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21話 花火大会

 海に行った後、早数日。今は7月も末、夏休みの1/3を過ぎたかどうかというところ。主題も少しずつやりながら、ゲームをしたり、マンガを読んだりなどをして暮らしていた。


「……そろそろ花火大会か」


 宿題を片している途中、カレンダーが目に入り、そんなことを思い出した。


 小学生時代は家族でよく見ており、中学時代は友人らと一緒に見ることがあった。


「一人で見に行くかー……」


 そう思ったのは、高校生にもなれば友人の中には恋人が出来たヤツらもおり、そういうヤツらは彼女と見に行くだろうと思ったためだ。態々こちらから誘って断らせるようなコトになると面倒だし、一人で見に行って、同じく独り身の友人と会ったら出店屋台でも巡ることにしよう。


 流石に中学時代、家族と一緒に行かなくなってからは家族と一緒に見ようとは思わなくなったし。


 宿題したりゲームしたり、そんなことをしていると数日なんてすぐに過ぎて、花火大会の日の夜になっていた。


「やっぱ、人多いな」


 毎度のことながら、半分田舎みたいな地方都市によくもこれほど来るもんだ。この日だけ部分的に車道が封鎖され、歩行者天国になって、いつもより数倍の人いる。


「ま、ここが特等席なのは変わらないか」


 小学生の時に一人で来る機会があったので、その時見つけたあまり人が来ない場所に再び来てみたのだが、花火が見えやすい割にやはりここは人が少ない。カップルも居ないので居づらいということもない。


「あ」


 その特等席の到着と同時に、同時に来ていた人物と目が合い、その人物は声を漏らした。


「増、良……?」


「実か」


 そこで出会ったのは、海に行ったときのような女性的な服装ではなく、中性的かボーイッシュと形容されるような格好をして来ていた。


 ただ、ポニーテールはしていたが。


「知り合いの居ない特等席だと思ってたんだけどな」


「それはこっちも思ってたよ」


 思うところは同じか。


 まあでも、実の方は俺とは違うことを考えてここにきたんだろうな。この間の海のときみたいに、ある種の覚悟みたいなものを決めるために、とか。


「……」


「……」


 既に花火は打ち上がっているので、すぐさま話す言葉はなくなってしまった。


「なあ」


「ん?」


 ドーン、ドーンという花火の音は、遠く響いている。


 実は花火の方を向いたまま話している。


「俺が前に、他の男のことを“そういう目で見てる”って話、しただろ?」


「あ? おう」


 そんな話もあったな。


「それでさ……もし、もしもさ……」


「んお? おう」


 何か口ごもるというか……話を切り出すのを躊躇ってんな。


「もしも俺がそういう目で見てる割合の殆どが……、増良のことだとしたら……どうする?」


「どうするって……、どうもしないだろ?」


「え?」


「そりゃお前、最初にそう言われたときから俺もその範囲内にいることはなんとなく分かってたし、なんだかんだ同級生の男の中で距離感が多分一番近いと思ってるから、結果的にそうなったとしても不思議は無いだろ」


「……」


「だから俺は別にどうもしない。お前が男に戻りたがってるのも勿論、分かってるつもりだし、それに協力を惜しまんさ」


「……ありがとう、マジで」


「別にそう言われるまでもねぇよ」


 その後は、花火大会が終わるまで黙って花火を見続け、終われば特に何か話すでもなく、家路に着くのだった。

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