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17話 君の居ない夏休み

―Minol Side―


 夏休みが始まって数日。


「……暇だなー……」


 数日にして、既に暇だった。


 増良が返ってくるまで、あと半分以上残っている。


 増良に言われた通り、他の友人らを誘って夏休み始まってすぐに1度カラオケに行った。


 結果として、思ったほどの成果は得られなかった。確かにあのまま関わらなかったら新学期には自然消滅していたかもしれない可能性はあったし、それを繋ぎとめることは出来た……とは思う。


 だからと言って、そこまで親交を深められたかどうかについて言えばNOと言うしかないだろう。


 自分が歌っているときも、他の誰かが歌っているときも、そこまで話すことがなかった。


 どこかぎこちない距離感を感じて、そしてその距離を詰めることは出来たとは思えなかった。


「増良、早く帰ってこないかなー……」


 ……そもそも、アイツは本当に東京に行っているのか?


 抜き打ちでチェックしてやろう。


『今どこだよ』


『渋谷はオリセンなう』


 “なう”って……。いやそれよりもオリセンってどこだよ。


 ……調べたら、よく合宿とかなんかで使われる場所だそうだけど……アイツはスポーツ選手にでもなったのか? でも委員会で行くって言ってたよな……。本当、何しに行ってるんだ……。確かに東京には、行ってるみたいだけど。


 って、いつの間にか増良のコト考えてるなー……。


 まあ、いいや。


 「戻るための会」の先輩たちも、無理に自分の心を否定しない方が良いって言ってたし。


 別のコト考えよ……。宿題宿題。


 ……髪が邪魔になってきたな。机に向かっていると顕著に感じる。そろそろ切ろうか。


 この身体になって髪質も変わって寝グセをどうにかするために伸ばしていたけど、もうそろそろ大丈夫か、夏休みだし。


 うーん……どうしようか。


 夏、かぁ……。なんか2年前くらいに増良と女の子の髪型について話したっけ……。


 2年前。


「そう言えば増良ってどんな髪型が好みなんだ?」


「うーん……ポニーテールって良くね? 前はツインテールとかおさげとかが特に良かったと思っていたけど」


「ふーん。変わった理由と良さは?」


「ポニテの良さが分かったからかな。ツインテにしてもおさげにしても全体的な良さもあったけど、ポニテって髪をまとめたときのうなじのこう……まとまった感じと、前の方から見るスッキリした感じがいいなーって」


「ほえー」


「聞いたんならもう少しマシなリアクションしろよ」


 時は戻って現在。


「……髪、後ろでまとめるか。前髪だけ切ってもらって。全部短くするとやっぱ寝グセが直らないかも知れないし。一つにまとめたら邪魔にもならないだろ」


 誰に言うでもなく、言い訳を独り言ちる。


「でも髪切りに行くだけじゃなー……メンドクサ」


 言葉とは裏腹に立ち上がり、取り敢えず外に出るため服を見てみる。


「スカート……」


 まず目に入ってしまったのは、性転換して初めに母親と妹が買いやがったが捨てるに捨てられず、収納の肥しになったソレだ。


 いや。いやいやいや。


 着る気はない。いや、なかった。


 だが最近、制服で半ば無理やりスカートを着ていくようになってスカートを履いていくことに抵抗はなかった。


「でもなぁ……」


 自分の脚を見る。身体が男だったときよりかなり毛が薄くなった。とはいえ、最早見た目に関して言えば女になってしまった今は、これで外に出るのには多少抵抗がでてきてしまった。何よりスカートを……ねぇ。


 いや、履く気は……ない、はず。


 しかして買ったにもかかわらず一度も履かずに捨てるのももったいない。


 万一、履くとして、この時期にタイツやニーソックスは暑すぎる。


 ……因みに、妹はスカートの引き取りを拒否した。


「……はぁ」


 溜め息を一つ吐き、外行き用の上着とズボン、財布を持った。


「理容代と、女性用のムダ毛処理の道具代って……これくらいでいいかな」


 財布の中の金額を確認し、家を出る用意をした。

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