は委員会の方があるんで着替える時間とかも考えて、調理担当か列整理が良いと思うんですけど」


「あ、あー……細染君はそっちがあったんだっけ、分かった。その代わりに出てくれそうな人とかいる? ホールで」


「松前君ですかねー、コイツは戸籍的にまだ男で、男としての自覚もあるみたいなんで」


「え?」


「そうだね、みんなも松前君が1人目の枠で良い?」


「「「おおぉーーー」」」


 歓声と共に拍手が上がる。


「え?」


「という訳で、実、俺の代わりによろしく」


「え?」


「そういう訳で、松前君、よろしくお願いしますね」


「え?」


 実をどうにか女装メンバーに加えるために出来レースをするのか委員長はずっと考えていたみたいだが、俺の悪ノリの含めたパスを上手に扱いゴールに向かえたらしかった。


「え……? えっ」


 当の実は何が何だか理解していないようだった。


「ええぇぇ~~~~~~~~~~~~っっっ!!?!?!?!?!?!???」


 理解が追いついた時にはもうほぼほぼ事実上確定していた状態であり、どうにかその担当を降りようとしたものの、他の男子たちが女装することに立候補し、引けなくなって押し切られていた。


 流石に数で圧倒してイジメとなるようなことはあってはならないので、後で「嫌なら俺から取り下げるよう頼もうか? 頼んだのは俺が本からみたいな形だったし」と訊けば、「いや、別にいい」と言っていたため、結局実は女装担当になったらしい。

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