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154話 BUMPER SWITCH

 家が見えてきたところで、寄り道の提案。


 真逆に進むことを選ばないのであれば、ここから寄れるところと言ったら公園くらいしかない。ということは、そういうことなのだろう。


「色々あったなぁ~」


 ベンチに座りながら、実はそう言葉を漏らした。


「色々って?」


「う~ん……人生だとか、学校生活だとか、今日のことも含めて」


「そりゃ色々あるだろ。そこまで含めたら」


「フフッ……それもそうだね」


 座りながら応える俺に笑いかける実は、緊張しまくっていた先ほどまでとは異なり、ある程度慣れたようにも見えた。


 ある種、肩の力を抜いた、前のような友人としての距離感を持って安定して話せるようになったのかも知れない。


 とは思ったものの……。


「……」


「……」


 実は再び黙り込み、会話が消えた。


 彼女の方を見てみると、どこかをキョロキョロと見ていたり、身体もソワソワとさせている。ふむ。


 そこから会話が無く数十秒、実は何かを言いたげに唸っていたり、咳払いをしてたりしている。ふむふむ。うーん……。


「実」


「うぇっ!? なっ、何っ……!?」


「いや、実が寄り道しようって言った割にそこまで話すこと無かったのかなーって」


「そ、れは……」


 探ってみると、ある程度実が何を求めてここに来たのかが推測できる気がする。


「えぇっと……」


 実の目は泳ぎまくっていた。この状態だと、実から話が出てくることはなく、なんとなく変な雰囲気で今日はここでお別れ、という感じになってしまう可能性は高い。


 いきなり「コレ」を求めるのは実が求めていたモノと違うと引かれる可能性大だが、ここは1つ、賭けてみることにした。ここで退いたら男が廃る……的な?


「何か言いたいことがあったのかも知れないけどさ、ちょっと俺から頼みたいことができたら、それちょっと頼まれて良い?」


「それってどんな……」


「1分かそこらで終わると思うから、良い?」


「うーん……まあ、良いけど……」


 実は渋々といった感じで了承してくれた。


 さあさらっと、動じずに、あくまで自然で悠々と。


「ちょっとまた立ってもらって良い?」


「う、うん……」


 座ってでもできそうだったけど、互いが座ってするには身体をよじらないと難しく、俺だけ立って、というのもベンチがやや低くて俺の腰がちょっと辛いので、一番そうしやすい体勢に持っていった。


「本当に一体何を……」


「ほら、こっちに」


「んん?」


 視線を誘導させ、さりげなく寄り添うような体勢へと移る。


 そして、実の身体を思い切り抱き寄せてみた。


―Minol Side―


「ふぇ?」


 思わず変な声が出てしまった。


「……」


 増良は何も言ってこない。だけどこの空気感、この緊張感、それらは明らかに私から求める予定だったモノだった。


 動揺した。


 私から行おうとしていたことを増良からされると分かった瞬間に、色々な想いがこみ上げてきた。


 その内の1つは歓喜。これは勿論そうしたかったし、そうされたかったというのもある。


 その内の1つは恐怖。増良に腰を抱き寄せられた時、私の無力を感じた。前々から対格差を感じることはいくつかあったけど、ここまで無力を理解させられたのは初めてだった。


 そして溢れる今の私の想いの中で、そんな気持ちがあるのかという、意外で、大きく心の中を占めていた気持ち、安心という名の感情だった。


 浮ついた喜びと、最たる不安、そのどちらからでも反対の位置にある感情を抱いていた。


 増良はそこまで筋肉質では無いと思っていたら、私の身体をいとも容易く引き寄せたり操って見せたりと心外、筋肉があることに自分の胸は跳ね上がると同時に、この身体が私を守ってくれるのだという安心感が私の心身を満たしていた。


 色々な感情を取りまとめることもできず、気が付けば私は、彼に身体を委ね、唇を捧げるようにしていた。

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